寄稿文

十字路「ESGという確かな潮流」

日本経済新聞夕刊/2018年11月16日付

環境・社会・企業統治を重視したESG投資が注目されている。

欧州を中心に企業の社会的責任への認識が強まり、2006年に国連が責任投資原則(PRI)としてESG投資を規定したのを契機に世界に広まった。日本では、安倍政権が成長戦略として策定した投資家・企業の行動原則、並びに公的年金のPRI署名が後押ししている。

本邦投資家・企業は急速に意識を高めるが、試行錯誤の感も否めない。

投資家の疑問は「ESG投資はもうかるのか」だ。受託者責任にも関わる。これに対して、元財務官・玉木林太郎氏の答えが示唆に富む。ESG投資は、非財務的なESG情報が時間を経て企業価値として実現することを期待しており、長期的収益の向上を狙っていると。実証は今後に委ねるとして概念的には明快だ。

企業はESG配慮の経営が「株主利益に合致するか」と思案する。先の投資家の疑問の裏返しでもあるが、「企業は株主のもの」であるも、「株主のためにのみ存在しない」という認識が重要だ。金融危機から10年。景気拡大・株価上昇の一方で、その恩恵を実感できない人が多い。世界には気候変動・新興国の女子教育など問題が山積する。顧客・社員・社会など利害関係者への適切な対応が共感を生み、企業・社会の持続的成長につながろう。

課題もある。非財務情報が実現するまでの時間は一部投資家の時間軸よりも長くなりうるという時間のミスマッチ。加えて、合成の誤謬(ごびゅう)だ。例えば東日本震災後に投資家が原発関連投資から一斉に撤退していれば、巨額な社会的コストが生じたであろう。しかし、「企業は社会の公器」であり、社会に役立ってこそ存在意義があるし、持続的に成長できる。課題もあるが、これは確かな潮流だ。


(ピムコ アジア太平洋共同運用統括責任者 正直 知哉)

著者

Tomoya Masanao

アジア太平洋共同運用統括責任者

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