アジアのクレジット市場は3月以降、非常に不安定になっています。世界中のアセットで全般的に、大規模なリスクオフの動きが起きています。
世界のクレジット市場ではスプレッドが劇的に拡大しましたが、アジアでは特にハイイールド債が売り込まれました。ご存じのとおり、こうした動きを引き起こしているのは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済混乱です。過去数週間、様々な事業が突如停止を余儀なくされたことで、ファンダメンタルズがマイナスに転じました。
さらに3月初旬にOPECプラスが減産合意で決裂したことを受け、原油価格が急落し、最近協議が再開されたとはいえ、エネルギー・セクターへのさらなる打撃になりました。
市場にはテクニカルな圧力もあります。その一つは現金需要で、現在、多くの企業が収益が得られない中で現金の枯渇に直面しています。同時に、ボラティリティの急上昇で、リスク選好は大幅に減退し、流動性の低下により、市場参加者の取引能力は低下しています。
流動性懸念に対処するために、政府が迅速な行動をとったことは好材料です。米連邦準備制度理事会(FRB)の緊急対策により、アジアのクレジット市場も落ち着き始めています。様々な資金調達プログラムが打ち出された3月中旬以降、状況は大幅に改善しています。
アジアのクレジット・スプレッドは大幅に拡大しており、概ね米国の類似銘柄と同様の動きになっています。
向こう6カ月で、中国の景気は回復するのでしょうか?
中国はいち早くロックダウン(封鎖措置)を実施したことから、他国の良きロードマップになる可能性があります。高頻度データでは回復の動きが緩慢であることが示されています。電力消費量、工場の生産能力、不動産販売の回復の程度はまちまちです。引き続きかなりの不確実性があり、感染拡大の点でも世界的な需要破壊の点でも、第2波の影響を受ける可能性があります。生産が2019年後半の水準に戻るのは、2020年第4四半期か2021年第1四半期になるとみています。
ジレンマは、政策立案者が財政および金融政策を通じて、景気を刺激したい意向であるのに対し、中国は以前デレバレッジを進めていたことから、過度な信用主導による拡大を回避しようとすると思われる点です。
アジア・ハイイールド・セクターのデフォルトに対する見方は?
新型コロナが最初に発生してから、そして市場と一般の人々がそれを理解するための時間を考えると、まだ2カ月しか経っていません。
私共が対話した企業の多くは、引き続き適切な対策の立案に取り組んでいます。どの設備投資を削減できるのか、予め用意していた融資枠に手をつけるべきかどうか。こうした問題への取り組み方は、企業ごとに大きなばらつきがあると見受けられます。
デフォルト件数は感染拡大前に予想した水準よりも、増加する可能性があります。どこまで上昇するかは不透明で、引き続き検討が必要です。ただ、市場はきわめて前向きであり、最善を尽くして、この未曾有の事態を織り込もうとしていることはお伝えできます。デフォルト率が世界的金融危機の時以上に悪くならない限り、現時点で割安な領域があるとみられます。
この問題を別の角度から見ると、アジア・ハイイールド市場では、2020年に償還を迎える米ドル建て債が特に多いわけではありません。私が管理する発行体の多くは1月初旬に借り換えをしています。発行体にとってクーポンを支払うことができる限り、デフォルトの問題はそれほど深刻でないでしょう。より大きな試練は2021年にやってくるでしょう。
現在の市場における投資機会はどこにあるのでしょうか?
セクター別では公益事業について前向きな見方をしています。同セクターは過去の不安定な時期にも高い耐性を示しました。また銀行は総じてファンダメンタルズが健全です。社会的距離戦略が取られ在宅勤務に対する対応が必要になることから、ハイテク・セクターは構造的な成長を続けるでしょう。ビジネスのトレンドは引き続き柔軟な労働力にシフトするでしょう。現在の混乱した状況でも、クラウドコンピューティング関連企業は好調なはずです。
クレジット・スプレッドはかなり広がっています。ただ割安な銘柄が必ずしも優良な銘柄とは限らないことを投資家は念頭に置いておくべきです。信用格差はさらに顕著になるでしょう。
そしてアクティブ運用者にとって今は銘柄を選別し、規律を保ちながら忍耐強く、資本を組み替えるのには好機とであると言えるでしょう。
ご留意事項
2020年4月14日撮影
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