「クレジット」という言葉を思い浮かべた際、まず先に思い浮かぶのは債券ではないかもしれません。しかしながら、クレジットは債券市場の重要な構成要素の1つであり、世界の債券市場全体1で、13兆ドルもの残高を占めています。投資家にとって、多くの投資機会が存在していると言えるでしょう。 一般的に、クレジットへの資産配分を通じて潜在的リターンの向上、分散効果の拡大、インカムの獲得が期待されます。そのため、クレジット投資の機会が数多く存在するということを理解することが、投資家にとって非常に重要となります。クレジットとは単に債券や投資商品の一種ではなく、パブリック(公開)、プライベート(非公開)の両方の市場において、独自のリスク・リターン特性を持つ多様なカテゴリーを含む概念です。 以下の図では、市場の全体像と潜在的な投資機会への理解を深めるヒントとなるよう、クレジット投資を「パブリック(公開市場)クレジット」と「プライベート(非公開市場)クレジット」の2つに分けて示しています。 各市場の関連性 クレジット市場ではパブリック(公開市場)とプライベート(非公開市場)が密接に関連しているため、全体の中で投資機会をより適切に評価するためには、両市場の理解が重要です。 以下では、両市場に属する投資対象について具体例をまじえながら説明しています。 コーポレート・クレジット(社債)の具体例 公開取引:担保付資産を有する大手小売り企業が発行する新発債を購入する取引。 非公開取引:流動性に問題を抱える大手小売り企業向けにターム・ローンを組成する取引。 住宅ローン担保証券(RMBS)とホール・ローンの具体例 公開取引:住宅ローンをまとめて担保とする非政府系のモーゲージ債(RMBS)を購入する取引。 非公開取引:住宅ローンの貸し手から個別の住宅ローンをまとめて購入する取引。この場合、投資家は個別の住宅ローンをまとめて担保とする債券ではなく、個別の住宅ローンそのものを直接保有することになります。 商業用不動産ローン担保証券(CMBS)と商業用不動産(CRE) 融資の具体例 公開取引:商業用不動産のポートフォリオを裏付けとするMBS(不動産担保証券)を購入する取引。 非公開取引:商業用建物を裏付けとしこれにエクイティを有する、単一の商業用不動産物件の第一順位抵当権を取得する取引。 資産担保証券(ABS)と消費者ローンの具体例 公開取引:信用力の高い大学院生向けの学生ローンを担保とするABSを購入する取引。 非公開取引:ノンバンクの貸し手から調達した短期のプライベート消費者ローンを裏付けとするABSを購入する取引。 各カテゴリーの概要 以下では、各種クレジット関連の投資機会に対する理解を深めるために、クレジット市場全体を構成する各カテゴリーの概要を整理しました。 パブリック・クレジット:公開市場で発行、取引される債務。 プライベート・クレジット:非公開で組成、交渉される投資商品。多様なリスク・リターン特性を有する、流動性が低く相対的に高い利回りを提供可能な投資機会から構成されることもあります。公開市場では取引されません。 社債:企業が運転資金、企業合併と買収(M&A)、事業拡大などの多様な目的において発行する債券。 証券化商品:さまざま種類のローン(自動車ローン、クレジットカード、住宅ローンなど)から生じるキャッシュフローを束ね、債券として投資家に再販売するプロセス。証券化商品の最大のセクターはMBS(不動産担保証券) とABS(資産担保証券)です。 投資適格債:実績ある格付会社から相対的に高い信用格付け(BBB以上)を付与された社債。 ハイイールド債:実績ある格付会社から相対的に低い信用格付け(BBB-/Baa3未満)を取得した社債。 バンクローン:商業銀行などの金融機関が企業に対して元利金の支払いを条件に貸し出す、金額が特定された融資。 EM(エマージング市場):新興国に所在する企業が発行する債券。 ストレスト債:信用力は高いものの、短期的に困難な事業環境に直面している企業の債務。債券価格は額面を大幅に下回ります。 政府機関系MBS:米国の3つの政府機関、すなわちジニーメイ(GNMA、連邦政府抵当金庫)、ファニーメイ(FNMA、連邦住宅抵当金庫)、フレディマック(FHLMC、連邦住宅金融抵当金庫)のいずれかが発行する、住宅ローンを束ねた債券。 非政府機関系MBS:金融機関などの民間の主体が発行するMBS。非政府機関系MBSや民間のMBSには政府支援機関(GSE)による保証はありません。 ABS:自動車ローンやクレジットカードなどの支払いを裏付けとする債券。MBSと同じように、同種のローンを束ねて販売されます。ABSは信用力の高いクラスから低いクラスまで「トランシェ化」されることが一般的です。 CMBS:居住用住宅ローンではなく商業用住宅ローンを束ねた債券。さまざまな条件、価値、種類(マルチファミリー用、オフィス用、一般産業用など)の商業用不動産ローンが多数含まれることがあります。 ローン担保証券(CLO債):債務のプールを裏付けとする個々の証券。格付けが相対的に低い企業向けの融資や、プライベート・エクイティ(PE)企業が既存企業の支配権を取得するために行なうレバレッジド・バイアウト(LBO)関連の融資から構成されるケースが多く見られます。 スペシャリティABS:裏付け資産は牧場、農場、不動産所有権、天然資源に対する権利などの特殊な非金融資産。 企業向けダイレクト・レンディング:特定の担保資産ではなく、主に将来のキャッシュフローに依拠する企業向け無担保融資。 住宅融資:住居または個人が住居の建設を意図する土地に関する住宅ローン、信託証書、その他これらに準ずる合意担保権を裏付けとする、個人、家族、家計が利用する融資。 商業用不動産(CRE)融資:利用目的がビジネスに限定された、インカムを生み出す物件向けの融資。ショッピングセンターやショッピングモール、オフィスビルや複合商業施設、ホテルが含まれます。通常は、商業用不動産融資(商業用の物件に対する抵当権を裏付けとするローン)の形で資金提供が行われます。 消費者ローン:個人、ファミリー、家計が利用する融資。金融機関や融資プラットフォームなどのさまざまな主体から資金が提供されます。一部の例外を除いて、無担保で実行されることが一般的です。 スペシャリティ・ファイナンス:伝統的な銀行システムの外部で実行される資金提供。スペシャリティ・ファイナンス会社は、資金調達源が他にない消費者や中小企業に対して融資を行なう、ノンバンクの貸し手と認識されています。 キャピタル・リリーフ(規制資本対応):銀行が自己資本規制に基づく所要資本を減らすことを意図して、投資家に販売する目的で組成される案件。この種の案件においては、銀行は融資ポートフォリオに対する保護を購入することで、リスクを部分的に削減する目的で、資本市場を利用することが可能になります。 レスキュー・ファイナンス:破綻の回避、流動性の確保、自己資本規制の順守などの目的により、資金を緊急に必要とする企業向けの資金提供。 オルタナティブ投資の詳細は、オルタナティブ投資を理解するをご覧ください。
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