エマージング市場の最新状況
新型コロナウイルスの感染拡大がエマージング市場を襲っています。従来リターンが高く、リスクも高いこのアセットクラスは投資家が安全資産に向かうのにしたがい打撃を受けています。ロシアやメキシコなどの一部の新興国は、主要な石油輸出国でもあり、最近の原油価格の暴落による打撃を受けています。
エマージング市場にとって一度に多くのことが起こりました。この結果、エマージング通貨が対米ドルで急落する一方、エマージング資産を保有するために投資家が要求するプレミアムが急上昇しています。
もちろん、今回のショックはエマージング市場中心ではなく、世界的なものであり、世界中の中央銀行や財政当局による世界的な対策が行われています。深刻かつ長引く景気後退を回避すべく、前例のない規模の金融・財政の刺激策が次々と打ち出されています。欧米各国と同様、エマージング諸国の金融・財政当局も現地市場に流動性を注入し、ショックを緩和しようと刺激策のパッケージを可決させています。
これまでの影響は?
エマージング債の最近の売りは無差別であり、政策の柔軟性に乏しいリスクのある発行体だけでなく、バランスシートが堅固で信用力の高い発行体にも影響を及ぼしています。3月のある時点で、エマージング債市場は一方的な売り圧力に圧され、数週間のうちに約400億ドルが流出しました。これは前例のない数字です。こうした混乱は損失をもたらしただけでなく、リスクプレミアムと利回りを滅多に見られない水準に押し上げました。
これにより投資への扉が開かれたと考えています。米ドル建て債のスプレッドは過去最大近くまで拡大しており、投資家にとってはこれまでなかった水準のデフォルトが補償される可能性があります。
今後の見通しは?
修復には時間がかかるとみています。エマージング市場はPIMCOの考えるリスク同心円の「外周」にある資産であり修復は内側から始まるはずです。まず米国債市場、次いでAAA格の米国のモーゲージ市場、次に高格付けの米国社債市場へと進むとみられます。
さらに依然として不確実性がかなり高く、ロックダウンの影響は当初の想定よりかなり長引く可能性があります。エマージング市場の発行体の一部はデフォルト(債務不履行)に陥るとみられ、信用力の低い石油輸出国は特に脆弱です。
そのため短期的には米ドル建ての高格付けのソブリンおよび企業の発行体を選好します。特にバランスシートの堅固な発行体を選好します。レバレッジ比率が低く、過大な現金準備を有する発行体の大半は、中央銀行 ソブリン・ウエルス・ファンド、いわゆる「緊急時基金」に保有されていますが、これはまさに過去の幾多の危機を乗り越えてきたからです。
エマージング市場については、現在の混乱が落ち着いた暁には長期的にどうなるかを考えると興味深いはずです。現地通貨建てエマージング債はいまだに「オールド・ノーマル」(過去の標準)の利回りを提供してくれる数少ないセグメントです。利回りは投資適格債で主に4%~8%のレンジです。これは欧州や日本だけでなく、今や米国の利回りと比べても非常に対照的です。ボラティリティが落ち着くにつれて投資家はリスク同心円の外側にある現地通貨建て市場に向かうとみられます。
通貨は割安であり、現地通建ての利回りは、先進国の利回りに比べて引き続き高い水準にあるとみています。
エマージング市場投資において、これまで同様何よりも重要なのは、国や発行体の分散と長期的な視点をもつことです。