日銀の大胆な金融緩和が5年半に及ぶ。2%の物価目標にはほど遠いもののもはやデフレにはなく、企業業績・株価上昇にも大きく貢献。控え目にはこのように評されようか。人手不足に伴う昨今の動きは、これ以上の成果を示唆しているようだ。 日本経済はバブル崩壊以降、趨勢的な潜在成長率の低下と需要不足による需給ギャップの拡大に苦しんできた。小泉政権下、「痛みなくして成長なし」の掛け声とともに需要刺激なき供給改革が企図されたが、国民は「痛み」に耐えられず、改革は頓挫した。 その後の「需要拡大か供給改革か」という議論に終止符を打ったのが第二次安倍政権である。改革の必要性は全く正論であるが、デフレ下で改革を先行すればデフレがより進行し、民主社会では政治的に持たない。まずは需要政策を総動員して需給ギャップを縮小し、次に改革を行う。つまり、まずは痛み止めを、だ。 昨今の人手不足は少子高齢化に加え、金融緩和による需要拡大の影響が大きい。重要なことに、既得権益に阻まれてきた改革が、需要拡大によって可能となってきた。 最も顕著な例が外国人労働者の受け入れであり、その拡大方針が今年6月に閣議決定された。周知の通り、すでに幅広い分野において留学生・技能実習生の形で外国人が働き、その数は増加の一途をたどる。政府決定は現状の追認とも言えるが、人手不足が改革に伴う政治的摩擦を緩和した点に意味がある。 政府は需要政策の産物である改革の素地を無駄にすべきでない。成果報酬制度への移行、解雇法制の整備など、必要な改革はすでに論をまたない。痛み止めが効果を持つうちに改革待ったなしだ。 日銀はすでに大役を果たした。非現実的な物価目標に固執せず、痛み止めは過剰なものから徐々に弱めてもよい。 (ピムコ アジア太平洋共同運用統括責任者 正直 知哉)
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