変革への備え 
長期経済展望

レジリエンスを求めて

今後5年間で、ほとんどの債券ベンチマークでプラスのリターンが見込まれます。債券は、より高い利回り水準となり、分散型ポートフォリオにレジリエンスを構築する上で重要な役割を果たすとみています。

著者

Joachim Fels

グローバル経済アドバイザー

Andrew Balls

グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)

Daniel J. Ivascyn

グループ最高投資責任者(グループ CIO)

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世界のマクロ環境は、依然として正常とは程遠く、投資家は向こう5年間、不安定で困難な道のりを切り抜けて行かなければなりません。今後も創造的破壊と不確実性が続く可能性が高く、脱グローバル化が世界経済の亀裂を広げるとみられます。思慮深く長期を重視した見方は、こうした困難な道のりを歩む投資家の助けになるはずです。本稿では、先頃、開催されたPIMCOが年に1度開催するセキュラー・フォーラム(長期経済予測会議)の主要な結論をお伝えいたします。フォーラムでは、PIMCOの投資プロフェッショナル、ゲスト・スピーカー( 本ページ下部参照)、グローバル・アドバイザリー・ボードのメンバーが一同に会し、3日間にわたって集中的な議論を行いました。


長期経済展望 要約

長期経済見通しとその投資への意味合いを

まとめた要約はこちら

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現状の確認

まずは、過去のフォーラムの議論を慎重に振り返ることから始めました。2021年の長期経済展望で論じたテーマ「変革への備え」は、現在も通じるものが多いと感じました。PIMCOでは、マクロ環境がより不確実で変動が激しくなると予想し、グリーン、デジタル、社会における変革を、創造的破壊を推進する主な要因としていました。また、成長とインフレのサイクルは短くなり、振れ幅が大きく、各国間の乖離も大きくなると予想していました。これらはすべて、今でも正しいといえるでしょう。

しかしながら、目前の明白な課題は、昨年には予想もしなかった大規模な混乱の影響を考えることでした。すなわち、2月のロシアによるウクライナ侵攻と、それ以来繰り広げられているおぞましい戦争、そして、多くの西側民主主義国による広範囲に及ぶ経済・金融制裁とその他の政策対応を考慮に入れなければなりません。これらの出来事のPIMCOの投資テーマにとっての意味合いを考える上で、短期(6~12ヵ月)、中期(1~2年)、長期(5年超)に分けて考えることが有益であることがわかりました。

短期見通し:「反」適温経済

会議では、2022年3月の短期経済展望「「反」適温経済のなかで」でお伝えしたPIMCOの短期的テーマについて手短に触れ、確認しました。最近のマクロデータは、戦争と制裁のショックに中国での新型コロナ関連のロックダウンが重なり、スタグフレーションの様相を呈しているという、私共の見方を裏付けています。短期的にインフレ率が一段と上昇する一方、主要国の経済成長は短期経済展望の対象期間中(6~12ヵ月)に失速する勢いで減速しています。また、本稿執筆時点で米国と欧州のインフレ率が8%に達するなど、足元の総合インフレ率が世界中で上昇していることから、主要中央銀行は、インフレ抑制を優先し、経済成長を懸念するのはその後だと決意を固めているようにみえます。このことが、中期見通しにつながります。

中期見通し:景気後退リスクの高まり

PIMCOでは、向こう2年の景気後退リスクが高まったとみています。その背景として、地政学的な混乱に拍車がかかる可能性、家計の実質可処分所得を減少させるインフレの高止まり、中央銀行がインフレとの闘いを最優先していることで、既にみられるような急速な金融引き締めに加え、金融の突発的事由が発生するリスクが高まっていることが挙げられます。

さらに、次の景気後退が到来した場合、金融・財政政策の対応は、インフレが懸念されず政府の債務水準や中央銀行のバランスシートが現在ほど肥大化していなかった過去数回の景気後退期に比べて控え目で、実施時期も遅れると予想されます。財政当局が世界金融危機後の景気回復の鈍さから学び、今回のパンデミック(世界的大流行)不況に力強く対応したのと同じように、特に米国において、政策当局は足元の高インフレへの対応から学び、再びこうした手段を取ることを躊躇する可能性があります。

地政学的な混乱、高止まりする
インフレ、中央銀行の
インフレ抑制優先の方針を反映して、
向こう2年の景気後退リスクが
高まっていると見ています。
レジリエンスを求めて

