寄稿文

高まるアクティブ運用の重要性

日経ヴェリタス Market Eye寄稿文(2022年2月27日付)
終盤に向かって急速に進む景気サイクルでは、アクティブ運用の重要性が一層高まると考えられます。

ピムコは財政政策による支援が一巡した結果、実質国内総生産(GDP)は2021年にピークを付けた可能性が高く、世界経済はサイクルの終盤に向けて急速に進んでいると分析している。我々は先進国のGDP成長率について、22年は年平均4.0%に減速すると予測している。大半の地域における金融政策も、新型コロナウイルス感染動向を巡る不透明感で、財や労働市場に大きな摩擦を引き起こし、インフレ率を押し上げる一因となっている。ピムコは基本シナリオとして、世界のインフレ率は第1四半期までにピークをつけ、その後は鈍化して22年末までには中央銀行の目標に近づくと想定しているが、この見方に対する上振れリスクを注視している。

向こう5年、マクロ環境を巡る不透明感や不安定性が高まる結果、景気サイクルの期間が短くなる一方で振幅が大きくなり、国ごとの乖離(かいり)が拡大すると予想される。22年の大まかな見通しとしては、減速しているとはいえ成長はトレンドを上回る一方、インフレ率は鈍化するだろう。この結果、先進国の金融環境は緩やかなペースで引き締められていきそうだ。

それでも、ピムコの基本シナリオには3つの重要なリスクがあり、投資家にとって全般的に一段と不透明な環境を生み出している。それらは、インフレ率が持続的に高止まりする可能性、コロナ感染拡大をもたらす新たな変異ウイルスの出現、金融環境が予想以上に急激にひっ迫する可能性である。

我々は終盤に向かって急速に進む景気サイクルの変化から生じるボラティリティーに注目していく考えだ。こうした時期には、今日のようにインフレが加速する傾向があり、金融政策の引き締めを促して多くの投資家の不安を誘う可能性がある。

それにもかかわらず、市場は、中央銀行がそれほど大幅な利上げを行うことなくソフトランディングを実現するという非現実的なシナリオを織り込んでいるように見える。我々の見方では、リスクプレミアムや利回りには、潜在的な下振れシナリオが反映されていない。

一般的には、グローバルな投資機会の活用を拡大し、投資機会が訪れた際にそれを活かすためポートフォリオの流動性と柔軟性を高めておくべきだと考える。

多くの変革が世界経済に影響を与える可能性はあるが、我々は各中央銀行が何年にもわたって政策金利を低水準に維持すると予測している。債務水準が全体的に高く、中央銀行がバランスシート縮小に向けた取り組みを進める結果、政策金利のピークは前回のサイクルに比べ低くなる見込みだ。

大まかにいえば、我々は利回り曲線のスティープ化に備えたポジションを取ることが望ましいと考えている。ボラティリティーが上昇するとみられることを踏まえれば、金利リスクの管理がこれまで以上に重要となりそうだ。

また、米国の非政府系モーゲージ債、コロナ禍からの回復をテーマとする取引や個別銘柄への投資機会など、様々なクレジットの取引を構築したいと考えている。加えて、追加のリスクを許容できる投資家にとっては、流動性の低い投資対象の中からプライベート資産への投資を検討する機会がありそうだ。

コモディティーから債券まで様々な資産クラスを考慮すれば、市場は通常よりもボラティリティーが激しくなる見通しで、ポートフォリを頻繁に見直す必要があるだろう。我々は長期的な視点に立ちながらも、目先の動向を継続的に評価する必要性を認識している。

このような急速に進むサイクルでは、投資機会をうまく捉えることが超過収益を創出するカギとなるため、アクティブ運用の重要性がとりわけ高まることになろう。

著者

Andrew Balls

グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)

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