コロナ封鎖により第2四半期にエレベーターのように急降下した世界経済が、いまゆっくりと階段を上り始めています。世界経済は徐々に再開し回復しつつありますが、ソーシャルディスタンス維持の政策は今しばらく続くでしょう。もう数カ月もすれば、勝ち組と負け組が次第に明らかになってくるでしょう。これは債券投資家にとって、大きなチャンスです。
PIMCOではこの数カ月、クレジット投資を増やしています。質の高い発行体を優先して的を絞り、大きくディスカウントした好条件の新発債に投資しています。世界のクレジット市場のスプレッドは、ここ10年で見るとまだ十分に魅力的な水準です。
アジアのファンダメンタルズに関しては、中国が主導する形で順調に回復している様子が見えます。中国の回復のスピードは、各種の先行指標から明らかです。4~6月期のGDPはプラスに戻り、必要に応じて金融政策による対応余地も残っています。あちこちで小規模な感染は発生していますが、中国当局は概ね感染拡大をうまくコントロールできています。
アジア全体では中央銀行によるさらなる緩和が見込まれ、また総じて原油価格低下の恩恵も受けています。
需給面では新規発行が戻りつつあり、価格設定は非常に魅力的な水準です。今年のアジアのハイイールド市場で指摘したい点は、資金再調達のニーズが特に大きくないことです。供給面は非常に好環境にあります。
アジアのハイイールド市場のスプレッドは依然として大きく、その水準は2009年金融危機、2011年の欧州危機、2020年初を除いては見られないほどの水準です。また、米国のハイイールド市場と比べても、スプレッドに開きがあります。したがってグローバルに資産を配分する投資家は、ファンダメンタルズと割安感からアジアに注目するでしょう。
回復シナリオの違いによって、投資機会はさまざまなセクターに見られます。例えばL字型やV字型の回復を想定すれば、どちらのシナリオでも期待できるセクターを考えると、中国のインターネットや不動産セクターは特に魅力的です。
中国のインターネットセクターは急速な成長を遂げていますが、これは構造的な流れだと考えています。このセクターの企業はこの時期をうまく生き延びており、旅行などの活動が制限される中で、利用者は実際に増えています。財務内容は非常に良好です。
不動産セクターは、中国の経済成長を支える大きなセクターで、中国の政策当事者にとって成長が苦しい時期に、このセクターを支えることは極めて重要です。住宅購入やローン規制、開発業者の資金ニーズに対する制限など、現在やや引き締め気味の政策には緩和余地が残っています。
V字回復のシナリオでは、消費者所得と住宅購入能力の向上も見込まれます。L字回復のシナリオでは、ディフェンシブなセクターに注目しています。例えば自己資本を充実させてきた、金融セクターや、確実に需要が見込める生活必需品セクターや、公益セクターなどです。
V字型のシナリオでは景気循環セクターに注目します。新型コロナウイルス危機の影響を大きく受けてきましたが、買い控えによる、潜在需要の反転が見込まれるためです。この3~4カ月市場を動かしてきた要因は、もうしばらくは大きく変わらないでしょう。
ひとつはウイルスの拡大状況、もうひとつは政府と中央銀行による対応です。経済封鎖によるリスクを抑えるため、金融や財政の力を大いに活用するのでしょうか。その場合には、資本市場の反応を見る必要があります。企業は資金調達ができるのでしょうか。中国企業の資金調達ニーズを満たす多様なルートが、確保できているかの指標として、オンショア市場の動きも重要なポイントになります。
デフォルトにも要注意です。市場は非常に高い、おそらく高すぎる、デフォルト率を想定しています。その点は注視していきます。
回復しつつある景気がこのまま継続するのか、発表頻度の高い経済指標もしっかりとフォローしていきます。