多くの理由から、次の景気後退が2008年の大不況や2020年の新型コロナの流行に伴う突然の経済活動停止ほど深刻になるとはみていませんが、中央銀行や政府の対応が以前ほど活発でないことから、後退期が長引き、その後の回復の足取りも鈍いものになる可能性があるとみています。

長期的なテーマ:レジリエンス(強靭性)を求めて

ウクライナ戦争とその対応の長期的影響として重要なのは、地政学上の分裂が進み、一極の世界から二極あるいは多極的な世界への移行が加速されかねない点です。この分裂は既に始まっていて、中国が主要な経済的、地政学的プレーヤーとして台頭する中、西側諸国の政府は中国に対して懐疑的な姿勢を強めています。

分裂が進む世界では、政府や企業の意思決定者は、安全性の追求とレジリエンスの構築にますます注力するとみられます。

  • ロシアのウクライナ侵攻を受けて軍事紛争のリスクが現実味を増す中、欧州をはじめ多くの国の政府は、防衛費を増やし、エネルギーと食料安全保障の両方に投資する計画を発表しています。
  • 多くの企業の意思決定者は、グローバルな分散、近隣国、友好国への拠点の移転を進め、より強靭なサプライチェーンの構築に注力しています。こうした取り組みは、米中貿易摩擦への対応として既に始まっていました。しかし、新型コロナのパンデミックで複雑なバリューチェーンの脆弱性が明らかになったことから、不安定化した地政学的環境を考慮し、今後もこうした動きが激化する可能性が高いでしょう。
  • さらに、気候変動リスクと新型コロナ危機への対応として、多くの政府と企業は地球温暖化を緩和策を講じて適応するとともに、市民や社員の健康と安全を向上するための取り組みを既に強化しています。

レジリエンスと安全保障の追求は、往々にして短期的な経済効率を犠牲にします。こうした長期的なトレンドのマクロ経済への影響としては、主に以下の5点が考えられます。

第一に、防衛、医療、エネルギー、食料安全保障、より強靭なサプライチェーン構築、気候変動リスクの緩和と適応など、多くの分野で予想される支出の増加は、他の分野での支出削減を凌駕し、長期的に総需要を支える可能性があります。しかしながら、企業がテクノロジーへの投資を加速し、生産性をさらに向上する努力をしない限り、追加支出の多くは長期的な生産性向上には役立たないでしょう。また、レジリエンスの追求は、規制の強化と保護主義を伴い、長期的な成長の重しになるでしょう。したがって全体としては、今後5年間で、生産量の伸びがパンデミック前の10年よりも大幅に高くなる可能性は低いとみられます。

第二に、レジリエンスと安全保障の追求は、企業がサプライチェーンに冗長性をもたせ、拠点を近隣国に移そうとすることから、インフレの追い風となるでしょう。政府が移民に対する制限を強める限り、労働市場は競争的ではなくなることから、賃上げ圧力が高まる可能性があります。また、再生可能なグリーン・エネルギーへの移行は、最終的には安価な再生可能エネルギーによりエネルギー価格の低下につながるはずです。しかし、従来型のブラウン・エネルギーの供給縮小が再生可能エネルギーの供給拡大を上回るペースで進む可能性があり、しばらくの間、エネルギー価格が押し上げられる可能性があります。しかしながら、今後5年間でこれらの要因が恒久的なインフレ亢進につながるかどうかは、究極的には財政・金融当局の政策選択次第だとPIMCOでは考えています。

第三に、こうしたインフレの追い風を考慮すると、中央銀行はジレンマに直面していると言えます。総需要を支え、レジリエンスを構築することは、インフレ亢進というコストを伴います。逆に、インフレ率を目標水準に戻そうとすると、需要と雇用にしわ寄せが生じます。今のところ、インフレ率が中央銀行の目標を大幅に上回っていることを踏まえて、ほとんどの中央銀行はインフレ抑制を優先しています。インフレ率が目標に近づいた後もインフレ抑制を優先するのか、それとも適度なオーバーシュートを容認するのかについては、見方が分かれています。PIMCOとしては、今後5年間におけるインフレ・リスクは上振れに転じたと考えています。

