寄稿文

FRB「緩和的な環境」にカジ

日経ヴェリタス Market Eye(2020年5月17日付)
今後数四半期における金融環境は、FRBによる資産の買い入れ施策のみならず金利政策に影響されるだろう。

米連邦準備理事会(FRB)は、新型コロナウイルスによる経済的打撃を軽減するため、各市場にまたがる様々な融資の枠組みや施策を導入した。今後数ヵ月間、FRBの軸足は危機管理的なモードから緩和的な金融環境の維持に移るとみられる。ピムコはFRBが大規模な資産の買い入れや金利の道筋について、より具体的なガイダンスを追加的に提供するとみている。

「定常状態」へ減速

3月中旬以降、未曾有のペースで米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れを進めた結果、FRBのバランスシートは肥大化している。今後数週間、FRBは「定常状態」の水準に向けてテーパリング(緩和縮小)を継続し、少なくとも今年第4四半期まではそのペースを維持するだろうと予想する。

景気後退の深さと経済活動が再開された後の回復度合いについて、より多くの情報が得られれば、FRBは金利の道筋を示すフォワード・ガイダンスについても強化する可能性が高い。経済活動が再開されても景気回復は緩やかな軌道を辿ると考えられる。米経済が完全雇用とコアPCEインフレ率2%に到達するまでにはしばらく時間がかかるだろう。ニューヨーク連銀によれば、FRBは米国債の1日あたり買い入れ額を750億ドルから100億ドルに減額している。だが今後予想される米国経済への強烈な逆風を勘案すると、FRBの焦点は金融市場の流動性の回復から、適切なレベルでの緩和的な金融環境の設定にまもなく移ると予想される。

今後FRBは無期限のプログラムを発表し、米国債については月1,000億ドル、MBSについては月250億ドルという定常状態まで買い入れペースを減速させることになるだろう。FRBが米経済の回復に自信を持ち、2%のインフレ目標を持続的に達成できるまでは、このペースの維持にコミットメントを示すとピムコでは予想しており、少なくとも2020年第4四半期まではこうした状態が続くと見込んでいる。

FRBは米国債の追加的な発行の多くを購入し、緩和的な金融環境の維持に努めるだろう。コロナ関連の景気刺激策に加え、議会による追加的な施策が実行される可能性も高く、米国債による追加的な資金需要は3.2兆ドルに達するとみており、民間部門への追加供給は1兆ドル近くになる可能性があり、FRBによる国債とMBSの購入がその大部分を埋めることになるとみられる。

22年までゼロ金利

FRBのバランスシートは、パンデミック前の4.2兆ドルから、ピーク時には8.5兆ドル前後の水準に達すると予測しており、それ以上の水準となるリスクもあるだろう。FRBは各種資産の買い入れに加え、様々な融資及び流動性供給の枠組みや施策を発表しており、総額は2.5兆ドルに達する。手数料や開示義務が伴うことを踏まえれば、これらの枠組みの一部においては利用が可能枠を大幅に下回る可能性があるものの、金融市場の最後の砦(とりで)と位置付けられているため、市場環境が再び悪化した場合は、その規模が拡大される可能性もあろう。

今後数四半期にわたって、金融環境は金利の道筋にも影響を受ける。インフレ期待を支えるためにFRBは当面の間、長期目標の2%を上回るインフレ率を容認するか、オーバーシュートそのものを目標とする可能性が高い。このようなFRBのスタンスを反映し、政策金利は2022年までゼロ金利を継続する可能性がある。

フォワード・ガイダンスを実績インフレと連動させ、場合によっては2~3年程度の期間をメドとした、正式なイールドカーブ目標を打ち出す可能性もある。こうした政策によって、実体経済が緩和的な金融環境の恩恵を受けられるようFRBが支援することは可能だろう。

著者

Tiffany Wilding

米国のエコノミスト

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