PIMCOの視点

企業クレジット市場の混乱

企業スペシャル・シチュエーション責任者のジェイミー・ワインスタインが、企業クレジット市場にみられる足元の混乱と、その結果、公開市場およびプライベート市場で生じる機会についてご説明します。

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企業クレジット市場で何が起きているのでしょうか。

第1に、世界中が新型コロナウイルスの大流行に苦しみ、第2に 、並行して石油価格が急落しています。これを受けてセクター、資産クラス、地域を問わず、資本市場全般で、迅速かつ広範囲のリスクの見直しが起こっています。

最も深刻な影響がみられるのが、企業クレジット市場です。企業クレジットの中でも投資適格未満のクラスは特に、好調時でも相対的に流動性が低いものですが、現在は極端に流動性が枯渇し、その結果、様々な資産クラスで市場の混乱が起きています。

よりご理解いただくために2つの点をご説明します。

第1に、投資適格級のスプレッドは、2008年の世界的金融危機の水準まで拡大しています。これは5年の累積デフォルト率が2桁になることを示唆しています。

第2に、レバレッジド・ローンとハイイールド債市場では、現時点でディストレス・レベルで取引されている負債が1兆ドルを超えており、この領域でのデフォルト率は10%を超える可能性があると予想しています。

これまでの影響

クレジット市場では、いくつかの重要な要素で懸念される状況が、顕在化しています。

第1に、流動性が非常に制約された状況が続いています。新規発行市場は基本的に停止しています。特に投資適格未満のクレジット、レバレッジド・ローン、ハイイールド債が顕著で、流通市場の取引は限定的で、価格発見が困難になっています。

第2に、新規のCLOの組成が止まっています。この点は重要です。私共の計算では、CLOが過去2、3年のレバレッジド・ローンの需要増分の半分以上を占めているからです。新規のCLOの組成が事実上止まっていることから、ローン取引が市場に出る余地は限られます。

第3に、日次流動性ビークルからの解約です。投資信託やETFで解約が相次ぎ、運用担当者は流動性がありパフォーマンスに寄与するとみられていたクレジットを、流動性のない不適正な価格で売却することを迫られています。

第4は、格付け機関の行動です。格付け機関は、特にパンデミックか石油・ガスと関連の深い一部の発行体の格下げを始めていますが、今後数ヵ月は幅広い銘柄で格下げが相次ぐと予想しています。そして格下げが増えれば、格付け制約がある保有者側での売り圧力が高まるとみられます。

最後に、公開市場の反応のスピードが挙げられます、反応スピードは2008年よりもはるかに速くなっています。こうした公開市場の動きの速さから、プライベート市場の取引の値付けが極めて困難になっています。プライベート市場の新規資本もしばらく停止しています。

こうした取引とリスクの見直しにより、プライベート取引が戻って、必要とする借り手の企業クレジットの穴を埋められるようになるまでには、しばらく時間がかかるでしょう。

今後の見通し

PIMCOでは、流動性の制約があり、収益が悪化している企業については、引き続き慎重です。より魅力的な機会が年内に出てくる可能性があるとみています。今のところは、あくまで忍耐強く、市場の信用力の高い、セグメントを重視していきます。

流動性とレバレッジの制約が予想され、それが公開市場、プライベート市場いずれでも貸出市場の混乱につながり、CLO、BDC(事業開発会社)、直接貸付ファンドが、アンダーパフォームとなったクレジットの売却を模索する可能性があります。格付け機関が後追いで格下げを続けると、こうした売りが加速することも予想されます。

プライベート市場に大きな潜在的機会が浮上すると予想しています。アンダーライターがプライベート市場にの中枢を担い、プライベートのレバレッジの高い貸し手が強制的に売り手に回ることから、こうした動きを背景に、中期的には、公開市場、プライベート市場共に、資金難に陥った発行体の資金調達と、プライベート・キャピタルのソリューションの機会が拡大するとみています。