中央銀行は、インフレ抑制と成長
支援のどちらを優先すべきか
ジレンマに直面しています。
レジリエンスを求めて

第四に、この先5年間における民間セクターの信用事由や、デフォルト・サイクルの発生確率が高まったとみています。公共セクターと企業のバランスシートは、安全保障とレジリエンスへの支出ニーズの高まりから圧力を受け、債務返済コストは上昇する可能性が高く、景気後退のリスクが現実味を帯びています。インフレの亢進は、中央銀行が民間セクターの債務者を支援する意思や能力が低下することを意味します。各国政府もまた、パンデミックの最中に債務水準が一層増え、人口の高齢化を受けて増加する年金や医療費を賄う必要があることから、支援にあまり前向きでないとみられます。

最後に、今後5年間で、金融の脱グローバル化と資本市場の分裂が進むリスクがあるとみています。フォーラムの参加者の1人は、これを「資本戦争」のリスクと呼んでいます。金融制裁と外貨準備の保有を武器にすることは、経常収支の黒字国における公的および民間債権者によるホームバイアス(自国資産重視)を増大させ、長期的に米ドルへの資金流入の衰退につながる可能性があります。しかしながら、厚みと流動性のある資本市場を備えた米ドルに代わる優れた代替通貨が見当たらないことを勘案すると、こうした変化は突然ではなく長い時間をかけて起きる可能性が高く、今回の長期経済展望の対象期間である5年より先になると考えられます。

 

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投資の結論

PIMCOではかつて、低水準ながらも安定した成長と、中央銀行の目標を下回り続けるインフレ率を特徴とする世界を「ニュー・ノーマル」と名付けましたが、こうした世界は確実に過去のものになったと考えています。多くの投資家は、ニュー・ノーマル時代には中央銀行の行動を、新型コロナのパンデミック期間中にはリスク資産に対する財政政策支援を見込んで「利回りを追求」し、「押し目で買う」ことで報われてきました。しかしながら、長期経済展望の対象である今後5年超の期間では、各国の中央銀行が市場ボラティリティを抑え、金融資産市場のリターンを下支えする余地は狭まっているとみています。

レジリエンスの構築

今後はポートフォリオの構築において、投資家は利回りよりもレジリエンスを求めるものとみています。マクロ・ボラティリティ、市場ボラティリティ、中央銀行の支援をめぐる不確実性が増す中、より強靭な資産配分の構築を目指すことになるでしょう。PIMCOとしては、お客様に代わって運用するポートフォリオにレジリエンスを構築するとともに、市場ボラティリティが高まる時期には利益を確保できるよう努めます。

分散にはより詳細な検討が必要になります。企業の意思決定者がサプライチェーンの分散を模索するのと同じように、投資家は地政学的要因とリスクに照らし、ポートフォリオの分散を模索するかもしれません。そうした中で予想外の結果が起こりうることは、ロシアの国際金融システムからの急速な孤立で目の当たりにした通りです。地政学的な分裂が進む中、政府や企業はどちらの側に立つのか立場を明確にするよう圧力を受けることになり、制裁、資本規制、最終的には資産没収のリスクにさらされる可能性があります。資産クラス間の分散だけでなく、こうした地政学的な要素を考慮に入れることが、投資判断や必要なリスクプレミアムに影響を与えると考えられます。

低リターンの世界

ここ数ヵ月、資産市場には弱さが見られましたが、開始時点のバリュエーションと、マクロ経済と市場環境の不安定さが増すとの予想を踏まえると、今後5年間における資産市場のリターンは、現実的に低めに見積もっておくことが必要でしょう。景気サイクルが短期化し、不確実性が増しているとの予想や、インフレ環境の変化から包括的な政策対応があまり見込めないことも、利回り追求よりポートフォリオのレジリエンスに重点を置くことを促しています。向こう2年間に、米国をはじめとする先進国で景気後退が起きる確率が高まったとみています。このことも同様に、潜在的な資産市場のリターンの正確な評価と元本保全の重視を促しているといえます。

とはいえ、コア債券のベンチマークの利回りは、コロナ禍の安値から回復しており、PIMCOの基本シナリオでは、先物市場は予想した各国の政策金利の長期の上限を織り込んでいるか、織り込みつつあるとみています。インフレ圧力が管理可能とみなされ、市場金利が近年の下限を上回った場合は、中央銀行が伝統的な金融政策を発動し、利下げする余地が出てくるはずです。そうなれば、景気後退の環境下の債券市場では魅力的なパフォーマンスを発揮できる可能性があります。

