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機動的な債券運用:2021年とその先の難局を乗り切る方法

機動的なアプローチにより、債券運用は厳しい市場環境下においても、分散メリットとプラスのリターンを生み出すことが可能です。

金融市場には不確実性がつきものです。しかし、新型コロナウイルスによる市場の混乱と回復はかつて例をみないものとなり、資産価格に影響を及ぼすマクロ経済上の高いボラティリティが生じました。また同時に、政策当局による異例の政策支援により、全般的にバリュエ―ションは割高となり、リスクに対して投資家は適正なリターンを得られない可能性が高くなっています。

このような環境下において、PIMCOでは、債券投資家には主に四つの懸念材料があると考えています。すなわち、低金利、長期的なインフレ上昇、タイトなクレジット・スプレッド、そしてボラティリティ上昇のリスクです。このような厳しい市場環境下で、強い耐性を持ったポートフォリオを築くためには、リターンの源泉の分散や、通常のベータエクスポージャーにそれほど魅力がない場合は相対的に価値の高い投資機会を追求するなど、機動性の高いアプローチが必要だとPIMCOでは考えています。

債券投資家が直面する四つの課題

1.歴史的な低金利 :世界の中央銀行は、イールドカーブの短期ゾーンの金利を低く抑えざるを得ません。それには二つの理由が存在します。一つは、新型コロナウイルスによるディスインフレのショックから債務デフレスパイラルへの突入を避けるためです。もう一つは、政府が財政刺激策の資金を低金利で調達しつづけるためです。2021年当初には金利が上昇する場面も見られましたが、絶対水準において低金利の状態は変わらず、多くの国や地域ではマイナス金利となっています。実際に、2021年6月末時点で、世界債券市場の約20% はマイナス利回りとなっています。図表1にみられる通り、投資家にとっては当初の利回りがその後5年間のリターンを大きく左右します。

図表1は、米ドルヘッジ付きベースで、その先5年間のグローバル債券のリターンが、当初の利回りと密接に連動している様子を示すグラフです。1990年1月の9.0%から2021年6月30日現在の1.2%まで、当初利回りが低下してきた一方で、その先5年間のリターンも、1990年1月の7.72%から、2016年6月30日の2.98%まで低下しています。これは、今後5年間のリターンも低下し続けることを示しています。その先5年の移動リターンは、ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合債券インデックスの、その後の5年間の年率ヒストリカル・トータルリターンをもとに計算されています。例えば、2010年1月の5年移動リターンは、2010年1月から2015年1月までの期間を計測しています。当初利回りは、当該日における最低利回りです。数値は説明のみを目的としたものです。

2.長期的なインフレ上昇の可能性 :景気回復見通しと政府による継続的な財政支援により、インフレ上昇懸念が沸き上がっています。PIMCOの基本シナリオでは、短期的なインフレ圧力の多くは一時的なものとみています。しかしこの予測は修正する可能性もあり、インフレ上昇リスクを十分考慮すべきだと考えています。多くの投資家はベンチマークの制約上、不幸にも長いデュレーション(金利リスク)水準に縛られており、インフレ期待の上昇が金利上昇圧力(債券価格の低下圧力)となるため、依然として高インフレに対する脆弱性を抱えています。

3.縮小したスプレッド:クレジットセクターのスプレッドは、2020年3月のピーク以後縮小が続き、中央銀行による大規模な資産購入により、危機前の歴史的な低水準に戻っています。例えば欧州中央銀行(ECB)は、現在、欧州の投資適格社債市場の12%近くを保有しており、それを30%にまで増やす可能性があります 。スプレッド縮小の可能性は、一部のセクターにはまだ残っているかもしれませんが、これ以上のスプレッド縮小の余地は一般的に限られています(図表2参照)。

図表2は、グローバルの投資適格クレジット、ハイイールド・クレジットおよび株式について、パーセンタイルベースで、現在のバリュエーションの水準を過去の20年間のバリュエーションと比較する図表です。ブルームバーグのデータによれば、2021年6月30日現在で、ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合クレジット・インデックスでみたグローバル投資適格クレジットは、過去20年のバリュエーションのレンジのなかで、79パーセンタイルの位置にあります。また、ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル・ハイイールド・インデックスでみたグローバル・ハイイールド・クレジットは85パーセンタイル、MSCIワールド・インデックスでみたグローバル株式は92パーセンタイルに位置しています。

4.ボラティリティ上昇の可能性 :世界経済が政策主導による成長から有機的な成長に移行する過程が平坦である保証はありません。繰り延べられた需要が殺到し、ロックダウンにより向上した生産性が驚くべき成長とインフレをもたらすかもしれません。一方で、貯蓄率の上昇と、労働者および資源再配分の長期化により、成長率は期待を下回る可能性もあります。米連邦準備制度理事会(FRB)が資産購入プランの変更をほのめかし、米国債の利回りが急騰した、2013年のいわゆる「テーパリング癇癪」の再現は見られませんが、いずれ起こる中央銀行の支援縮小により、ボラティリティが上昇する可能性があります。

