フィッシャー:デビッド・フィッシャーです。今回もグループ最高投資責任者(CIO)のダン・アイバシンがPIMCOのインベストメント・コミッティー(IC)における最近の議論をご紹介します。
2019年は大半の資産クラスにとってかなり異例の年となり、全般に高いリターンを記録しました。2020年に入ってややボラティリティが高まり、市場は行きつ戻りしているようです。ICは2020年の市場をどのように見ているのでしょうか。
アイバシン:確かに2019年は、ほとんどの金融市場にとって素晴らしい年でした。価格の点で、ほぼすべての市場が上昇したという意味ではやや特異な年だったと言えるでしょう。そのため2020年の先行きについては、バリュエーションがやや過大になっているとみています。歴史的な文脈で株式と債券双方のバリュエーションを見ると、既に妥当な水準にあり割安ではなく割高に近づいているようです。また不確実性の要因が増えています。そのため今後2、3年については、予想リターンは低下し、ボラティリティが上昇するとみています。もちろんこれは最終投資家にとって、より難しい環境になるということです。
もう1つ認識している点があります。非常に好調だった2019年からの流れなので意外ではないのですが、少なくとも1月上旬のムードはきわめて楽観的だったということです。これはグローバル経済のファンダメンタルズについてだけでなく、金融資産全般で高いリターンが続くとの見通しによるものでした。最近のボラティリティの上昇で自信はやや揺らいでいますが、概して言えば、市場にはまだ相当程度の楽観論があり、押し目買いの意欲があり、リターンの方向に関してかなりの確信を持っているとみています。
フィッシャー:2019年についてもう1つ興味深いのはフローの側面です。特に債券への投資資金の流入が旺盛でした。これまでのところ2020年に入ってもこの流れは続いています。利回りが極めて低い水準にとどまっているにもかかわらずです。投資家を債券に向かわせている要因は何なのでしょうか。
アイバシン:債券を求める投資家は、2つのカテゴリーに分けられると考えられます。第1のカテゴリーは、安定的かつ継続的な収益源を求める投資家グループです。このグループは、低金利環境で目標達成が次第に難しくなっています。第2のカテゴリーは、相対的に良好なパフォーマンスで資本の保全を求める投資家です。他の資産のパフォーマンスが低調な中、この目的に適うのが債券です。
ここ最近、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不確実性の高まりを受けて、ボラティリティが上昇していますが。この間も、質の高い債券ポートフォリオの防御的な性質が改めて確認されています。こうした防御的な性質が、債券アロケーションの主な魅力であるとの見方を継続しています。
リテールでも機関投資家でも、私共のお客様のかなりの割合は、環境が一段と厳しくなった場合にこうしたタイプのプロテクションを求めるだろうとみられます。これは、経済のファンダメンタルズの観点、また直近のようなリスク要因の観点の両面からです。
フィッシャー:では 、現時点で債券市場のどこに機会があるとみているのでしょうか。
アイバシン:利回りの水準が極めて低く、スプレッドは縮小し、株式のバリュエーションがかなり押し上げられている現状を踏まえると、PIMCOをはじめとする投資家は、より創造的に打って出てリターンを確保する必要があると言えるでしょう。
私共が取り組んでいることの1つが、投資機会の拡大です。すでにかなりの投資を行っていますが、今後も多額の投資を継続しグローバルなシェアを拡大するつもりです。重視しているのは、ここ数年で大幅に成長した新たな市場です。こうした市場は効率では先進市場に若干劣る傾向があるものの、投資家に興味深い投資機会を提供します。一例がエマージング市場、注目が高まるアジア全般です。質の高いレート志向の市場でも、クレジット市場でも、欧州や中南米などでの事業拡大も機会拡大の一環です。
次に、お客様の直接のご依頼による、より柔軟なマンデートを重視しています。これは従来の戦略の中で柔軟なマンデートを増やすと共に、プライベート・セグメント内で事業を拡大することでもあります。魅力的な利回りを生み出す方法を求めて、下落時の回復力を維持しながら、ポートフォリオの利回り向上の方法を模索します。これは私共がテーマ別に取り組もうとしていることです。
繰り返しになりますが、これは柔軟性を高めたいというお客様の要望に基づいて、ご提供する機会を拡大するために取り組んでいるものです。2020年初頭のバリュエーションを出発点とすると、ベータのリターンの源泉としてスプレッドのさらなる縮小に頼ることは難しくなるとみられます。そのため相対価値に注目することがますます重要になっていくでしょう。
より市場に中立的な意味で、注目しているのは以下の点です。ボラティリティに関連する歪み、市場の一部のセグメントの相対的流動性と連動したオーバーシューティング、規制に関連して起きている摩擦、政治的環境の不確実性の高まりに伴う摩擦と投資機会。
フィッシャー:過去によく言及された分野の1つが、住宅関連投資でした。基本的にPIMCOはこの分野をかなり前向きに評価してきましたが、何か変更点はあるのでしょうか?
