マーケットアイ リチャード・クラリダ氏 ピムコ マネージング・ディレクター、グローバル戦略アドバイザー トランプ米大統領は2日、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長にジェローム・パウエル氏を指名した。同氏は2012年からFRB理事を務め、上院に2度承認されていることから、ジャネット・イエレン現議長の任期が切れる来年2月までには問題なく承認されるものとみられる。「ジェイ」パウエル氏は弁護士であり、1990年代には財務次官を務め、FRB入りする前は米投資ファンドのカーライル・グループの共同経営者だった。 19年以降の判断注視 パウエル氏は理事として、金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)で反対票を投じたことがないことから、イエレン議長のもとで導入された金融政策正常化の枠組みを維持するものとみられる。現時点でFRBは2018年も緩やかな利上げを継続する方針で、FRBの予測の中央値では、景気が予想どおりであれば、年3回の利上げが適切だとみているようだ。 10月から始まったバランスシートの縮小についても、FRBの現行の計画が継承されるだろう。パウエル氏も立案に関与したこの計画は、市場への周知が十分に図られており、いまのところ13年のような「テーパー癇癪(かんしゃく)」の再来を招く事態にはなっていない。計画では、FRBが保有する米国債とモーゲージ債について、予測可能な形で毎月減額するとしている。 金融規制についてパウエル氏は、ボルカー・ルールを改定し、中小金融機関に対してFRBの毎年のストレステストの要件を緩和する可能性もあるとの認識を示している。 19年以降は、金融政策正常化プロセスをいつ、どのように終わらせるかというイエレン議長のもとで積み残された課題で、重大な判断を迫られることになる。具体的にはいつ利上げをやめ、バランスシートの縮小を終了するかを、どこかの時点で決めなければならない。 公式の発言からパウエル氏は、今回の利上げサイクルの最終的な水準は金融危機以前のそれよりかなり低くなるはずだとする、PIMCOの「ニュー・ニュートラル」の考え方に同意しているように見受けられる。しかしながら、FRB内でニュー・ニュートラルの水準について合意があるわけではないため、コンセンサスを形成する必要があるだろう。 景気後退時どう対応 FRBのバランスシートの正常化についても同様のことが言える。現状では、縮小すべきだとの見方で一致しているものの、最終的な適正規模についてFRB内に合意があるわけではない。パウエル氏は議長として、この点についてもどこかの時点でコンセンサスを形成しなくてはならない。 また、向こう4年の間のどこかで米景気は後退局面に入ると予想される。現在の拡大局面はすでに米史上3番目の長さに達しており、差し迫った減速の兆しは見当たらないものの、過去の例に照らすと今後4年で景気後退を回避できる確率は50%を下回っている。 景気が減速した場合、ニュー・ニュートラルの世界での利下げ余地は、過去の後退局面よりも小さくなると見込まれる。だとすれば、フォワード・ガイダンスや量的緩和の可能性も含め、追加的な緩和手段について検討し合意を形成する必要がある。 パウエル氏の議長指名は賢明な選択だといえる。同氏はイエレン議長のもとで策定された金融政策の枠組みを継承し、政策金利を徐々に正常化すると共に、予想できる形でバランスシートの縮小を進めるだろう。 ただ、長期的には、金利とバランスシートの両方について最終的な水準をどうするのか、重大な判断を迫られることになる。また、金融規制の振り子が振れ過ぎているとの懸念には同意しているもようで、特に中小金融機関の健全性の評価調整の見直しには前向きである点に留意している。
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