寄稿文

在宅勤務で進める経営革新(寄稿文)

日経新聞夕刊 十字路(2020年6月9日付)

在宅勤務によって個人の働き方のみならず企業経営が大きく変わる可能性について、日本における代表者兼アジア太平洋共同運用統括責任者である正直知哉がお伝えします。

新型コロナウイルスの感染を防ぐため、多くの人々が在宅勤務を経験した。危機がいったん収束した後も継続を望む声は多く、在宅勤務を恒久化すると表明した企業も複数ある。

在宅勤務を経験した人の多くは、不便はあるけど「なんとかできている」すなわち「個人ベースの生産性はほぼ維持されている」と感じているだろう。実際に、IT(情報技術)の活用や仕事の優先順位づけによって、生産性を上げた向きもあろう。「生産性=付加価値/投入量」だから、付加価値が保てれば、通勤時間がゼロになり個人としては生産性が上がったと感じる訳だ。家族と過ごす時間が増えるなど、ワークライフバランスの改善による効用もある。

では経営の観点からはどうか。勤務体制の再設計は「企業ベースでの生産性」と「人材・設備など経営資源の配分」が変わり、収益成長と従業員の満足度に影響する。ここでは、コスト削減などの「改善」にとどまらず、付加価値上昇につながる「革新」となるかが重要だ。金融サービスを例にとれば一部の商慣行として根強い対面販売や大規模セミナーをオンライン形式に代えられると革新的だ。コスト削減だけでなく人材の再配分にもつながり、より付加価値の高いサービスを提供できるだろう。

一方で同僚と実際の空間を共有する意義も軽視すべきでない。人は実際の現場で人を通じて多くを学ぶ。職場でのチームワークや学びを尊重する企業文化をなくしては、個人や企業の長期的な生産性アップを両立できない。

在宅勤務という壮大な社会実験は、個人の働き方だけでなく企業経営をも変える。ビジネスの成長と従業員の満足度を引き上げ、優秀な人材を獲得して抱え続ける経営が企業価値の拡大にもつながる。

著者

Tomoya Masanao

ピムコジャパンリミテッドの日本における代表者兼アジア太平洋共同運用統括責任者

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