PIMCOは直近の短期経済予測会議で世界経済は減速期に入りつつあると結論づけました。この減速期は2020年まで続き、回復に転じるのか景気後退に陥るのかについて、不確実性が高まると予想しています。
しかしながら、こうした世界的な低成長期にも、アジアのクレジット市場には投資機会が存在するとみています。特にアジアのハイイールド債は、米国のハイイールド債に比べてスプレッドが拡大しており、バリュエーションが魅力的です。投資適格債については、アジアは安定しており、スプレッドはややタイトな平均並みです。
需給面では、中国のハイイールドの不動産銘柄を牽引役に、年初来の供給が高水準で推移しています。ただし、国家発展改革委員会(NDRC)の上限規制により、下半期の供給は減少すると予想しています。
需要面も好調です。アジア・クレジットのファンドは2018年には流出超となりましたが、現在は堅調に推移しています。オープン・エンド型のアジア・クレジットのファンドの残高は300億ドルに達し、アジア・ハイイールドのファンドには力強い流入が続いています。
ファンダメンタルズについては、いくつかの理由からより慎重にみています。第1に、足元では進展がみられるものの、米中間の貿易戦争は今後も続くとみられます。米中貿易戦争はアジア地域の経済成長に下方リスクをもたらしており、信認と投資を妨げる可能性があります。
第2に、中国の信用緩和による刺激策の効果が減退しつつあります。与信の伸び率変化を示す「クレジット・インパルス」は、プラス成長を取り戻せていません。政策当局は、初期の債務水準の上昇による潜在的なリスクを認識し、シャドーバンキングの活動を制限しており、ノンバンクは債務削減モードに戻っています。ここ数カ月は、不動産開発会社や住宅ローンへの資金供与も引き締められています。5月に中国銀行間市場で初めてデフォルトが発生して以来、中小規模の銀行の流動性が細ったことも、クレジットの波及メカニズムの効果をさらに低下させています。PIMCOでは、中国人民銀行が定める最優遇貸出金利(LPR)と、それが資金調達コストに与える影響の推移を注視しています。
苦境を回避し、投資機会を見定めるには、しっかりしたクレジット・リサーチとアクティブなマネジメントが重要です。繰り返しになりますが、不確実性が増し、世界的に低成長に向かう環境でも、セクター間や銘柄間に、相対的な投資機会は豊富に存在します。インドのインフラ分野では、航空輸送の伸びが構造的なストーリーとして、発行体の耐性の維持に寄与するとみています。再生エネルギーの分野もまた、負債による資金調達の注目を幅広く集めている、環境・社会・ガバナンス(ESG)の目標を満たしています。
ご留意事項
2019年10月15日撮影
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