債券は分散型ポートフォリオに
レジリエンスを構築する上で、
重要な役割を果たすでしょう。
レジリエンスを求めて

今後5年間で、ほとんどの債券ベンチマークでプラスのリターンが見込まれます。債券は、より高い利回り水準となり、分散型ポートフォリオにレジリエンスを構築する上で重要な役割を果たすとみています。

中央銀行の金利は抑えられ、債券のリスクプレミアムは上昇

今世紀の10年あまりの「ニュー・ノーマル」期は過去のものになりましたが、実質政策金利が低い「ニュー・ニュートラル」は、インフレへの短期的な対応する期間以上に存続する可能性が高いと考えています。中立的な政策金利を引き下げてきた長期的要因である、人口動態、世界的な貯蓄過剰、高い債務レベルは、引き続き、政策金利を低水準に抑える可能性が高いでしょう。ただし限界的には、脱グローバル化や強靭なサプライチェーン構築などインフレ要因の増加から、上昇圧力がかかる可能性があります。

金融支配、 マクロ経済変数による影響に加えて、金融政策引き締めが金融市場に与える直接的影響は、政策金利が先物市場に織り込まれた水準を大幅に上回って上昇する可能性に歯止めをかけるとみられます。ただし、インフレのオーバーシュートが続き、インフレ期待が上昇して、中央銀行が景気後退を副産物ではなく目標として利上げを余儀なくされるリスク・シナリオの場合は除きます。

マクロ経済見通しの不確実性が高まり、とりわけインフレの先行きを巡る不確実性が高まる中、金融市場は、長期の債券の保有に際してより多くのターム・プレミアム、つまり債券のリスクへの対価を求めると予想しています。景気下振れリスクに対する対価がインフレ懸念を上回り、リスクプレミアムが抑えられていた時期は、過去のものになりつつあります。全体として、今後はターム・プレミアムの上昇を予想しています。

市場が今後発表されるインフレ・データを検証し、インフレ・リスクと景気後退リスクのバランスを見極める中で、短期的には利回り曲線がフラット化する可能性があります。しかしながら今後5年間は、インフレ・リスクが中央銀行の目標水準付近でせめぎ合い、ニュー・ノーマルの世界と比較してインフレ圧力が持続する可能性の高い環境では、利回り曲線が再びスティープ化し、それが定着すると予想しています。

市場金利に目を向けると、中央銀行の低金利(少なくとも2000年代初頭に比べて低い金利)が、引き続き重要なアンカーになるとみています。PIMCOの基本シナリオの見通しでは、10年物米国債の利回りをベンチマークとしており、2020年のコロナ禍の期間を除く過去10年間に主流であったレンジと同等か若干高めになると予想しています。これは約1.5%から4%のレンジに相当します。レンジの上限は、過去10年と比べて若干引き上げられる可能性を示唆しています。過去10年で10年物米国債の利回りが3%を超えたのはごく短期間しかありません。このレンジには、中央銀行がインフレ目標を下回った過去10年に比べてインフレ率が上昇するという予想と、短期的にも長期的にもインフレの上振れリスクが高まっているという予想が反映されています。そして、もちろんリスク・シナリオが存在し、利回りはこの基本シナリオ予想よりも高くなる可能性もあれば、逆に低くなる可能性もあります。

株式のリスクプレミアムの上昇

景気サイクルの短縮化とマクロ経済のボラティリティ上昇を受けて、株式のリスクプレミアムも上昇する可能性があります(つまり投資家は、債券よりも株式を保有するためにプレミアムの上乗せを要求する可能性があります)。高インフレ環境は、名目の利益の伸びを棄損し、利益率を低下させ、より不安定にする傾向があります。

在庫水準の上昇、サプライチェーンの効率低下、労働コストの上昇、投資ニーズの拡大などの様々なインフレ要因に加えて、利益率は金利上昇と納税負担で圧迫される可能性があります。過去10年にわたる企業の自己資本利益率の改善のかなりの部分は、(事業費用、税金、利息の支払いなど)本業外の費用の減少傾向に起因するものです。今後5年間で、こうした企業費用の減少傾向が続くとは考えにくくなっています。

そのため、株式市場の予想リターンは、世界金融危機後に投資家が経験したリターンを下回ると予想しています。成長と収益性が見えにくくなっていることを考えると、投資家は株式のリスクプレミアムの上乗せを求め、信頼できる収益源を優先する可能性が高いとみています。こうした見通しは、質の高さと慎重な銘柄の選択を重視するPIMCOの方針を裏付けています。ベータ(市場全体)の収益が低下する世界で、アルファ(超過収益)を確保するには、長期テーマを認識し、新たな環境で恩恵を受ける銘柄を特定することが不可欠です。

