寄稿文

バイアス認め運用力を高める

日本経済新聞夕刊十字路(2021年4月7日付)

バイアスに関する行動科学の知見を資産運用に活かす

顧客資産の運用に携わって20年余になるが、さらに運用力を高めたい。ヒントがようやく見えてきた気がする。

投資対象や手法によって多少の違いはあれども、資産運用のプロセスはおおむね共通している。各投資対象のリターン予測とリスク評価に始まり、これに基づいて投資戦略を策定。各戦略の相関、顧客の投資目的やリスク許容度なども考慮してポートフォリオを構築。新しい情報を得るごとにこのプロセスを繰り返し、適宜ポートフォリオを調整する。経済・金融・政治さらには気候変動など分析対象は広く、知識及び分析スキルのアップデートが欠かせない。

大きな市場変動を幾度となく経験したがゆえにその重要さを痛感させられることがある。バイアスに関する行動科学の知見だ。

誰しも自分の考えに沿う情報ばかりを集めがちだ。これは「確証バイアス」としてよく知られる。資産運用においても、自らのリターン予測を支持する情報により注目し反証となりうる情報を軽視してしまう。属人的な確証バイアスを抑えるうえで、見方の異なる人と積極的に議論したい。個人でなくチームとして意思決定することも有効だ。ただし、いわゆる「集団思考」に陥ってはならない。役職などに捉われずチーム内で自由に主張ができるシステムや環境づくりなどの工夫が欠かせない。

人は同額の利益追求よりも「損失回避へのバイアス」が強いことも実証されている。市場変動を受けて運用成績が低下すれば誰しも心理的に辛い。顧客資産であればなおさらだ。バイアスを理解していれば、一時的な低下は想定内だとして冷静に対応することもできよう。

バイアスは無意識のなかに存在する。これらを認めて適切に対応し、よりよい資産運用を目指したい。

著者

Tomoya Masanao

ピムコジャパンリミテッドの日本における代表者兼アジア太平洋共同運用統括責任者

プロフィールを見る

Latest Insights

ESG債を通じて企業に変化を促す
寄稿文

ESG債を通じて企業に変化を促す

日経ヴェリタス Market Eye寄稿文(2022年9月18日付)

世界の債券市場は株式市場より規模が大きく、資本市場で重要な役割を果たしており、債券保有者はESGにおいて大きな影響を与えることができる力を持っている。

関連コンテンツ