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利下げへの確信を徐々に高めるFRB

米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ抑制の進展は認めるものの、利下げにはさらなる確信を必要としています。

連邦準備制度理事会(FRB)は1月、米国経済が依然として底堅いのに対しインフレ抑制に進展が見られることを踏まえ、次の一手は利下げである可能性が高いと明確に示唆しました。時期については選択肢を残しており、3月の次回会合での利下げは時期尚早かもしれません。

経済活動の大幅な軟化がない限り、FRBは年央近くまで待って0.25%の利下げによる緩和サイクルを開始するとPIMCOではみています。その後の利下げについて、FRBの12月の最新の見通しでは、1回会合おきに0.25%の利下げが示唆されていますが、利下げのペースはマクロ経済の動向に応じて調整されるとみられます。

PIMCOでは、インフレが目標を上回る水準で高止まり、または再加速するリスクは、FRBの政策にとって引き続き極めて重要ではあるものの、FRBの評価同様、最近リスク・バランスは改善したと考えています。

より多くの良好なデータを待つ

予想通りFRBが声明から利上げに関するタカ派的な文言を削除したことから、テクニカル的には3月の利下げの可能性がないわけではありませんが、一方で、インフレ率が2%の目標に向かって持続的に低下しているという「より大きな確信」が得られるまでは政策金利を引き下げる予定はない、という但し書きを加えています。ジェローム・パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、「3月の会合までに、3月に利下げを開始すると判断するに足る確信を得られる可能性は低いと思うが、見守る必要がある」と述べています。

昨年12月の会合以降のインフレやその他のマクロ要因の動向は、政策立案者にとって複雑な意味合いを持っています。米国のコアPCE(個人消費支出)インフレ率は引き続き良い方向に向かい、「2%台」の領域に戻りつつあります。しかしながら、コアCPI(消費者物価指数)は引き続きPCEを上回るペースで推移しています。その理由として、CPIの算出に占める住居費の比重が高いこと、PCEの一部の非市場価格カテゴリー(主にヘルスケア)の下落が加速していること等が挙げられます。PCEはFRBが重視するインフレ指標ですが、粘着性のあるCPIデータはFRBの政策決定を複雑にしており、その逡巡が「より大きな確信」という言葉で表現されているとみています。

様々な計量経済モデルは、パンデミック後のインフレ上昇要因のほとんどが財政刺激策やサプライチェーンのボトルネックといったパンデミック関連であることを示唆しており、また最近の良いニュースはこうした要因が減衰、さらには反転していることに起因していることを示唆しています。しかしながら、労働市場は依然として逼迫しており、インフレ圧力を高めています。

FRBが利下げ判断により時間を必要とした背景にはこの他に、2023年後半の緊縮的な財政政策や信用の伸びの鈍化にもかかわらず、米国経済が依然として底堅い点が挙げられます。一方で、緩和的な金融環境は、住宅用不動産投資など金利に最も敏感なセクターの短期的な成長モメンタムを下支えする可能性が高いと考えられます。

金融政策決定に関わる行動については、歴史的な先例も参考になります。中央銀行の政策立案者による緩和は、通常、遅れをとる傾向があります。一般的に緩和を開始するのは、景気が後退局面に入ってからです。PIMCOの 短期経済展望下り坂での舵取り」で論じたように、景気後退前に中央銀行が緩和に踏み切った例も多少はあります。しかしながら、1970年代に猛烈なインフレの最中にFRB議長を務めたアーサー・バーンズの二の舞となることを懸念して、数カ月間はインフレ・リスク管理を重視する可能性があります。

FRBのバランスシートに関する質問

FRBは2022年6月以降、米国債と米政府系住宅ローン担保証券(MBS)の保有残高を徐々に減らしており、今回の会合で現行のバランスシート政策を変更しませんでしたが、パウエル議長はこの件に関する質問に回答しています。今回の会合でバランスシートについて議論したことを認めたうえで、3月により詳細な議論が行われるだろうと述べ、FRBは通常通り金融システムにおける潤沢な準備金の維持に注力していることを示唆しました。

バランスシートが関心を集めている背景には、1月初めにダラス連銀のローリー・ローガン総裁が、FRBはバランスシートの資産縮小ペースを減速すべきだとの見解を示したことがあります。ローガン総裁の発言を受け、現時点ではFRBがQT(量的引き締め)として知られる資産縮小プログラムのペースを減速し、今年のどこかの時点で終了するとの予想が大勢を占めています。

短期金融市場に望ましくないボラティリティを引き起こすリスクと、バランスシート縮小の意向を明確に伝えることのバランスを取ることにより、FRBが保有資産を減らし、最終的に準備金を解消する「テーパリングし、様子を見る」戦略は支持されると、PIMCOでは考えています。これまでのところ、FRBのQT政策により銀行の流動性が大幅に引き締まることはなく、主要な短期金融市場の金利は概ね安定しています。準備金はやや低下する可能性があるものの、依然として潤沢な水準にあることが伺えます。

このため、2024年中はFRBがバランスシート縮小を継続できる状況が続くと、PIMCOではみています。とはいえ、準備金需要の増大、規制変更の可能性など銀行セクターの動向次第で、準備金残高が予想レンジ(様々なモデルによると2兆ドル~3.5兆ドル)に達する前にFRBが縮小額を減らし、短期金融市場の変化に対応できるペースに落として縮小を進めることが望ましくなる可能性があります。

著者

Tiffany Wilding

エコノミスト

Allison Boxer

エコノミスト

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