インフレ・ヘッジを求めて

向こう5年にわたってインフレ圧力が高まる可能性を考慮し、米物価連動国債(TIPS)および厳選したグローバルのインフレ連動型投資が、インフレ上振れリスクに対して妥当なヘッジ手段になるとみています。足元のTIPSには、米国のインフレ率が今後12ヵ月~18ヵ月でFRBの目標値の2%に戻るとの予想が織り込まれています。これは、PIMCOの基本シナリオの予想に沿っていますが、結果は保証されるものではありません。

コモディティ市場も、特に予想外のインフレに対して貴重なヘッジ手段になります。予想外のインフレに対するヒストリカル・ベータ(すなわち高い正の感応度)は、TIPSのそれをはるかに凌いでいます。2022年にかけて、コモディティ市場は概ね上昇軌道に乗っていました。需要が回復する一方、特にエネルギー・セクターで数年にわたり投資が過小で供給が滞ったことが背景です。ウクライナ侵攻はこのトレンドを加速させ、将来のエネルギー需要を充足させ、気候変動や安全保障の懸念に対処するには莫大な投資サイクルに着手する必要性を明らかにしたに過ぎません。したがって、資本を動機づけ、エネルギー市場に十分な投資を呼び込むには、少なくとも向こう5年は持続的な高値となると予想しています。

不動産もインフレ・ヘッジ手段として機能します。特にリース期間が一般的に1年未満の集合住宅や個人向け保管スペース・セクターが魅力的です。欧州では、オフィスや産業向けリースですら、しばしばインフレ指数と連動されています。さらに不動産のほとんどのセクターでは、ファンダメンタルズが引き続き健全です。入居率は依然として高く、建設コストの上昇によって新規供給は抑えられる見通しです。

企業クレジットについての注意点:質を重視

パブリック・クレジット市場における全般的な流動性の低迷、加えて、マクロ経済のボラティリティの高まり、中期的な景気後退リスク、中央銀行や財政政策の支援の確実性の低下という見通しをもとに、企業クレジット投資については、質の高い銘柄を選好する方針を維持します。押し目買いが優勢だった過去10年に比べて、金融・財政支援が薄くなる次の景気後退期には、デフォルトが発生し、信用損失が拡大する可能性があります。新型コロナの緊急事態の間には、企業の発行体に広範な政策支援が実施されましたが、これが新たなベンチマークになるとは考えていません。中央銀行はインフレに重点を置き、政府は国家安全保障と環境安全保障に重点を置いたことから、目標とするレジリエンスの追求に不可欠なセクター以外の企業を支援することには、かなり消極的になるとみられます。

PIMCOでは、企業クレジットのオーバーウエイトとアンダーウエイトの選別にあたり、クレジット担当のポートフォリオ・マネジャーとリサーチ・アナリストから成るグローバル・チームの知見を活かしています。担保付き投資を選好するとともに、無担保のクレジット投資については、有利な条件の確保と明確な文書化を求めています。PIMCOでは、持続的なクレジット・デフォルト・サイクルにおいて重大なデフォルト・リスクにさらされる可能性のあるポジションを回避するととともに、クレジット市場で緊張が高まった時期には、流動性を要求する側ではなく、流動性を提供する側になることを目指しています。

プライベート・クレジットの機会とリスク

プライベート・クレジット戦略は、パブリック・クレジットの配分先の補完手段になりえます。パブリック・クレジットにとってより厳しい環境においては、長期志向とリスク許容度の高いポートフォリオには優良な投資機会が見つかることを期待しています。

