2020年は金融市場にとって異例ずくめの年だった。新型コロナウィルスの世界的大流行はブラックスワン(事前に予測できず、起きた時の衝撃が大きい事象)であり、世界の国内総生産(GDP)に四半期ベースで過去最大の落ち込みをもたらし、株式・債券市場はかつてないペースで収縮した。 世界経済は2021年を通じて持ち直すと見込まれるが、完全回復には長い時間がかかるだろう。ワクチン接種が進み、世界が通常の生活に戻り始めれば、経済も活気を取り戻すはずだ。ただ、ウィルスの封じ込めと財政政策による下支えという2つの決定的な要因が今後の景気回復プロセスに大きく関わってくる。 企業収益の伸びは加速し、ファンダメンタルズの改善はリスク資産と景気循環株を押し上げると見ている。マルチアセット運用では引き続き株式をオーバーウェイトとし、債券に関してはセクターを選別する。また景気循環型のセクターと地域へのエクスポージャーを増やす。 結果として、ポートフォリオの分散化と弾力性を引き続き重視することになる。では、アセットごとの戦略をみていこう。 株式市場に追い風 企業収益が上向くことは、株と債券双方に好材料だが、株式市場にとって特に強い追い風となる。米連邦準備理事会(FRB)が、物価上昇率が一時的に2%を上回っても容認する考えを示したことも株式に有利に働く。 先進国の大半では金利水準がゼロ近傍にあり、金融政策の余地が限られているため、財政政策による強力なテコ入れが必要になる。財政出動の規模と範囲が景気回復と資産価格の両方に決定的な影響を及ぼすだろう。 経済活動の回復と企業収益の改善は景気循環株を押し上げるはずだ。世界の製造業の回復は、工業、素材、半導体などのセクターにとって心強い材料となる。また、集中的な財政出動と労働市場の回復によって個人貯蓄と消費は上向き、住宅・耐久消費財セクターは好転しよう。一方、輸送と観光・宿泊業については引き続き慎重にならざるを得ない。 地域としては、日本や一部の新興国の景気循環株が景気回復によって上向くと見ている。ハイテク関連企業など長期的な混乱の恩恵を被るセクターでも投資機会を探っていく。世界的には米国と中国が圧倒的に強いが、欧州は再生可能エネルギーに、日本は自動化に注目したい。 社債に関して、ハイイールド債には慎重に臨む。特に、新型コロナ第2波で資金調達が必要になるセクターは要注意だ。ただ、高格付けの発行体やセクターには投資価値があるとみる。ファンダメンタルズが良好な住宅関連(特に米国)に今後も投資していく。新興国債にも魅力的な商品はあるが、流動性の高さを重視したい。 米国債には上値余地 主な短期的リスクとしては、コロナ対策で景気回復が遅れる可能性が挙げられる。質の高い長期債(国債)は利回りが歴史的な低水準にあるものの、成長ショックに対して今後も頼れるポートフォリオ分散の手段となろう。大方の先進国の国債に比べて米国債には上値の余地があり、今後も質への逃避の選択肢となり得る。ペルー、中国など一部の新興国国債にも注目したい。利回りがよく、リスク回避傾向が強まる時期でも堅調だ。 もう1つの潜在リスクはインフレショックである。新型コロナの影響でモノの値段が抑えられているため、当面は世界的に低インフレが続く見通しだ。だが大規模な財政出動、政府債務の急増、金融緩和が相俟って、コロナ後の世界ではインフレ高進の可能性が十分にある。 経済条件が悪化する場合には、インフレヘッジや分散化に適した資産、例えばインフレ連動債や金などにフォーカスする。エネルギー関連商品など成長志向型の資産は避けたい。
注目の運用戦略 インカム戦略アップデート:レジリエンスとキャピタルゲインの可能性に備える 利回りが魅力的で、景気が悪化した場合にキャピタルゲインの可能性がある、質が高く流動性の高い債券に大きな価値を見出しています。
アセットアロケーション展望 プライムタイムを迎えた債券投資 PIMCOの2024年の見通しでは、傑出した資産クラスとして債券に注目しています。その堅調な見通しや強靭性、分散効果のほか、株式と比較しても魅力的なバリュエーションを提供しています。
PIMCOの視点 今日のクレジット市場における投資方針:マーク・キーセルおよびジェイミー・ワインスタインとのQ&A クレジット市場を俯瞰すると、パブリック市場には利回りが魅力的で底堅さを備えた質の高い投資機会が存在し、プライベート市場では長期的な投資機会が増加しています。
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