エマージング市場へ投資する方法の一つとしてエマージング通貨があります。エマージング諸国では一般的に先進国よりも金利が高く、高金利通貨への投資によって高い利息収入(キャリー)を得ることが期待できます(図表5)。一方で、一般的にエマージング通貨は先進国通貨との比較において変動が大きいことに注意が必要です。その変動の要因として、インフレ率の変動が大きいことや、為替市場の規模が小さいために資本フローの動向に大きく影響されることなどが挙げられます。また、国によっては資本規制を行っているため、通貨への投資に制限がかかることがあります。

エマージング通貨の値動きは、投資家のリスク許容度に左右されることが多く、景気の拡大局面で上昇し、反対に後退局面では下落する傾向があります。個別の通貨を見るとき、中央銀行の独立性が不十分な場合などは、通貨への信認より経済の成長を重視する緩和的な金融政策がとられることがあり、インフレへの懸念から通貨が下落する可能性があります。また、海外から流入した資金が短期的な投資を目的としている場合、急激な資本の引き上げが行われ、通貨にも大きな影響が出ることがあります。

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エマージング通貨と資本規制

一部のエマージング国では、急激な資本フローによる自国経済への影響を緩和することや、為替水準のコントロールにより輸出産業を保護することを目的として、資本規制を敷いています。そうした場合、国外の投資家による当該通貨への投資が不可能または制限 れる場合があります。

資本規制により通貨への投資が制限される場合、通貨のノン・デリバラブル・フォワード(NDF)取引が代替の投資手段となることがあります。NDF取引は通貨フォワード取引の一種ですが、元本の取引による決済は行われず、決済日には米ドルなどの通貨で差金決済が行われます。そのため、通貨を実際に保有せずに当該通貨のリスクを取得することが可能です。

シリーズ6:デリバティブ

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