寄稿文

景気後退期、利回り高い債券に投資を

日経ヴェリタス Market Eye寄稿文(2022年12月25日付)

利回りが上昇した債券は、景気後退期の投資に欠かせない。

これまでで最も困難な時期の1つを耐え凌いだ投資家たちは、米国をはじめ主要国が景気後退に向かう可能性がある中でどう投資戦略を立てるかという難題に直面している。金融市場では高いボラティリティがしばらく続くとみられる中、投資開始時点の利回りが非常に高まったこと、またこれまでの景気後退期における債券の良好な運用実績から、近年になく債券投資の魅力が高まっている。

米連邦準備理事会(FRB)をはじめとする主要中央銀行がインフレ抑制のために軒並み利上げに踏み切ったため、債券利回りは2022年に大幅に上昇した。投資開始時点の利回りと債券のリターンとの間には通常強い相関関係が認められる。現在の利回りなら、投資家はインカムゲイン獲得機会の改善とともに、価格下落時に向けたバッファーをより多く手にできる。短期債の利回りは特に顕著に上昇しており、投資家は長期債につきものの大きな金利リスクを負うことなく、魅力的な利率の銘柄を見つけられるはずだ。

インフレの先行き不透明性、地政学的リスク、景気後退の可能性に直面する中、株や現金より債券に投資妙味がある理由は3つある。

1つ目は高まる景気後退の可能性だ。FRB、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行が引き締めを続ける中、PIMCOの基本シナリオでは米国、またユーロ圏や英国など主要先進国について、軽度〜中程度の景気後退を予想している。ただし急激な景気後退のリスクはある。

景気後退の前半は、前回の景気循環後期のピークから経済活動が縮小するのが普通だ。過去のこうした局面では主力債券(米国債、投資適格債など)のリターンはプラスに、ハイイールド債、株式、コモディティなどのリターンはマイナスになった。

2つ目は不確実な株式市場の見通しだ。2022年に下落した主要株式指数は、景気後退の逆風が強まれば、来年に入って一段と低迷しかねない。インフレ懸念もしぶとく、引き締め策が景気後退を誘発あるいは加速させかねない状況で、企業の収益予想や予想利益率に下振れリスクがあり、この先数カ月の株式市場にとって悪材料だ。S&P500など主要株式指数は現在の水準から下がるリスクがまだあるとみている。

3つ目は債券の投資機会は改善だ。他の資産クラスへの投資には暗雲が漂う一方で、債券は過去数年に比べて魅力が増している。2022年に幅広い債券で価格調整が行われたため、インカムゲイン狙いの投資家にとっては特に魅力的だ。

例えば2年物米財務省証券の利回りは、2022年年初では0.7%をやや上回る程度だったが、11月末には約4.5%に達した。これは債券市場に投資家を引き止めるインセンティブになり、リスクが低い短期国債でもインカムゲインを狙う好機だ。

投資家は公募債券市場のその他の質の高い債券にも手を広げれば、大きな信用リスクや金利リスクをとることなく利益拡大を期待できるだろう。PIMCOが現在投資妙味を見出しているのは、米政府系住宅ローン担保証券、銀行および信用格付けの高い企業の債券、一部では歴史的に割安に取引されている証券化商品、短期クレジット商品で、これらはどれも魅力的な利回りを提供してくれる可能性がある。

利回りはさらに上がる可能性もあるものの、急上昇期は既に終わったとみられる。各国中銀が今後2〜3年以内にインフレ率を目標圏近くまで押し下げることができれば、債券はより一層魅力的なインフレ調整後の実質利回りを提供してくれるだろう。加えて景気減速で株価が低迷した場合には、債券は分散投資先としての伝統的な役割を再び取り戻し、投資家が困難な局面を乗り切るのを助けてくれるはずだ。

2023年に入ってもボラティリティ(変動率)は引き続き高い見通しだ。だが今日の債券市場は価格水準・利回り共に魅力的で、投資家は楽観的になってよいと考えられる。

著者

Marc P. Seidner

非伝統的戦略担当の最高投資責任者

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