寄稿文

コア債券、株価下落へのヘッジに(寄稿文)

日経ヴェリタス Market Eye (2019年9月15日付)

貿易を巡る対立がエスカレートし、世界中で成長が減速する中、株式市場の乱高下がほぼ常態している。PIMCOは、多様で質が高く、中期の固定金利商品であるコア債券への資産配分が、景気サイクルの現段階において市場の不安定な状態を切り抜ける一助になると考えている。

米国は景気拡大局面の終盤にあり、バリュエーションが高まりすぎた資産クラスの市場ボラティリティーが高まっている。株式のような高リスク資産へ投資する投資家は、すぐにでもポートフォリオを分散する必要性を感じているかもしれない。

長期リターンを確保

投資ポートフォリオにおけるコア債券の役割は景期的に一貫している。これらは元本の安全性を確保し、インカム収入をもたらし、ポートフォリオの分散を可能にする。コア債券は一般に他の資産クラスとの相関関係が低いか、あるいは逆相関の関係にあるため、特に経済の先行きが不確実な時期に株式や信用市場の下落に対するヘッジとなる。

コア債券からの大幅な資金流出が株式と同時に起こる可能性は低い。例えば8月には、貿易摩擦と景気指標の悪化を受けて世界株式市場は2%下落したが、質の高い債券の価格は大幅に上昇した。長期的にみて、債券は株式ほどボラティリティーが高くなく、債券による損失は株式に比べると限定的だ。

債券は100兆ドル(約1京700兆円)のグローバル市場に発展した。規模が極めて大きいため、投資家は幅広い種類の債券から選ぶことができ、アクセスする方法も多い。ただ、債券市場にリスクがないわけではない。投資方法を決める際には、幅広い債券市場と人気の高い債券指数の状況の変化を理解する必要がある。

米国で最も広く使用される債券のベンチマークのひとつ、ブルームバーグ・バークレイズ米国債券総合指数を例にとってみよう。2008年12月のデュレーション(平均残存期間)が4年未満だったのに対し、今はそれが5.7年になっており、現在の方が金利リスクが高くなっていることがわかる。同様のリスクの高まりが、指標である同グローバル債券総合指 数でもみられる。多くの企業がここ10年で債務を増やし、社債を発行したためだ。その中には、信用格付けが投資適格級の中で最も低いBBBマイナスの社債も多く含まれる。

同指数に連動するパッシブ運用は以前よりも金利と信用リスクを伴う。特に信用リスクの高まりは、景気後退が始まった際、同指数に連動する投資で、投資家が期待するほど運用実績が上がらない可能性があることを示唆している。

アクティブ運用が最適

幅広い市場のリスクが高まる中で、我々は投資家がコア債券への資産配分において、アクティブなアプローチをとることが最も重要だと考えている。アクティブ運用者は、ベンチマーク指数以外に柔軟に投資することができる。自らの調査と市場の専門知識に基づいて、魅力的な特徴がある個別の債券を選び、リスクの高い債券を回避できる。

ポートフォリオのデュレーションを調整して、様々な金利環境にも対応できる。世界中の中央銀行が金融緩和に動いていることを考えれば、これは考慮すべき重要事項だ。米連邦準備理事会(FRB)は今年、既に政策金利を引き下げており、さらなる利下げも予想される。金利低下は低金利を利用できるアクティブポートフォリオに恩意をもたらす可能性がある。アクティブ運用のコア債券に資産を配分することで、投資家は株式のようなリスク資産の下落ヘのヘッジができるだけでなく、いずれ生じる機会を柔軟に利用できる。

著者

Stephen Chang

ポートフォリオ・マネージャー

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