寄稿文 新興国、年内7割免疫獲得の追い風 日経ヴェリタス Market Eye寄稿文(2021年6月20日付)ワクチン接種がようやく新興国でも始まり、自然免疫を持つ率が高いとされる若年層が多い人口特性と相まって、今年後半には経済成長が加速すると見ています。
多くの新興国では、有利な人口特性に加えワクチン接種が始まったことから、猛威を振るった新型コロナウイルスも次第に抑え込まれると期待される。2021年後半には経済成長が大幅に加速し、この地球規模の悲劇も終わりに近づくだろう。 現在のペースでワクチン接種が進めば、7~9月期には中欧とチリで、10~12月期には中国、ブラジル、メキシコ、韓国、マレーシアといったさらに多くの国で、人口の60%の接種が完了する見通しだ。トルコ、南アフリカ、インド、南米アンデス地方などでは人口の60%に達するのが2022年前半にずれ込むと予想されるものの、新興国の若年層は自然免疫を備えている率が高いとされ、長期または厳格なロックダウン(都市封鎖)の必要性は軽減されよう。 自然免疫とワクチン接種の見通しを考え合わせると、我々の投資対象である新興市場の大半が、21年10~12月期までに人口の少なくとも70%の免疫を獲得できると予想される。 投資の環境整う 発展途上国の経済が期待通り一斉に再開し、そこに国外からの刺激が重なれば、ポストコロナの新興国の資産クラスは回復に弾みがつくだろう。ロイター・コアコモディティCRB指数は15年半ばの水準まで戻しており、21年は年ベースで68%回復する勢いだ。また、米国の実質短期金利がここに来て過去50年で最低水準まで下がっていることから、高利回りを求めて投資資金が発展途上国に向かい、新興市場投資に有利な環境が整ってきた。 ただし、回復ペースは地域によって異なるだろう。トルコ、ドミニカ共和国、中欧は、ワクチン接種率の高い先進国の近くに位置する利点を生かせる。一方で東南アジアは、大勢の観光客を送り込んできた中国と日本でワクチン接種のペースが鈍いため、市場の回復も遅れるだろう。 中国は景気刺激策を打ち止めにし始めており、感染者数が万一増えた場合の経済成長が下押しされるリスクが高まっている。人口高齢化も懸念材料だ。ただ、ショックを和らげる財政出動の余地は十分ありそうだ。 中南米と中欧の広い地域では、自然免疫率が高いとしてもワクチン接種が遅れており、経済の全面的な再開は遅れ、財政にかかる負担も他の新興国より大きいだろう。景気刺激策の打ち止めは間違いなく強い反対に遭うはずだ。選挙の年を迎える国は特にその公算が大きく、社会不安を引き起こしかねない。 とは言えこの種の不確実性は資産価格に織り込み済みでのことが多く、しかも選挙の直前でピークを打つ。よって、選挙後にリスクプレミアムが消滅すれば魅力的な投資機会になりうる。 先進国市場で急激に需要が回復し、そこに商品供給の構造的制約が重なり、多くの新興国で消費者物価が08年以来となる予想外の大幅上昇を記録している。このショックは深刻で、ブラジルなど非常に緩和的な金融政策をとってきた国では部分的な正常化を余儀なくされた。 インフレは一時的 ただ内需の弱さ、需給ギャップの大幅なマイナス、足元の通貨高から、インフレ高進は一時的だと考えられる。各国市場は政策金利の引き上げを過大に見込む傾向があるようだ。製造業の強い循環性と高値が10年続く商品相場がけん引し、新興国経済は21年後半には力強い回復が期待される。成長が加速すれば通貨需要を後押しし、ソブリン格付けも追随しよう。 新興国の金利動向はやや複雑だ。債務水準が高く基礎的財政収支が慢性的に赤字であることから、投資家は実質金利の上乗せを要求している。それでも新興国経済が予想通りすぐにも拡大局面に突入し、インフレがピークを打ち、財政赤字の圧力が和らぐにつれ、キャッチアップ段階にあってイールドカーブの傾斜がきつい新興市場ではキャリートレードでの高いリターンが期待できる。
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