企業クレジット市場で何が起きているのでしょうか。
第1に、世界中が新型コロナウイルスの大流行に苦しみ、第2に 、並行して石油価格が急落しています。これを受けてセクター、資産クラス、地域を問わず、資本市場全般で、迅速かつ広範囲のリスクの見直しが起こっています。
最も深刻な影響がみられるのが、企業クレジット市場です。企業クレジットの中でも投資適格未満のクラスは特に、好調時でも相対的に流動性が低いものですが、現在は極端に流動性が枯渇し、その結果、様々な資産クラスで市場の混乱が起きています。
よりご理解いただくために2つの点をご説明します。
第1に、投資適格級のスプレッドは、2008年の世界的金融危機の水準まで拡大しています。これは5年の累積デフォルト率が2桁になることを示唆しています。
第2に、レバレッジド・ローンとハイイールド債市場では、現時点でディストレス・レベルで取引されている負債が1兆ドルを超えており、この領域でのデフォルト率は10%を超える可能性があると予想しています。
これまでの影響
クレジット市場では、いくつかの重要な要素で懸念される状況が、顕在化しています。
第1に、流動性が非常に制約された状況が続いています。新規発行市場は基本的に停止しています。特に投資適格未満のクレジット、レバレッジド・ローン、ハイイールド債が顕著で、流通市場の取引は限定的で、価格発見が困難になっています。
第2に、新規のCLOの組成が止まっています。この点は重要です。私共の計算では、CLOが過去2、3年のレバレッジド・ローンの需要増分の半分以上を占めているからです。新規のCLOの組成が事実上止まっていることから、ローン取引が市場に出る余地は限られます。
第3に、日次流動性ビークルからの解約です。投資信託やETFで解約が相次ぎ、運用担当者は流動性がありパフォーマンスに寄与するとみられていたクレジットを、流動性のない不適正な価格で売却することを迫られています。
第4は、格付け機関の行動です。格付け機関は、特にパンデミックか石油・ガスと関連の深い一部の発行体の格下げを始めていますが、今後数ヵ月は幅広い銘柄で格下げが相次ぐと予想しています。そして格下げが増えれば、格付け制約がある保有者側での売り圧力が高まるとみられます。
最後に、公開市場の反応のスピードが挙げられます、反応スピードは2008年よりもはるかに速くなっています。こうした公開市場の動きの速さから、プライベート市場の取引の値付けが極めて困難になっています。プライベート市場の新規資本もしばらく停止しています。
こうした取引とリスクの見直しにより、プライベート取引が戻って、必要とする借り手の企業クレジットの穴を埋められるようになるまでには、しばらく時間がかかるでしょう。
今後の見通し
PIMCOでは、流動性の制約があり、収益が悪化している企業については、引き続き慎重です。より魅力的な機会が年内に出てくる可能性があるとみています。今のところは、あくまで忍耐強く、市場の信用力の高い、セグメントを重視していきます。
流動性とレバレッジの制約が予想され、それが公開市場、プライベート市場いずれでも貸出市場の混乱につながり、CLO、BDC(事業開発会社)、直接貸付ファンドが、アンダーパフォームとなったクレジットの売却を模索する可能性があります。格付け機関が後追いで格下げを続けると、こうした売りが加速することも予想されます。
プライベート市場に大きな潜在的機会が浮上すると予想しています。アンダーライターがプライベート市場にの中枢を担い、プライベートのレバレッジの高い貸し手が強制的に売り手に回ることから、こうした動きを背景に、中期的には、公開市場、プライベート市場共に、資金難に陥った発行体の資金調達と、プライベート・キャピタルのソリューションの機会が拡大するとみています。
最後に、専門知識と長期ビークルを有し、事業再編をリードできる投資家にとっては、経営基盤の傷ついた企業のバランスシート修復に、非常に高い収益機会があるとみています。
PIMCOは、今回のようなクレジット市場全般の混乱に備えてきています。PIMCOが有する多くのビークルを、こうした機会を活用するために、投資家の流動性ニーズと、様々なリスク許容度に合わせて、カスタマイズすることが可能です。
ご留意事項
2020年4月6日収録
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