とはいえ、過去数年のプライベート・クレジット市場には、パブリック・クレジット市場で見られたのと同じ過剰感があります。特に、近年一般的になったレバレッジを最大限に効かせた企業融資案件において顕著です。プライベート・クレジット市場における過剰感は、レバレッジが過剰なバランスシートが調整され、バリュエーションと成長見通しがより現実的なものになるにつれて、厳選されたプライベート・ファイナンス・ソリューションにとっては、豊富な投資機会を提供するでしょう。プライベート企業クレジットのレガシー負債については、より困難な時期が予想されます。一方、競争があまり激しくないプライベート・レンディング(融資)市場の一部では、相対的にパフォーマンスの向上が期待できると予想しています。例えば、消費者信用と住宅信用におけるプライベート・レンディングは、今後数年は特に魅力的なパフォーマンスが期待できる好位置にあると考えられます。(企業が再びレバレッジを増やしているのに対して)家計のバランスシートは、10年以上にわたりレバレッジを解消してきたことがその理由です。プライベート・クレジットのその他の多様なセクターでは、全般に健全な初期条件とバリュエーションを勘案すると、航空機ファイナンス、不動産融資、機器リース、ロイヤルティ・ファイナンスが、一般的な企業のプライベート・デット・セクターをアウトパフォームする可能性があるとみています。

エマージング市場:勝者と敗者

エマージング市場は優れた投資機会を提供するとみていますが、困難な投資環境においては、勝者と敗者を峻別するアクティブ運用の重要性を強調しておきたいと思います。一部の国は資本財需要の恩恵を受け、コモディティ輸出国は交易条件の改善から恩恵を受けるとみられます。一方で、ファンダメンタルズや政策の枠組みが弱い他のエマージング諸国は、景気サイクルの短縮化とマクロのボラティリティの高まりに一段と翻弄される可能性があります。コモディティ輸入国も、大きな困難に直面する可能性があります。

分裂した世界は、
エマージング市場で
勝者と敗者を生み出すため、
アクティブなリスク管理と
分析の必要性が高まります。
レジリエンスを求めて

既に述べたように、軍事的・戦略的な分断線に細心の注意を払わねばならない分裂した世界では、エマージング投資において、適切な分散と適切なリスクプレミアムに重点を置くことが、とりわけ重要になると考えられます。これは、制裁と資産没収のリスクがあり、国内の政情不安だけでなく、地域および世界的な政治要因で突発的な事態が起こりかねない中で、アクティブ運用とアクティブな意思決定が重要であることを裏付けるものだと言えるでしょう。

通貨:嵐の中の逃避先としての米ドル

米ドルは標準的なバリュエーション指標では過大評価されているように見えますが、中期的な景気後退リスクとマクロ経済のボラティリティの上昇が見込まれることを勘案すると、引き続き”嵐の中の港”になる、つまりマクロと市場ボラティリティが高まる時期に、相対的に安全な逃避先として恩恵を受けると予想しています。その意味合いの一つは、例えば、割安なエマージング通貨やG10のコモディティ通貨を通じて価値を求める際には、米ドルとのクロスを重視するのではなく、各国に分散した資金調達バスケットを検討するほうが理に適っている、ということです。

グローバルへの投資機会

今後5年間、資産クラスのリターンが全体的に低下するだけでなく、リターンのボラティリティが高まると予想される中、地政学的に不安定でテールリスクが肥大化した環境では、各国間の違いが大きくなると予想しています。ボラティリティが上昇し、マクロのリターンと市場リターンの違いが大きくなる中では、リスクと機会の両方がもたらされます。PIMCOでは強靭なポートフォリオの維持を目指していますが、同時にグローバルなアプローチを追求し、機会を最大化して好機を活かすとともに、脆弱な部分のリスク軽減を目指しています。市場参加者のホームバイアス(自国市場への投資偏重)の拡大、脱グローバル化の加速、資本市場の分裂が進む世界は、好機をもたらす可能性があります。グローバルなマインドを持つ投資家や運用チームには、こうした好機を見い出し活用できる機会があると考えています。


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PIMCOのフォーラムプロセス

PIMCO経済予測会議の舞台裏

ウォールストリートで経済予測会議(フォーラム)が主流になる以前より、PIMCOの投資プロフェッショナルはフォーラムでの議論を通じ、お客様のために経済や市場動向の把握に努めてきました。数十年後の現在、PIMCOの投資プロセスの礎であるフォーラムは、より堅固で、これまでに以上に重要なものになっています。


2022年PIMCO長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)ゲスト・スピーカー略歴

ダン・ギャラガー

ロビンフッド社 最高法務・コンプライアンス・業務担当責任者

マッテオ・マジョーリ

スタンフォード大学経営大学院ファイナンス教授

キャサリン・モルナー

フェアファックス郡 警察官退職制度最高投資責任者

ネハ・ナルラ

MITデジタル通貨イニシアチブ・ディレクター

ランダル・クオールズ

元米連邦準備制度理事会(FRB)理事兼監督担当副議長

ユヴァル・ルーズ

デジタル・アセット社 最高経営責任者兼共同創業者

アレックス.C.ルアン

NASAゴダード宇宙研究所 研究物理科学者および気候影響グループ共同ディレクター

アンジェラ・ステント

ジョージタウン大学 ユーラシア・ロシア・東欧研究センター名誉教授兼所長、著書『プーチンの世界-ー西側に対抗し、西側以外と手を携えるロシア』(未訳)

