2022年1月の米国消費者物価指数(CPI)は、市場予想を上回り、インフレが加速していることを示す結果となりました。食品とエネルギー価格を除いたコア指数は、小売商品の値上げを背景に、前月比0.6%の上昇となりました。同結果を受けて、PIMCOでは2022年末のインフレ予想を引き上げたものの、2022年第1四半期の実質国内生産(GDP)は予想を引き下げています。これは、インフレの加速が予想以上であることに加え、PIMCO独自のクレジットカードのデータから、1月の実質消費支出が再び減少した可能性が高いためです。 金融政策への意味合い 今回のCPIの結果を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年3月に0.5%の利上げに踏み切る確率は高まったと見ています。ただし、FRBは急激な調整よりも、公開市場委員会(FOMC)会合ごとの漸次的な利上げを選好するとのPIMCOの見方は変わっていません。PIMCOの基本シナリオでは、FRBは2022年3月から1回の会合ごとに0.25%のペースで利上げを開始すると予想しています。とはいえ、今回のインフレ率の上昇で、FRBは市場が織り込む相場に抵抗するのが難しくなる可能性があります。 小売商品の価格高騰 小売業者が仕入れコストの上昇を価格に転嫁したことから、2022年1月は家庭用家具、衣料品、娯楽用品などの価格が軒並み上昇しました。興味深いのは、こうした継続的な価格上昇が起きたのは、2021年第4四半期に大幅に在庫が積み増され、貿易量が増加し、生産のボトルネックの緩和が示された後であった点です。さらに、売上高もこうした価格高騰の影響を受けており、2021年12月までの2カ月間に合計4%減少した実質財支出は、2022年1月も減少する見通しです。CPIデータ、小売売上高データ、クレジットカードのデータに基づく小売売上予想を合わせて考えると、仕入れコストの上昇を小売価格に転嫁する余地は限られているように見受けられます。 全体として、これら指標のトレンドはインフレが徐々に緩和に転じるであろうことを示唆していますが、その経路はスムーズなものになりそうにありません。 その他のカテゴリー:自動車、住居、旅行 その他のカテゴリーでは、自動車のインフレが予想通り緩和され、2022年1月の新車価格は横ばい、中古車価格は1.5%の上昇となりました。これは小売データに2カ月先行する卸売データとも一致しています。卸売データからは、在庫の回復に伴い、中古車価格は2022年3月に下落に転じると予想されます。さらに、主に児童税額控除の変更による税金還付額の減少が見込まれることから、自動車市場は、例年、納税シーズン前後に見られる需要の急増をある程度抑えられるでしょう。 サービス分野に目を向けると、持ち家帰属家賃(OER)の上昇率は市場予想並みの前月比+0.4%でした。賃料は前月比+0.5%の上昇で市場予想を小幅に上回りましたが、これは2021年12月がやや低かったことによるものです。全体として、(ホテルを除く)住居費の2022年の上昇率は、全体で尚、5%~5.5%に達する可能性があります。 一方、旅行サービス関連の価格はまちまちの結果となりました。宿泊施設が前月比で3.9%低下する一方、航空運賃は前月比で2.3%上昇しました。今回の航空運賃の上昇は、新型コロナウイルスの新規感染者数の波に合わせて価格が下落する最近のパターンから大きく異なりました。オミクロン株の流行にもかかわらず、その他の娯楽関連のサービス価格も上昇しましたが、これは低下していた前の2カ月からトレンドに追いつく動きだとみられます。 ティファニー・ウィルディングは、PIMCOの北米担当エコノミスト。PIMCOブログの定期寄稿者。
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