寄稿文

FRB頼みの金融相場(寄稿文)

日経新聞夕刊 十字路 (2020年2月4日付)

通常、株価と長期金利は順相関の関係だ。すなわち株価上昇には金利上昇が伴う。ところが2019年は逆相関になった。改めて数字で確認すると、S&P500種株価指数が約三割上昇したのに対して、米国の10年国債金利は約0.8%下がった。

当社が19年初めに日本の投資家を対象に実施した相場予想調査を振り返ると興味深い。当時、大多数が株式相場と米国の長期金利がともに上昇すると見込んでいた。米連邦準備理事会(FRB)はさらに利上げするとの見方が多く、期待の裏付けでもあった。

だが周知のとおりFRBは19年に利下げに転じた。米大統領の介入が影響したか知るよしもないが、パウエル議長ら執行部の金融政策スタンスからもハト派ぶりは十分うかがえる。

高齢化、グローバル化、テクノロジーの進歩。これらすべてが貯蓄を増やし、景気に対する中立金利を押し下げる。一方で政策金利はゼロ近くから有意に下げられない。「中立金利の低下」と「政策金利の下限」は中央銀行に共通する課題だ。物価上昇は限定的で、FRBにとって利下げよりも利上げのハードルの方が高い。景気・株価のリスク懸念が浮上するたびに、利下げ期待が台頭して株価を下支えする。

2020年はどうなろうか。基本的に「FRB頼みの金融相場」が続くのではないか。ただ19年に大幅に上昇しただけに、株式相場の発射台は高い。新型肺炎や米大統領選などリスクもある。株価上昇に多くを期待せず、むしろ変動率の上昇に注意したい。

米国の長期金利は、景気回復がより鮮明になれば多少水準を切り上げるだろうが、FRBが短期金利の重荷になって長期金利上昇の抑制につながろう。一方、リスクが顕在化する時にはFRBの利下げが金利低下につながるメリットがありそうだ。

著者

Tomoya Masanao

ピムコジャパンリミテッド共同代表者 兼アジア太平洋共同運用統括責任者

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