アイバシン:いいえ むしろ現在はより一層、相対的にメリットがある住宅関連セクターへのアロケーションを重視するポートフォリオへの自信を深めています。一般の伝統的な企業クレジットアセットに対しては、過熱気味の需要が続いてきました。大量発行が続いたことから、引き受けの質がやや劣化していること、さらに悪化することも意外ではありません。
住宅市場は全般にファンダメンタルズが引き続き安定しています。意外ではないのは、金融危機後に規制が強化され、格付け機関や投資家が保守的になり、いまだにそれが続いているからです。したがって相対バリューの観点でみると、こうした住宅関連投資は、2020年初頭の現時点で相対的な魅力を増していると考えています。
注目すべき第2の点は、政府系モーゲージ債の分野で起きていることで、最近の金利上昇に関連があります。昔ながらの政府系モーゲージ担保証券は大幅に安くなっています。これらは米国政府またはその機関が直接保証する証券です。これらは魅力的な選択肢であり、高格付けの社債や、米国債の代替となりますが、利回りを高めるにはやや複雑な取引になります。
フィッシャー:ありがとうございました。みなさんご覧いただきありがとうございます。またお会いしましょう。
ご留意事項
2020年2月5日収録
ここでの「割安、割高」という用語は、当該証券や資産クラスの長期平均並びに運用担当者の将来予想価格を大幅に下回る、あるいは上回るという意味で使われています。将来の運用成果の保証や、証券の評価が利益の確保、または損失を回避する保証はありません。
債券は、デフォルトがない場合、定期的かつ安定的な利子が支払われる傾向があります。債券はボラティリティが低く、歴史的に株式やその他のリスク資産との相関性が低い傾向があることから、投資ポートフォリオの優れた分散手段になります。
過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
すべての投資は 、リスクが伴い価値を失う可能性があります。 債券市場への投資は、市場、金利、発行者、信用、インフレリスク、流動性リスクなどのリスクの影響を受けます。ほとんどの債券と債券戦略の価値は、金利の変化の影響を受けます。期間が長い債券および債券戦略は、期間が短い債券および債券戦略よりも敏感で不安定になる傾向があります。債券価格は通常、金利が上昇すると低下し、低金利環境ではこのリスクが増大します。債券カウンターパーティの能力の低下は、市場の流動性の低下と価格の変動性の増大に寄与する可能性があります。債券投資は、償還時の元のコストよりも多かれ少なかれ価値があります。信用度 特定の証券や種類の証券のは信用度は、ポートフォリオ全体の安定性や安全性を保証するものではありません。 株式は、実際の市場と認識されている一般的な市場、経済、産業の両方の状況により、価値が低下する可能性があります。 住宅ローンおよび資産担保証券金利の変動に敏感であり、早期の返済リスクにさらされる可能性があり、一般に政府、政府機関または民間保証人によってサポートされているが、保証人が満たされる保証はないその義務。ジニーメイ(GNMA)が発行した証券は、米国政府の完全な信頼と信用に支えられています。フレディーマック(FHLMC)およびファニーメイ(FNMA)が発行した証券は、元本および利息の適時の返済を代理店に保証しますが、米国政府の完全な信用および信用に裏付けられていません。
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