「日銀は日銀法により物価安定義務があるから、いかなる原因でデフレが起こっているにせよ、(中略)責任があるのだ」。黒田東彦日銀総裁は、就任以前に刊行の自著で、デフレの原因と物価安定への法的責任を区別することを説いた。この規範的信念が、就任から6年半続く大規模金融緩和の根底にあろう。一貫した姿勢は政策当局者として尊敬されるべきだが、目標とする2%の物価上昇率がいまだ見通せない事実は重い。 米中貿易戦争のあおりを受け日銀の追加緩和も取りざたされている。物価上昇の安定目標が未達ななかで、超低金利政策がさらに長期化すると予想される。果たして物価目標の達成をもたらすであろうか。 黒田総裁は最近の講演で「人々の先行きの物価観は経験に大きく依存する」とした上で世代間による物価観の違いを指摘した。わが国では現役世代の多くにインフレ経験がない。この人たちの物価観が劇的に変わるとは思えない。 わが国では家計・企業ともに貯蓄超過だ。超低金利の長期化は借り手である政府への所得移転、すなわち隠れた「金融資産課税」と言える。人々が長寿化に備えて消費よりも貯蓄を優先する状況で、超低金利は需要政策として果たして有効だろうか。国会での議決を経ない金融資産課税は、民主社会においてどこまで許容されるべきだろうか。 一方で投資家は超低金利に対応してリスク資産への配分を余儀なくされている。株式や低格付け債券、低流動性資産への投資を増やして利回り不足を補う。本来のリスク許容度を超えていまいか。 日銀には物価安定に加えて金融システム安定の責務がある。バブルの発生と崩壊を避けることに重点を移して、デフレや低インフレとの闘いの先頭打者として各国中銀を主導してはいかがだろうか。 (ピムコ アジア太平洋共同運用統括責任者 正直 知哉)
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