1月21日から24日までスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の第50回年次総会(ダボス会議)では、世界経済の現状と将来の見通しに関して、懸念と希望の両面が示された。それらは特に、気候変動とより持続的な経済の構築への課題とに関連づけられたものだ。 気候がリスク上位に WEFが世界の政財界のリーダーのアンケート調査をもとに年に一度作成する今年の「グローバルリスク報告書」では、今後10年の経済に大きな影響を及ぼす可能性があるグローバルリスクとして、気候関連の脅威が初めて上位五つを占めた。トランプ米大統領ですら、2050年までに世界で一兆本の木の保護・再生を目指す「一兆本植林活動」に米国が参加するというコミットメントを発表し、多くの人々を驚かせた。 WEFのボルゲ・ブレンデ総裁は、「政治情勢は二極化し、海面は上昇し、異常気象による火災が発生している」と指摘。「今年こそ、世界のリーダーは社会のあらゆるセクターと連携し、協力体制を修復し再活性化せねばならない」と訴えた。 PIMCOが参加したセッション「SDG の野心: 事業へのインパクト測定」では、国連のグテレス事務総長が多くの中央政府は説明責任の観点からも指導力を発揮できていないと述べ、「持続可能な開発目標(SDGs)」において、地方や市レベルでの行動の重要性を強調した。 「共同・共生を基盤とし、持続可能な世界を構築するためのステークホルダーの連携」という今年のダボス会議のテーマに対し、金融業界はどのように取り組んでいるのか。 まず、持続可能性の課題に対処するためには、最高財務責任者(CFO)がより幅広い行動を取らなければならない、との認識が高まっている。PIMCOの米国コア戦略担当の最高投資責任者(CIO)であり、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した投資を統括するスコット・マザーは最近、国連グローバル・コンパクトと連携したCFOタスクフォースの開設を発表。これは数百人のCFOを結集し、SDGs達成に関わる資金調達ニーズに応える取り組みの支援を目指すものだ。 ESG投資は主流へ また、PIMCOの親会社であるアリアンツをはじめとする大手機関投資家は、2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにするシナリオと整合性のある投資ポートフォリオの実現に向け、野心的な排出目標を推進している。「気候の黙示録の回避」というセッションで、アリアンツのオリバー・ベーテ最高経営責任者(CEO)は、「投資家は低炭素世界経済への移行を支援する取り組みを加速させている」と訴えた。ESG投資は傍流から主流へと変わった。ビジネスや市民社会のリーダーが参加した議論の中で、スコット・マザーは「変化のペースは加速しており、新たな持続可能な投資戦略を求める投資家が増えている」と指摘した。 一方、WEFの開催期間中、毎年発表される信頼度調査のエデルマン・トラストバロメーターによれば、信頼の低下が広がる。ダボスの参加者にとってより重要なのは、公共部門に対する信認の崩壊より、企業や市場に対する信頼の喪失だろう。エデルマン調査によれば、今や資本主義は益より害が多いとの見方が世界の大勢を占めつつある。 結論は、我々全員が持続可能性に投資する理由があるということだ。地政学的な情勢は緊張と不確実性に満ち、気候変動が世界の脅威を増幅している。だが同時に、ダボス会議で取り上げられた持続可能な開発目標は、人類の進歩と企業や市場の持続可能性の青写真となるだろう。
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