ンフレの急騰と市場の混乱の中で、投資家は嵐の真っ只中にいるように感じるかもしれません。しかし、債券市場の一角には、どんなシナリオでも耐性のあるリターンを維持できる可能性で際立つセクターがあります。証券化商品のシニア債です。

最近のスプレッド拡大により、同セクターに投資をし始めるには世界金融危機以降で最も適した時期といえるでしょう。投資機会は様々な資産クラスに見受けられます。商業用不動産ローン担保証券(CMBS)のプールを裏付けとする質の高いシニア債、非保証の住宅ローン担保証券(RMBS)、企業向けバンクローンの担保証券(CLO)、その他の消費者ローン債権の資産担保証券(ABS)などです。

シニア債は、それぞれの資本構造において返済優先順位が最も高く、その信用は、劣後、超過担保、債務返済やその他の費用を超えて担保で支払われる超過利息によって支えられています。この構造により、担保割れの影響を受けにくくなっています。さらに今後は、需給要因がバリュエーションを下支えするとみられます。バリュエーションは、歴史的な観点、相対価値の観点の両方で魅力的だと見ています。

AAA格の証券化商品、シニア債の足元のスプレッドは、スワップカーブ上で、160ベーシスポイント(bps)から230bpsのレンジにあります。年初来でスプレッドは約110bps拡大したことになりますが、シングルA格の社債のスプレッドは、約70bps(金融セクターを除くとわずか50bps)しか拡大していません。実は、一部の厳選したAAA格証券化商品のスプレッドの水準は、平均して2020年の最初の新型コロナ・ショック直後に見られたレンジ内にあります(下図を参照)。

証券化商品、シニア債のスプレッドは魅力的

嵐からの退避

市場環境

年初来のスプレッドの動きは、クレジットの質が全般的に変化したことによって牽引されたものではありません。むしろ、証券化市場の特異性、すなわち限定的な流動性と専門の買い手基盤が欠如していることにより、全体的なリスク・センチメントが悪化していることを反映したものです。さらに、一部の銀行参加者は、資本制約、ポートフォリオの拡張、資金調達コストの変動、基準価額の下落によって脇に追いやられています。

消費者ローン、住宅ローン、企業向けバンクローンのパフォーマンスは、より広範なマクロ経済と同じ不確実性に連動していますが、シニア債は構造上、ダウンサイドのリスクがある程度緩和されています。信用補完措置の全体的な水準は、担保の過去の実績と、雇用、経済成長、インフレなどマクロ経済全般の変化に対する損失感応度に基づいて評価されています。例えば、単一の資産や借り手のセクター(シングルアセット/シングルボロワー (SASB))における多くの商業住宅ローン担保証券(CMBS)シニア債のLTV(総資産有利子負債比率)は25%~30%であり、裏付けとなる不動産の担保価値が70%以上下落しなければ、シニア債が不良債権化しないことを示唆しています。歴史的には、ここまでの水準の信用補完措置が取られていれば、デフォルトリスクは十二分に緩和できる傾向があります。

強固な信用補完措置が取られたシニア債は、格下げリスクやデフォルト・リスクとは引き続き距離があるとみています。不確実性が高い今の時期に、これは極めて重要な特性です。さらに、これらの証券は、基礎となる借り手が住宅ローン、その他のローンなどの元本を返済し、適時の償還が将来の資本市場の状態に依存することが少ないため、本質的に自己精算的であると言えます。

このセクターは、供給が限られているため需給面でも有利です。原資産に対するシニア債の値づけは持続可能ではなく、バリュエーションを下支えする形で自己調整されると予想しています。金利が上昇し、証券化商品のスプレッドが未曾有のレベルに拡大する中、ローン・オリジネーターとローン・アグリゲーターの資金調達コストは、年初来で大幅に増加しています。このため、ディールのスポンサーにとって引き続き経済的な意味を持つには、シニア債のスプレッドが縮小するか、裏付けとなるローンの金利がそれに応じて上昇する必要があります。

そうならなければ、ローンの条件が割高になることを意味し、割高な資金調達を選択する借り手が少なくなり、一般にオリジネーションのボリュームの減少につながるはずです。既にこうした現象は、住宅ローン、商業用住宅ローン、学生ローンの借り換え、バンクローンに見られます。オリジネーションのボリュームが減れば、ABS、CMBS、CLO、MBSの発行の供給が減ることになります。このため需給要因が、同資産クラスの支援材料になるとみています。

投資機会

質の高い証券化商品のスプレッドは、現在、160bps~230bpsのレンジにあります。世界金融危機以降、スプレッドがこの水準に達したのは3回しかありません。2011年後半の欧州債務危機、2015年後半から2016年初頭の市場の混乱時、米連邦準備制度理事会(FRB)が市場の安定化に乗り出す直前の2020年の短期間です。フォワードカーブが実現すれば、債券が徐々に償却される中で、投資家は向こう3年から5年の間に、質の高い債券で5%~6%の利回りを得られる可能性があります。

このトピックの詳細については、最近のブログ記事「歴史的な市場の動きを受けて、債券の見通しは改善」をご覧ください。 (7月8日時点)

著者

Jing Yang

エグゼクティブ・バイス・プレジデント

Bryan Tsu

ポートフォリオ・アナリスト

Dom Rinaldi

ポートフォリオ・マネージャー、証券化商品担当

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ご留意事項

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全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。バンクローンも含めシニアローンへの投資は、クレジット・リスク、期限前償還リスク(コール・リスク)、決済リスク、および低流動性リスクが高くなることがあります。バンクローン は通常他の債券よりも換金性が低くなっており、バンクローンの早期償還は正確に予期することは難しく、一般市場状況および財政状況より影響を受ける場合があります。担保付きバンクローンの担保が実行されても借り手の債務を満たす保証はなく、また担保が実行される保証もありません。モーゲージ担保証券と資産担保証券は金利水準に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、発行体の信用力に対する市場の認識に応じてその価格は変動する可能性があります。また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。ローン担保証券(CLO)は高水準のリスクを伴う場合があり、かかるリスクを理解できる適格投資家への販売が想定されています。投資家は投資した資金の一部、もしくは全部を失う可能性があります。また、投資家に対してキャッシュフローが配分されない期間が生じる可能性もあります。CLOへの投資は、デフォルト・リスク、流動性リスク、マネジメント・リスク、価格変動リスク、金利リスク、クレジット・リスク等を負うことになります。分散投資によって、損失を完全に回避できるわけではありません。

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