英米製薬各社が新型コロナワクチンの治験結果を発表した。米2社が95%とする有効性は驚異的だ。ワクチンの持続期間、輸送および保管、途上国への供給など課題もあるが、集団免疫に至る可能性が高まった意味は大きい。 一般的な感染症数理モデルによれば、集団免疫を得るのに必要なワクチン接種者の全人口に対する割合は有効率の逆数に比例する。この割合は一次感染者が生み出す二次感染者数の平均値(基本再生産数)の推計次第だが、他の条件が一定なら米食品医薬品局が求める有効性50%に比べて、95%に有効なら必要な接種者の比率が半分で済む。 ワクチン実用化がもたらす金融市場への意味合いを考えるには3つの視点が重要だ。まず有効性の高いワクチンの接種開始は、家計や企業のセンチメントを確実に改善させよう。集団免疫を早めに得られることが視野に入れば、欧米の行動制限策も緩和的になれる。ワクチンが広く実用化されるには多少の遅れも伴うだろうが、少なくとも金融市場は最後の一人が接種するまで待たずに反応するだろう。 ただコロナ禍に対応する超緩和的な金融・財政政策は、政治によるコロナ終息宣言前に引き締めに転じるのは難しいだろう。さらに、米連邦準備理事会(FRB)は、新しい政策枠組みにおいてインフレ率が目標の2%を上回るまで引き締めないとしている。 一方、より長期的な視点も欠かせない。米中の対立、ポピュリズム、情報技術の革新、気候変動など長期的な要因が世界経済や市場をかく乱する可能性がある。コロナ禍以前から顕著な流れであり、コロナとともに終息はしない。 当面はグローバルに景気敏感セクターへの投資配分を高めつつも、長期的なかく乱による市場リスクの上昇に配慮が欠かせない。
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