PIMCOの視点

コロナ後の世界におけるホテル市場

ホテル業界はパンデミック危機下の最悪期からは脱却したものの、市場は依然として流動的であり、回復にはばらつきが見受けられます。

テル業界は活況を取り戻していますが、市場は依然として均衡点を見出せない状況にあります。本資料では、PIMCOのポートフォリオ・マネージャーとアリアンツ・リアルエステートのリサーチャーが、市場の現状と投資機会について議論します。

PIMCOとアリアンツ・リアルエステートについて

PIMCOは2020年にアリアンツ・リアルエステートから資産管理を引き継ぎ 、現在、パブリックおよびプライベートの不動産の両方の分野において2,000億ドルの資産を運用する、世界最大級かつ最も多様な不動産運用会社の一つです。このプラットフォームでは、コア、コアプラス、バリューアッド、オポチュニスティックの各資産に投資し、世界中の投資家に幅広いソリューションを提供しています

問: 足元のホテル市場の投資環境について教えて下さい。

ウォルターズ: 回復ペースの違いを反映する形で地域間格差は見受けられるものの、2021年はホテル向けの投資が急増しました。回復を牽引したのは米国市場です。取引金額は2019年比15%増となり、2020年の4倍を超える水準に達しています 。欧州市場とアジア太平洋市場でも増加傾向が確認されていますが、それぞれ2019年に37%、24%届かない水準にとどまっています 。また、米国市場では取引物件数も力強く回復しています。一方、平均キャップレート(還元利回り)に注目すると、欧州市場とアジア市場では概ね横ばいで推移していますが、米国市場では堅調な経済情勢を反映して低下傾向にあります。

ホテル市場は回復しつつありますが、残された課題もあります。トータルリターンの中でインカムは低下しています(他の不動産セクター対比) 。物件所有者が直面する運営上の一番の課題は、労働力不足、賃金の上昇、需要が不安定な中でスケジュール調整に不確実性が存在することと言えるでしょう。運営費用は増加する見通しですが、新たに導入されたテクノロジーや価格戦略の効果によって、多くのホテルでは運営効率が改善する可能性があります。世界金融危機の際に、価格競争に巻き込まれて損失を拡大させた経験のあるホテル市場の投資家は、今回の景気サイクルでは平均客室単価(ADR)の維持に重点を置いています。実際、2021年には、需要がコロナ前の水準から急減したにもかかわらず、米国市場ではADRの下げ幅が5%にとどまりました

もっとも、足元の経済環境において、宿泊料金の日常的な見直しが可能なホテルのインフレ耐性は強力であると考えています。米国以外の市場では、1室あたり平均取得価格の大幅な上昇は確認されていませんが、(1室あたり取得価格が100万ドルを超えるような)超高級市場では取引が活況を呈しています。2019年以降、米国市場では14件、欧州市場では9件、アジア太平洋市場では5件の高級ホテルが取引されています

問: 2021年のホテル・セクターの業績について教えて下さい。

チェン: パンデミック危機下で行動制限が2年近く続きましたが、ビジネスパーソンや観光客は出張・旅行を再開しています。米欧の出張者・観光客による支出は、2021年12月にコロナ前の水準近くまで回復しました 。また、中国に注目すると、中国人観光客の数が2010年の5,740万人から2019年に1億6,900万人へと約3倍に増加した実績があり、ひとたび渡航制限が緩和されれば、海外旅行の動きが加速すると予想されます 。ご参考までに、2019年に国外に渡航した米国人の数は9,900万人程度でした 。家計の貯蓄が、場合によっては予想よりも速いペースで、ホテル市場の循環的な回復を引き続き後押しすると予想しています。

2021年には、米国のホテル・セクターが世界の宿泊セクターの回復を牽引しました。販売可能客室1室あたりの売上高(RevPAR)は、年間を通して堅調に推移しました。通年のRevPARはコロナ前(2019年)を17%下回る水準まで、第4四半期についてはコロナ前(2019年第4四半期)を3%下回る水準まで回復しています 。2022年に入って、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大の影響を背景に、回復ペースは鈍化しているものの、米国市場では2月のRevPARが2019年同月比わずか2%の減少にとどまり、3月については同4%近くの増加が見込まれるなど、地合いの悪化は一時的なものにとどまるとみられます

回復の原動力はレジャー旅行であり、コロナ前の水準を回復するだけでなく、これを上回りつつあります。その一方で、短期の出張(平日)や団体客からの需要には、依然として厳しさがうかがえます。需要は2019年を15~25%下回る水準にとどまり、主要なゲートウェイ市場には特に厳しさが残ります。伸び率が上向きつつあるとはいえ、長期的に見ると、バーチャル会議のテクノロジーによって出張需要は下押しされる可能性があります。

