寄稿文

十字路「変化する企業のミッション」(寄稿文)

日本経済新聞夕刊(2019年3月29日付)

環境や社会への影響に配慮するESG投資や国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」を重視する流れを受け企業の社会的役割が問われている。営利企業は経済利益の追求、非営利団体は社会貢献という米国流の棲み分けが、社会の変化に伴って見直されているとも言えよう。

先日、米国非営利団体であるLA・フィルハーモニックのサイモン・ウッズ最高経営責任者が都内で講演した。オーケストラの社会的役割を論じたスピーチは、企業経営にも多くの示唆に富む。

米国のオーケストラの活動はかつて演奏会収入で賄えたが、人種構成の変化やミレニアル世代の台頭で環境が変わり、現在は寄付に依存する。この収入源の変化が、オーケストラにミッション(理念)の書き換えを促した。ミッションは演奏という「活動」ではなく、それを通じて人々に役立つこと、すなわち「社会的価値の創造」にあると。

ウッズ氏は創造する価値を団体内外に伝え、共感を得る必要も力説する。データや調査など客観的手段に加え、感情に訴えるSNSなどの手段の併用を説く。

翻って企業経営においても社会的価値の創造をミッションに据える例が増えている。資生堂は、化粧品の製造・販売といった「活動」でなく、「美しい生活文化の創造」をミッションとしている。低成長、格差拡大、人口動態、気候変動など、社会の変化は企業にミッションの再考を促す。社会的価値をミッションとして明確化し、ステークホルダーの共感を生む団体こそが、営利・非営利を問わず持続的に発展できる。

これは金融にも通ずる。預貸・決済・送金・保険などのサービス自体は、低金利や高齢化、技術の進化などで需要と競争が激変した。いかなる社会的価値を創造するのか。どのように共感を呼ぶのか。経営者が問われている。

(ピムコ アジア太平洋共同運用統括責任者 正直 知哉)

著者

Tomoya Masanao

アジア太平洋共同運用統括責任者

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