先月北京で中国人民銀行及び国際通貨基金共催の国際会議が開かれた。テーマは中国債券市場。市場の健全な発展についてグローバルな視点から議論する意欲的なもので、私は海外投資家を代表して招かれた。 中国債券市場はすでに大きい。市場規模は約77兆元(円換算で約1300兆円)と米国・日本に次いで3番目だ。現状の拡大ペースを前提にすれば、今後5年程度で日本を抜くと予想される。 従来の資本規制により海外投資家の保有比率は2%未満だが、今後は拡大に向かおう。2016年に海外機関投資家のインターバンク市場参入が解禁された。昨年には香港と中国本土間の相互取引制度が導入され、海外投資家の投資枠は事実上撤廃された。投資家が参照するグローバル債券指数に人民元建て国債などが早ければ来春から組み入れられる。市場アクセスの改善に加え、リスクヘッジ手段など課題は多いが当局の意識は高いと感じる。 一方、中国債券投資においては次の2点がより本質的だ。まず、金融政策の透明性だ。先進国では金融政策は法律によって政府からの独立性を担保され、物価や金融システムの安定などの政策目的が定められている。人民銀行は無論政府から独立しておらず、政策目的は多岐にわたる上、その優先度は不透明だ。 次に、市場メカニズム。中国市場でのデフォルト率は0.5%以下と極めて低い。業況悪化した企業への政府全面支援が発行体のモラルハザードを誘い企業債務問題を深刻化させ、市場を歪めている。 中国当局は市場改革に向け始動している。運用者として、先進国市場での知見を生かし改革に貢献したい。この巨大市場の健全な発展は、域内ひいては世界の資本配分を効率化する。一方、当面は不透明な金融政策や政府保証を考慮した投資戦略で対峙しよう。 (ピムコ アジア太平洋共同運用統括責任者 正直知哉)
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