PIMCOの ESG投資年次レポートにてご説明したように、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資は新たな時代に入りました。パンデミック(世界的流行)により、「社会(Social)」の問題が顕在化および拡大し、気候変動の脅威は加速しています。ESG関連資産の市場が成長を続けるなかで、このような事態は投資家やその他のステークホルダーにとって重大な意味を持っています。 本ブログでは、発行体とのエンゲージメント(積極的な対話)、気候関連のポートフォリオに関する考察、社会的なテーマに絞って、ESG投資年次レポートから厳選した主要なポイントをご説明します。 発行体とのエンゲージメントが建設的な変化を生み出す PIMCOは、ESGのテーマに取り組むため、一貫して企業や政府などの発行体と積極的にエンゲージメントを実施しています。企業との議論のなかで、ESG戦略とリスクの理解に努め、サステナビリティ・リンク・ボンドやESG関連の債券発行などの革新的な行動を促しています。 気候変動とESG関連の債券がエンゲージメントの議論の中心であることに変わりはありませんが、2021年は新たに以下のテーマを重視しました。 国際銀行とネットゼロ: 20行以上の国際銀行と、融資方針も含めた二酸化炭素排出戦略の実施状況に関して、積極的な対話を実施しました。 森林破壊: 20社以上の食品会社、小売企業および銀行と、彼らのバリューチェーンの中での森林破壊の排除について、積極的に対話しました。 メタン放出: メタンは地球温暖化の主要な要因で、国際エネルギー機関によれば、エネルギーセクターは(農業に次いで)2番目に大きなメタンの排出源です。PIMCOはメタン放出削減について、50社以上のエネルギー企業と積極的な対話を行いました。 栄養:食品会社は、栄養不良による経済および社会のリスク緩和に重要な役割を果たします。それらの多くの企業の栄養の専門家と対話を行い、栄養に関する戦略と情報公開に対する投資家の期待について議論しました。 PIMCOの ESG投資年次レポート にて、エンゲージメントとその結果に関するケーススタティーを詳しくご紹介しています。 アクティブ運用は投資家を二酸化炭素排出ネットゼロの目標に導くことが可能 政府や企業、資産運用会社は、クリーンエネルギーや広範囲なESGのイニシアティブ関連の投資資金を何兆ドルも売買しており、そのようなネットゼロに向けた動きが、今後も資産の市場価格形成にますます大きな影響を与えるでしょう。また、規制、カーボン・プライシング、消費者心理やビジネスモデルの変化なども、価格に影響を及ぼすとみられます。投資家は自らのポートフォリオが、(急激な規制変更、サプライチェーンの混乱、政治的社会的反発などを含め)気候関連のリスクに上手く対処できる準備ができているかを考慮する必要があります。また、気候に関する政策や、消費者および投資家の増加しつつある需要から生じる投資機会にも備えるべきです。 債券市場はその規模、セクターの多さと多様性、またESGを目的に活用できる運用商品により、ネットゼロ排出経済への移行を推進するうえで中心的な役割を果たすとPIMCOは考えています。標準的な「ネットゼロ」ポートフォリオの定義は、今日ではまだ存在しない点を認識しつつ、関心をお寄せいただいたお客様と共に、低炭素化の目標達成に向けて債券ポートフォリオを運用しています。低炭素化された投資ポートフォリオを目指して徐々に前進する手段としては、炭素集約的なセクターへのエクスポージャー停止または削減、ネットゼロへ移行の最前線にある発行体への投資、グリーンボンドへの投資、二酸化炭素削減戦略に関する発行体とのエンゲージメントなどがあげられます。 投資ポートフォリオにおける気候変動リスクを理解し、管理することがますます重要に PIMCOでは、気候変動が世界経済や金融市場、債券発行体に甚大な影響を及ぼすと考えています。リスクや投資機会が思わぬところで顕在化し、さまざまな資産クラスの投資に影響を与える可能性があります。 PIMCOの投資リサーチのプロセスのなかでは、気候関連リスクのうち、以下の大まかな2つの分野に対して、(さまざまな対象期間で)セクターエクスポージャーの評価を行います。 移行リスク: 政策リスク、法的リスク、テクノロジーリスク、市場リスク、風評リスクなど(例:二酸化炭素排出についての規制強化) 物理的リスク: ハリケーンや山火事など事象からくる急性のリスク、長期的な気候パターンの変化からくる慢性のリスク PIMCOのESGの専門家は、何十年にも及ぶ債券分析の経験を活かし、アナリストによる気候変動リスク評価を支援する7つの独自のツールを設計しました。ポートフォリオ・マネージャーは、常にポートフォリオ固有の目的に沿い、ガイドラインを遵守しながら、これらのツールから得られる知見を活用し、気候関連の信用リスク管理とその緩和に努めています。 引き続き注目され、投資機会が見込まれる社会的なテーマ:ESGのうちのS、「社会(Society)」 世界のパンデミックと悪化する気候変動により、経済格差、食料不安、失業、不安定な住宅事情など、社会的な課題が膨らんできました。これに対応するため、2021年には、企業や政府などにおいても、ソーシャルボンドやサステナビリティボンドの発行増加が見られました。 PIMCOも、それらの何件かの起債に参加しています。社会的な分野に関する出費や目指す結果に対する目標や重要性に基づいて、それらの債券を評価します。人材管理、労働権ならびに人権、職業安全衛生、サプライチェーン管理を考慮します。 このような「社会」にフォーカスした債券の発行は、世界経済において、債券市場が持続可能な変化の推進にどれほど貢献しているかを示す、ひとつの事例にすぎません。 PIMCOでは、債券はその市場規模と繰り返し発行される特性を有し、債券投資家は持続可能な変化を牽引するうえで大きな役割を果たせると考えています。PIMCOのESGに関する取り組みと投資アプローチの詳細については、こちらをご覧ください。