最後に、専門知識と長期ビークルを有し、事業再編をリードできる投資家にとっては、経営基盤の傷ついた企業のバランスシート修復に、非常に高い収益機会があるとみています。

PIMCOは、今回のようなクレジット市場全般の混乱に備えてきています。PIMCOが有する多くのビークルを、こうした機会を活用するために、投資家の流動性ニーズと、様々なリスク許容度に合わせて、カスタマイズすることが可能です。

ご留意事項


2020年4月6日収録

企業クレジット市場における混乱をご覧いただき、ありがとうございます。本資料は情報提供のみを目的としており、会計、投資、法務、財務、その他の面での助言の提供を意図したものではなく、その信頼性を保証するものではありません。本資料は、特定のファンドまたはPIMCOの取引戦略または投資商品の売却や購入を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の運用成果を示唆するものではなく、PIMCOのいかなる取引戦略または投資商品も、本資料で説明された投資と同様の投資を行う保証はありません。

すべての投資は、リスクが伴い価値を失う可能性があります。債券市場への投資は、市場、金利、発行者、信用、インフレリスク、流動性リスクなどのリスクの影響を受けます。ほとんどの債券と債券戦略の価値は、金利の変化の影響を受けます。期間が長い債券および債券戦略は、期間が短い債券および債券戦略よりも敏感で不安定になる傾向があります。債券価格は通常、金利が上昇すると低下し、低金利環境ではこのリスクが増大します。債券カウンターパーティの能力の低下は、市場の流動性の低下と価格の変動性の増大に寄与する可能性があります。債券投資は、償還時の元のコストよりも多かれ少なかれ価値があります。 社債は発行体が元利金を返済できないリスクにさらされる可能性があり、金利感応度や発行体の信用力および全般的な市場流動性に対する市場の認識などの価格変動性にさらされる可能性もあります。住宅ローンおよび資産担保証券 は金利の変動に敏感であり、早期の返済リスクにさらされる可能性があり、一般に政府、政府機関または民間保証人によってサポートされていますが、保証人がその義務を履行する保証はありません。ジニーメイ(GNMA)が発行した米国エージェンシーMBSは、米国政府の完全な信頼と信用に支えられています。フレディーマック(FHLMC)およびファニーメイ(FNMA)が発行した証券は、元本および利息の適時の返済を代理店に保証しますが、米国政府の完全な信用および信用に裏付けられていません。特定の証券または証券グループの信用力は、ポートフォリオ全体の安定性や安全を裏付けるものではありません。

本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。

言及されている特定の証券及びその発行体については、売買や保有継続の推奨を目的としたものではありません。 PIMCO商品および戦略に言及された証券を保有している場合がありますが、その場合においてかかる証券を保有し続けることを表明するものではありません。

本資料で述べられた見解は将来を見据えたものであり、いくつかのリスク、不確実性、および仮定の影響を受ける可能性があります。実際のイベントまたは戦略の実際の運用成果は大きく異なる可能性があります。

本資料で表明された見解はPIMCOに帰属し、随時変更される可能性があります。

本資料内で表明された見解は、表記された日付時点でPIMCOが入手可能な情報に基づいた、その日付時点におけるPIMCOの見解であり、リアルタイムの市場の動向を反映して更新されていない可能性があります。見解は、市場およびその他の状況によって、予告なしに変わる可能性があります。このような見解が正しいことを保証する、または表明するものではありません。PIMCOは、ここに記載されている情報を更新すべき義務を負うものではありません。表明された見解は一般的な市場の解説のみを意図したものであり、投資助言や保証された予測またはリターンの予測を提供するものではありません。

本ビデオには、ビデオ作成時点でのPIMCOの見解が含まれていますが、その見解は予告なしに変更される場合があります。本ビデオは情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本ビデオに記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。

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PIMCOは、アリアンツ・アセット・マネジメント・オブ・アメリカ・エル・ピーの米国およびその他の国における商標です。本資料の一部、もしくは全部を書面による許可なくして転載、引用することを禁じます。本資料の著作権はPIMCOに帰属します。2020年

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