大方の予想どおり、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月の会合で、政策金利を0.75%引き上げ、FF金利の誘導目標を2.25%~2.5%としました。これは、FRBが長期の中立金利と推定する2.5%をわずかに下回る水準です。記者会見でジェローム・パウエルFRB議長は、インフレ亢進を含めた足元の経済のファンダメンタルズを鑑みると「緩やかに制限的な」金融政策は正当化されると述べた他、金融政策が制限的であることを確実にするために、9月の次回会合で追加の大幅利上げが必要になる可能性に言及しました。これによりFF金利は、制限的な金融政策を支持するインフレ高止まりを含む経済ファンダメンタルズにより沿ったものになります。 米国債市場は、7月の声明とパウエル議長の発言に反応して反発しました。これは、最近の予想を上回るインフレに照らして、市場がより積極的な行動のリスクを織り込んでいることを示唆しています。実際、世界の大半の国では、多くの中央銀行が予想していた以上にインフレが根強く続いています。特に顕著なのが米国です。足元で世界の石油価格、農産物価格が下落していることから、米国の総合インフレ率は、今後数ヵ月は低下する可能性が高いものの、価格の粘着性が強い賃金と賃貸市場という2つの分野では、実際、インフレが加速しています(例えば、アトランタ連銀の賃金上昇トラッカーを参照)。 「緩やかに制限的」とは、どの程度制限的なのか? パウエル議長が提示した「緩やかに制限的な」方針と一致するFF金利の正確な水準については不明確ですが、FRB高官はまだその水準に達していないと認識しており、FRBが6月に発表した「予測の中央値」の2023年のピークの4%に近づく可能性があるのは明らかなようです。 さらにFRB高官は過去数ヵ月、金利の先行きに関するフォワード・ガイダンスに苦労してきましたが、予想外のインフレ・データによりフォワード・ガイダンスは急速に陳腐化しています。それでもパウエル議長は、リスクの分布についてバランスの取れた見解を示したとPIMCOではみています。成長の減速を示す新たな証拠を挙げつつ、労働市場の強さを強調し、より持続的なインフレの可能性が高まっている点について述べました。 パウエル議長はまた、(景気後退なしにインフレ率が下がる)ソフトランディングを達成するという目標を改めて表明しましたが、目標達成の見通しに陰りが見えるとも示唆しました。議長はまた、できるだけ早期に物価の安定を回復させることにFRBが注力していることを再び明言しました。 目先の政策経路 全体として、9月20日、21日の次回FRB会合までの間に、多くの新たな情報が得られる見込みです。パウエル議長は大幅な追加利上げを認めるまでには至りませんでしたが、インフレが高止まりしたままなら0.75%の追加利上げが適切であると、更なる0.75%利上げの可能性を残しました。ウクライナの戦争と地政学的な混乱によって、成長とインフレの短期的な道筋に関する不確実性は高まっています。最近発生した他の供給ショックと同様に、こうした地政学的ショックは、FRBの政策の短期的な経路にとって相反する意味合いを持つことになります。少なくとも、インフレが予想以上に持続的であるとの最近のデータに照らせば、現在の中立的なスタンスからより制限的なスタンスに政策を調整することは適切であり、FRBはこの方向にさらに進む可能性が高いとPIMCOでは考えています。 ティファニー・ウィルディングとアリソン・ボクサーはエコノミスト。PIMCOブログの定期的寄稿者。
PIMCOブログ FRBが自信を見せるソフトランディングに PIMCOが見るリスク 米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレが沈静化するにつれ、来年の失業率は緩やかな上昇にとどまると予想していますが、過去および現在の労働市場のトレンドからPIMCOではそこまでの確信をもっていません。
PIMCOブログ マクロ経済リスクの上昇により、利上げ到達点予測に達しない可能性 米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月に利上げを一時休止しましたが、年後半の政策金利の見通しは引き上げました。PIMCOでは7月の追加利上げを予想していますが、それ以降の利上げについては懐疑的です。