寄稿文

持続可能性の危機からの出発

日経ヴェリタス Market Eye(2020年9月20日付)

パンデミックの結果、ESG投資に拍車がかかっている。PIMCOが考えるESGへの成長支援とは?

2020年は、世界がいかに相互に結びつき、相互に依存し合い、脆弱であるかを、投資家が改めて認識する年になった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は21世紀初めての持続可能性を問う危機だ。投資家は長期的な持続可能性のリスクへの認識を新たにし、それに則した行動を加速させるだろう。

ESG投資に拍車

今年の出来事は、ESG(環境・社会・企業統治)投資が軌道に乗り始めていた傾向に拍車をかけた。今やその動きに弾みがついており、公開市場や非公開市場を含むすべての資産クラスでより多くのESG投資が利用可能になると予想される。

これは数年前からの傾向だった。世界中の投資家が債券への資産配分を通して、長期的なリスク調整後の魅力的なリターンの可能性を犠牲にせずに、社会や環境面で前向きな影響をもたらすことができる大きな可能性を認識するようになっていた。

新型コロナにより、世界規模でより良い結果を出すための協力の必要性が広く認識された。現在の危機をきっかけに、長期的により望ましい投資の方法を模索する投資家が増えるだろう。我々は社会全体、特に経済界と投資界において持続可能性に関心を持つ人が増えると楽観的にみている。これが中長期的な成長と強靭さを最大化するためのカギを握る。

もっと持続可能で安定し、包括的な市場をつくりだすためには、パンデミック後の世界における新しいビジネスモデルや投資モデルが必要になる。多くの政策立案者や企業・金融機関の経営者は、短期業績を重視する株主モデルから、従業員や顧客、投資家を重視し、長期的な計画を伴う利害関係者モデルに切り替えるよう、資本主義のリセットを呼びかけている。持続可能性と利害関係者モデルを備えた企業は、リスク管理や事業の継続能力に優れるだろう。

 

向こう1年で、新型コロナ対策のための「コロナ債」や社会貢献事業向けのソーシャルボンド(社会貢献債)、グリーンボンド(環境債)など持続可能性に関連した新しい金融商品の拡大も予想される。投資家にとっては様々なイノベーションや新たな展開を活用できる忙しい年になりそうだ。

対話で成長支援

弊社の投資プロセスは50年近くにわたり、市場環境の変化に関係なく、多くの投資家の目標追求を支援することに専念してきた。ESG投資における我々のリーダーシップは、顧客が財務目標を達成し、自社の優秀な人材を関与させることで高い実績を上げる企業文化を維持し、長期的かつ持続的な経済成長を支援するために不可欠だ。

我々はアクティブ運用が、債券に持続的に投資するための最も有効で責任ある投資手法だと確信している。ESG慣行の改善に意欲的な企業や国と対話を行い、投資することで、ESG指標が芳しくない発行体を単に排除するよりも大きなインパクトをもたらすことができる。

実際、弊社は19年にESGポートフォリオに保有する、または投資を検討している175以上の発行体と対話を行ったが、その大半は、環境リスクとグリーンボンドの枠組みに関するものだった。

また我々は、ESG投資を推進する国際団体、責任投資原則(PRI)や持続可能な世界を実現するための枠組み「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」、機関投資家の団体「クライメート・アクション100プラス」、米持続可能性会計基準機構(SASB)など多くのグローバルな組織と協力して、ESGのより高い基準とより良い開示を推進している。

投資家すべてがもっと多くのことを行う必要がある。資産運用会社や発行体、アセット・オーナーは、一貫した変化を達成するために協力する必要がある。そしてそれは早ければ早いほど望ましい。

著者

Scott A. Mather

米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO)

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