2021年は取引の動きが活発でした。米国市場では、取引件数が過去10年間で3番目に多い水準に達し、2019年を大幅に上回りました 。投資家は新規の供給が限定的となる見通しを踏まえて、集合住宅や産業用建物と比べて抑制していたホテル・セクター向けのアロケーションを、上方修正しています。宿泊セクターのファンダメンタルズは魅力的であると考えています。サイクルは初期段階にあるとみられ、オールインの資金調達コストが低い中でキャップレートは6~8%(2019年のキャッシュフローに基づく)近辺に達するなど、相対的なバリュエーションは魅力的です。

全体として、経済活動の再開が進む中で、前向きな勢いが年間を通して持続すると予想しています。

ザボドフ: 欧州市場では、国によって規制が異なり、2021年を通じて国境を越える出張・観光が伸び悩んだために、回復に遅れが目立ちます。年後半になってRevPARは顕著に回復したものの、通年ベースでは2019年を44%下回る水準にとどまります 。また、ADRがコロナ前の水準の93%にまで回復する一方で、稼働率は2019年の60%程度の水準で低迷しています 。全般に、国内市場が大きい国の方が好調でした

ホテル経営者は利益率を下支えするために、運営効率の問題に適切に対応したものの、収益の回復には遅れが見られます。下押し要因としては、稼働率の上昇期における財務レバレッジの拡大、それに伴うブランド基準の厳格化、人件費の増加、多くのホテルにおいて全面的な営業再開の足かせとなった労働力不足、助成金を始めとする公的支援の段階的な削減などが挙げられます。

全体として、この1年間に、欧州のホテル・セクターには前向きな回復の兆しが見られるようになったものの、全面的な営業再開への道のりは不安定なものとなる公算が大きく、これまでよりも経営不振などの事例が増える可能性もあると予想しています。物価の上昇が資本集約的な改装プロジェクトを圧迫し、複雑な事業計画を有するプロジェクトの資金調達環境に影響するようになれば、なおさらのことです。

問: ホスピタリティ(接客)・セクターではどの分野が勝ち組で、どの分野が負け組なのでしょうか。

ザボドフ: 長期的なファンダメンタルズは引き続き頑強ですが、パンデミック危機の下で短期的な勝ち組と負け組が浮上しました。明確な勝ち組と言えるのは、ドライブ型レジャーに関連する資産です。パンデミック危機の下、顧客が地方の小規模なホテルを選好するようになったことを受けて、アウトパフォームする結果となりました。また、海外旅行に依存する資産は、新型コロナウイルス関連の制約が緩和された月に大きくアウトパフォームするなど、断続的な回復を遂げています。

一方、国内のビジネス顧客を対象とするホテルは、ドライブ型レジャーの需要を一部を取り込んだこともあって、好調に推移しました。最大の打撃を受けたのは国際ビジネスと団体客をターゲットとするホテルです。回復には時間を要し、稼働率が構造的に悪化したり、1ヵ月あたりに消費するコストが上昇する可能性もあるとみています。

ホスピタリティ・セクター全体において強く見られる傾向として、パンデミックがもたらした休止期間を利用して、物件の再構築や差別化された商品の開発に取り組んだ物件所有者は、海外旅行や団体客に依存する場合であっても、当該資産の早期回復や収益性の改善を実現させています。実際、好立地ホテルの企業による予約数は、2019年の水準を上回るケースも見受けられます。

ウォルターズ: 高級な分野ほど、アメニティや品質の点で商品の差別化を図ることによって、市場全体よりも速いペースで成長すると考えています。高級ブランドは、「ウェルネス」を求める世界的なトレンドを捉えつつあります。米国市場では、多く機動的な投資家が、健康や幸福のトレンドに訴えかけるために物件の再構築を進めています。

欧州市場では、最近パリで開業したホテルを始めとして、伝統的な高級ブランドがホテルを開業しています。

問: ホテル業界にとってハイブリッド型の勤務形態の普及は、プラスとマイナスのいずれに作用するのでしょうか。

ウォルターズ: ハイブリッド型の勤務形態は、長期的にはホテルの利用状況に影響を与えると考えています。既存の顧客との通常のコミュニケーションや各地の拠点との内部調整は、特に問題なくバーチャル形式で概ね対応できるため、ビジネス関連のホテル利用は完全には回復しない公算が大きいようです。

それでも、人々の生活や仕事の場が変わることによって、ホテル需要の新たな源泉が生まれるかもしれません。今後は、オフィスは都心にシフトしていくと考えています 。反対に、通勤時間の長さが以前ほど問題にならなくなったため、従業員はさらに遠方に転居しています。一時的な宿泊施設を必要とするビジネス顧客をターゲットとする、ホテル型オフィスというコンセプトが生まれつつあります