バーバラ・F・ウォルター

カリフォルニア大学サンディエゴ校 政治学教授、著書『いかにして内戦は始まるか』(未訳)

PIMCOの経済予測会議について

ほぼ半世紀にわたって磨かれ、様々な市場環境で実証されてきたPIMCOの投資プロセスは、長期経済予測会議と短期経済予測会議を基盤としています。年に4回、世界各地からPIMCOの投資プロフェッショナルが集結し、世界の金融市場と経済の状況について議論、討論を重ね、投資に関して重要な意味合いを持つと考えられるトレンドを特定します。

年1回開催される長期経済予測会議(セキュラー・フォーラム)では、世界経済の構造変化やトレンドを捉えたポートフォリオを構築するため、向こう5年間の見通しに焦点を当てます。毎年セキュラー・フォーラムには、ノーベル賞受賞経済学者、政策当局者、投資家、歴史家などの著名なゲスト・スピーカーを迎え、有益で多面的な知見の提供を受けることで、議論を深めています。また、世界的に著名な経済、政治問題の専門家から構成されるPIMCOのグローバル・アドバイザリー・ボードも積極的に参加しています。

年に三回開催される短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、向こう6~12カ月間の見通しに注目し、主要先進国やエマージング諸国の景気サイクルのダイナミックスを分析し、金融政策、財政政策、ならびにポートフォリオの構成に影響しうる市場リスクプレミアムや、相対価値における潜在的な変化を見定めます。

ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場 への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。政府が発行する物価連動債(ILB)は、元本価値がインフレ率に連動して定期的に調整される債券です。実質金利が上がった場合、物価連動債(ILB)の価値は減少します。インフレ連動国債(TIPS)は、米国政府が発行する物価連動債(ILB)です。コモディティは市場、政治、規制、自然などの条件により高まるリスクを伴い、全ての投資家に適しているとは限りません。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。不動産及び不動産に投資するポートフォリオの価値は、災害または収用による損失、地域経済または経済全般の状況の変化、需給、金利、固定資産税率、家賃に関する規制、都市計画法また運営費などにより変動します。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。為替レートは短期間に大きく変動する場合があり、ポートフォリオのリターンを減少させる可能性があります。プライベート・クレジットは、流動性リスクを伴う可能性のある非公開有価証券に投資する可能性があります。プライベート・クレジットへの投資ポートフォリオにはレバレッジが利用される場合があり、投資の損失のリスクを増加させる可能性のある投機的な投資行動を伴うことがあります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。マネジメント・リスクとは、PIMCOが用いる投資手法およびリスク分析が望んだ結果を生まないリスク、また、政策や変更等が戦略の運用においてPIMCOが利用可能な投資手法に影響を及ぼしうるリスクを指します。

金融市場動向やポートフォリオ戦略に関する説明は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に相応しいという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。見通しおよび戦略は予告なしに変更される場合があります。

本資料に含まれる予測や推計及び特定の情報は独自のリサーチを基としており、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。また、運用結果を保証するものではありません。本資料には、資料作成時点でのPIMCOの見解が含まれていますが、その見解は予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資の助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品を推奨することを目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。

アルファとは、リスク調整後の運用成績を計る指標であり、ポートフォリオのリスク調整後の運用成績のボラティリティ(価格変動リスク)とベンチマーク・インデックスを比較することによって求められます。つまり、ベンチマークに対する超過リターンがアルファを構成します。アルファはプラスの場合もマイナスの場合もあります。ベータとは、市場変動に対する価格の感応度を計る指標です。マーケット・ベータは1と定義されます。相関とは、2つの証券が相互にどう動くのかの統計的尺度です。

ここでの「割安」、「割高」という用語は、当該証券や資産クラスの長期平均並びに運用担当者の将来予想価格を大幅に下回る、あるいは上回るという意味で使われています。将来の運用成果や、証券の評価による利益の確定または損失の回避が保証されるものではありません。

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