注目のソリューション ファイナンシャルアドバイザーと退職:取り崩しのジレンマ PIMCOの「インカム・トゥ・アウトカム」の枠組みは、退職に向けた投資へのアプローチをシンプルかつ直感的にすることを目指しています
退職に伴うプランニングは、投資家にとっての最重要課題です。ここ米国では、ベビーブーマーの退職がピークに向かうなか、アドバイザーは真に長期的な機会を目にしていると言えるでしょう。資産の取り崩し問題を解決することが、資産運用業界と個々のアドバイザー業務を変える可能性があるとPIMCOでは考えています。PIMCOの「インカム・トゥ・アウトカム」の枠組みは、この複雑な課題への対処を目的とするものです。退職者の資産運用によりシンプルで直感的なアプローチを提供することを目指しています。 資産の取り崩しは、給与の支払いがなくなり、個人が積み立てた資産を引き出し始めた時に始まりますが、何歳まで生きるかわからないなか生涯にわたって続くため、非常に難しい問題です。シカゴ大学ブース・ビジネス・スクール教授で、PIMCOで退職および行動経済学に関するシニア・アドバイザーを務めるリチャード・セイラー教授は、以下のように述べています。 「取り崩し」は「積み立て」よりもさらに難しい問題だと考えています。べビーブーマーである私の世代が退職の時期を迎えていますが、将来に向けてなんとか備えができた人も、それをどのように維持するかに対する答えを見つけるには、大きな手助けが必要となるでしょう。これは少なくとも私には研究テーマとして興味ある問題です。 興味のあるなしにかかわらず、取り崩しの問題は、アドバイザーや資産運用会社の間で既に中心的に位置を占めています。構造変化の最初の兆候が現れたのは2014年で、この年、初めて高齢の投資家が401k(確定拠出年金)給付やIRAのロールオーバー(制度間の年金移転)の形で引き出した額が拠出した額を上回りました。米国で最も豊かな投資家の階層が、資産形成から資産取り崩しに転じた、転換点となったわけです。2000年以降、65歳を迎える個人の数は倍増し、1日あたりに1万人以上になっています。2034年からは8,000万人近いジェネレーションXが65歳になっていくことから、今後20年から30年はこのペースが鈍化する見込みはなく、次の波が膨らみ始めます(図1を参照)1。 動きのある資金 アドバイザーにとってベビーブーマーの退職は、長期的に「動きのある資金」の機会をもたらします。退職ポートフォリオ構築、引き出し戦略、税の最適化で専門知識を発揮できるアドバイザーは、同業者と差別化できる有利な立場に立つことになるでしょう。 しかしながら、資産の取り崩しは文字通りの難問で、一筋縄ではいきません。解決が最も求められている問題でありながら、業界の力が及んでいない問題でもあります。調査会社のセルーリによれば、アドバイザーがいる個人でも60%近くは、退職後のインカム・プランを持っていません(アドバイザーのいない個人だと、この数字は80%超えています。)そしてPIMCOの調査では、アドバイザーが最も自信が持てないのは、退職時に予測可能で税制を意識したインカムと流動性の源泉を提供する戦略を立案し、実行する能力であることが判明しています(図表2を参照)。 資産形成に関する先行研究、とりわけセイラー教授の行動経済学の知見が、進むべき道を示している可能性があります(セイラー教授は、行動経済学で2017年のノーベル経済学賞を受賞しています)。セイラー教授らの提唱を取り入れ、産業界と政府は、401kへの自動加入による早期の運用開始と、掛金の自動引き上げなど定期的な増額の奨励による、より良い貯蓄習慣の浸透。長期的な視点と年齢に応じたグライドパスを備えたターゲット・デート・ファンドでの運用。退職用資産の早期の引出しの阻害といった政策を採用しています。 同様に、PIMCOの取り崩しの枠組みには、投資家の意思決定を理解する方法として資産運用業界で主流になった行動経済学の知見を取り入れています。実行可能なアプローチは、自動的かつ定期的な引き出し計画の立案、開始時および退職後の人生における相次ぐリターン・リスクからの資産防衛、社会保障年金受給の最適戦略についてのより良い助言、長生きリスクへの対応、未知の支出を支援し、遺産分配を最大化する寄付のようなポートフォリオにおける長期的成長の追求という点において、投資家をサポートすると考えています(図表3を参照)。 行動志向 PIMCOの「インカム・トゥ・アウトカム」の枠組みは、プロセスをシンプルかつ直感的にすることを目指しています。この枠組みでは、2つの専用ポートフォリオを持つことを提案します。1つは(確定満期債も呼ばれる)償還時ターゲット債のようなラダー型債券ポートフォリオで、満期まで保有し、特定の年数を経過後に、元本(マイナスデフォルト)の払い戻しを意図したポートフォリオで(一種の「給与代替」の働きをします)5 、もう1つは、株式など、相対的にリスクが高く、長期の成長志向の資産で構成されます。6 成長志向のポートフォリオの詳細は、顧客に助言する最適な立場にあり、またこれを得意とするアドバイザーの手に委ねます。 2つのポートフォリオの組成が、重要な差別化要因になります。表面的には、同様にシークエンス・リスクにさらされる従来の株式と債券の組合せに似たアプローチです。ただ、この方法で資産を分離することは大きな利点をもたらします。 例えば、債券ポートフォリオから予想されるインカム収入は、成長志向の投資につきまとう自然で時に暴力的なボラティリティを乗り切る助けになる可能性があります。これにより投資家は、成長型ポートフォリオが不振に陥った時に、タイミング悪く現金化するという、潜在的なコストが高い、自動的な反応を避けられる可能性があります。主な目的は、成長型資産が下落し始めた時点で、損失が顕在化するのを防ぎ、平均に回帰するまでの時間を稼ぎ、シークエンス・リスクの影響を緩和することです。さらに、予想可能なインカム収入の提供を目指すポートフォリオは、投資家に社会保障年金より有利な受給戦略を検討できる柔軟性をもたらす可能性があります。時間の経過と共に、成長資産の価値が増大した場合、投資家は債券のラダーを「積み増し」し、予想可能な収入を求める期間を延長することができます。 PIMCOの「インカム・トゥ・アウトカム」の枠組みは、アドバイザーや資産運用会社の退職関連の議論に大きく寄与すると考えます。世界をリードする債券運用会社として退職者向けの戦略で数千億ドルを運用するPIMCOは、資産の取り崩し問題と、それがアドバイザーとその顧客にもたらす機会への対応をお手伝いしたいと考えています。 1 出所:米国勢調査局、ハーベイ・アナリティクス、米疾病管理予防センター、2019年9月現在 2 詳細は、PIMCOの「インカム・ツー・アウトカム」の枠組みをご参照ください。 3 投資家は、投資および税務の専門家にご相談ください。 4 成長型ポートフォリオが超過リターンをもたらす保証はありません。 5 投資商品にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。投資商品のインカム収入が保証されているわけではありません。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。投資商品のインカム収入が保証されているわけではありません。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。 6 低ボラティリティのインカム債戦略を活用して、インカム型ポートフォリオで同様の結果に似せることも可能です。 シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのPIMCO意思決定調査研究所は、人々が実際に生活し働く場において、最も強い影響力のある行動科学上の調査・研究ができる機会を研究者に提供します。シカゴ大学とのこの画期的なパートナーシップを通じて、PIMCOは人間の行動や意思決定のメカニズムをより深く理解することを一層推し進める、様々な研究を支援し、ビジネスのみならず社会において、各リーダーたちがより賢明な意思決定を下せるよう支援していきます。
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