機動的な債券運用の潜在的なメリット

確固としたトップダウンによる投資プロセスを持つPIMCOのようなアクティブ運用会社にとって、このような厳しい局面と、その結果、資産間のリターン格差拡大の可能性が高くなる環境は好機といえます。PIMCOの機動的な債券戦略は、このような好機を活かすには格好の運用戦略だと考えています。

PIMCOでは、二種類の機動的な債券戦略をご用意しています。一つは、ダウンサイドリスクを抑えながら、毎月安定した魅力あるインカムを提供する戦略、もう一つは、元本保全に注目しながら、市場サイクルを通じて目標とする絶対リターンを追求するダイナミックな戦略です。

今日の低金利環境の中でこうした目標を達成するために、PIMCOの機動的な債券戦略では、比較的高い利回りを提供してくれる分野にも投資し、世界の債券市場の中で最も魅力あると考えられる投資機会に注目することも可能です。例えば、エマージング市場のような高利回りセクターの証券や、ネガティブショックが発生した場合に更なる金利低下の余地がある高格付けの米国の金利市場などがあげられます。また現状では、世界のイールドカーブにおいて、傾斜の大きい中期ゾーン(3年から7年)のロールダウン効果によるキャピタル・ゲインも、リターンの源泉の一つとしてあげられます。

一方、長期的なインフレリスクに対しては、インフレ環境で多くの場合利回りが上昇する、イールドカーブの長期ゾーンにおいてショートポジションを取ることで対応できるでしょう。また、このような機動的な戦略においては、比較的利回りの高い他の先進国市場や、現地通貨建てのエマージング市場など、金利エクスポージャーの地理的な分散をはかることも可能です。

また、全体的に縮小したスプレッド環境に対処するには、アクティブ運用会社の場合、当初の回復ステージには乗り遅れたもののファンダメンタルズが強固で、経済の再稼働の恩恵を受ける銘柄に資金を投じることもできます。今年は、支援政策の継続とワクチンの普及効果により、パンデミックによる世界の景気後退が回復に転じるとみられることから、特に航空、ホテル、小売、不動産などの業界は魅力的です。その他にも、中央銀行の動きによるスプレッド縮小がみられていない資産は、魅力ある投資にあげられます。例えば、米国の好調な住宅市場を背景とした非政府系モーゲージ債(MBS)や、高格付けのエマージング市場クレジットなどです。ただし、こうした銘柄についてはボトムアップによる調査の重要性を強調したいと思います。

最後に、ボラティリティ上昇の可能性に対しては、PIMCOのようなアクティブ運用会社の場合、ポートフォリオにおいて弁済順位や安全性を優先しつつ、「曲がっても折れない」質の高いポジションに傾斜配分することが可能です。また、流動性を重視することで、市場の大きな歪みや魅力的な新規発行の機会を生かした投資を行うことも可能になります。

結論

債券投資家は、自らの投資目標に見合った強い耐性を持つポートフォリオ構築の難しさに直面しています。概して低い金利と薄い利回りスプレッドから、この先も低いリターンが予想されます。また、景気が回復して中央銀行が支援を緩めれば、投資家は長期的なインフレとボラティリティの上昇のリスクにさらされるかもしれません。

PIMCOの機動的な債券戦略は、これらのリスクを軽減し、十分に確信が持てない場合、金利やクレジット・スプレッドの通常のベータエクスポージャーを抑制することで、付加価値の一部拡大を目指します。また、金利、クレジット、通貨の各市場におけるさまざまなリターンの源泉を分散し、値動きの激しい時期に投資機会を確保します。

債券の役割は、従来からポートフォリオの他の分野との分散効果を提供しつつ、追加的にリターンを生み出すことでした。機動的なアプローチをとることで、債券は今日もその役割を果たすことが可能です。



1 グローバル債券市場は、ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合債券インデックスを使用。インデックスに直接投資することはできません。
出所:バークレイズ・ライブとICMA  https://www.icmagroup.org/Regulatory-Policy-and-Market-Practice/Secondary-Markets/central-bank-corporate-bond-purchase-programs/、2021年5月31日現在

(2021年9月7日発行)

著者

Marc P. Seidner

非伝統的戦略担当の最高投資責任者

Esteban Burbano

債券ストラテジスト

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ご留意事項

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。この資料は情報提供を目的として提供されており、何らかの有価証券またはいずれかの法域における関連金融商品の売買の勧誘または申し出と解釈されるべきではありません。

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金融市場の動向に関する記述は現在の市場環境に基づくものであり、市場環境は変化します。新型コロナウイルスにより、その治療方法の開発や政府の対応、その他経済要因の進展状況など、クレジット市場や世界の経済活動に長期的に及ぼす影響が不透明な状況が続いています。本資料の見通しは記載された日時点のもので、最新の市場の動きを反映していない可能性があります。

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ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックス(米ドルヘッジ付)は、グローバル投資適格債券市場を広範に示すインデックスです。このインデックスの主要な要素は、米国総合、汎欧州総合、アジア・パシフィック総合インデックスの三つです。インデックスには、ユーロドルおよびユーロ円社債、カナダ国債、米ドル建て投資適格144A 証券が含まれます。

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