問: ホテル市場ではどの分野に投資機会を見出しているのでしょうか。

チェン: パンデミック危機が始まって以来、流動性が逼迫した市場環境を投資機会と捉えて、ホテル関連のアセットや有価証券に60億ドル以上の資金を投じてきました。対象とした市場は、パブリック・デット、プライベート・デット、エクイティなど、多岐にわたります。地域によっては、コロナ前の水準に回復するのに数年かかると思われます。また、レジャーや長期滞在施設などの市場セグメントは、他のセグメントよりも早期に回復するとみています。

米国市場では、宿泊施設の資産価格がコロナ前の水準に近づいているため、高水準で安定的なキャッシュ・オン・キャッシュ・リターンが期待できる市場セグメントに、重点を移しています。多くの場合、大規模な設備投資を通じて付加価値を高める作業が伴います。また、人口密度の高いゲートウェイ都市に所在する資産が、投資機会につながることもあります。これらの市場は出張や海外旅行に対する依存度が高く、需要の回復にはより長い期間を要すると見込まれますが、市場価格が引き続き低迷しているため、投資の入口として魅力的な機会が生じる可能性があります。

経験豊富で有力なホテル運営会社と連携しつつ、多様な需要の源泉から恩恵を享受することが可能で、長期的に新規の供給が限定的とみられる市場において、質の高い資産に注目しています。

ザボドフ: 欧州市場においては、ホテル・ブランドを幅広く浸透させることに注力しています。米国市場では全体の70%程度がブランド・ホテルですが、欧州市場では、50%程度の英国から16%のイタリアに至るまで、ばらつきが見られます

PIMCOでは、ブランドのないホテルや、ブランドが十分に認識されていないホテルに注目しています。多くの場合、そのようなホテルは、専門的な経営がされていない、あるいは往々にして経営難を背景に資金面で制約を受けているという理由によって、過小投資の時期を経験しています。市場平均を上回るペースで売り上げを伸ばしつつ、アルファを創出することを目標として、包括的な最新化計画に基づいて投資を行い、最高級の差別化された物件への再構築を図り、ブランドのマーケティング・チャネルを活用しています。

チェン: 要約すると、パンデミック危機は世界のホテル市場に未曽有の混乱をもたらしました。市場の歪みを投資機会として捉えるため、投資対象を幅広く見据えつつ、ホテル関連資産の資本構成全体に、公募の有価証券やプライベート・アセットという形態で投資しています。投資プロセスにおいては、(1)ホテルセクターの特定分野の回復への道筋について、事実に裏付けられた見解を構築し、(2)各地域における需要の源泉、競合状況、潜在的な供給について、資産レベルで詳細な分析を行ない、(3)的を絞った設備投資を実行することによって、魅力的なリターンを生み出す潜在的な投資機会を見極めることに、注力しています。宿泊セクターのマクロのダイナミクスに関する専門性と現場での実務能力を備えた、PIMCOの大規模なポートフォリオ・マネージャーのチームが、ホテル・セクターにおいてアルファを獲得する上で重要な役割を果たすと考えています。

アリアンツ・リアルエステート・リサーチのLuke Lathamが、このレポート執筆にあたり多大な協力をしてくれたことに感謝します。


1 2021年12月31日現在。運用資産残高には、PIMCOの関連会社であり完全子会社であるアリアンツ・リアルエステートと契約している顧客の総資産1,030億ドル(推計)が含まれます。
2 リアル・キャピタル・アナリティクス
3 リアル・キャピタル・アナリティクス
4 MSCI
5 STR
6 リアル・キャピタル・アナリティクス
7 https://www.ustravel.org/research/monthly-travel-data-report
8 Tuigroup.com 決算発表、2022年2月8日。
9 中国国家統計局
10 中国国家統計局
11 STR
12 STR
13 STR
14 リアル・キャピタル・アナリティクス
15 PIMCOの推計
16 STR
17 STR
18 STR
19 McKinsey「The comeback of corporate travel: How should companies be planning?」2021年7月、Green Street「Is the Hotel Industry “Zoomed”?」2020年9月
20 アリアンツ・リアルエステート「The evolution of the global office sector in a post-COVID world」2021年9月
21 CBRE「When Will Convention and Group Demand Come Back?」2020年10月
22 Horwath HTL「chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/viewer.html?pdfurl=https%3A%2F%2Fcorporate.cms-horwathhtl.com%2Fwp-content%2Fuploads%2Fsites%2F2%2F2019%2F03%2FHTL_2019_EU_CHAINS.pdf&clen=12688592&chunk=true」
著者

Devin Chen

米国商業用不動産チームの共同統括責任者

Megan Walters

アリアンツ・リアルエステート 調査部門 グローバル統括責任者

Kirill Zavodov

ポートフォリオ・マネージャー

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