債券の基礎

インフレを理解する

インフレは、消費支出から企業投資、就業率、政府プログラム、税制、金利に至るまで、経済のあらゆる面に影響を及ぼします。インフレは投資リターンを低下させる可能性があるため、投資に際してはインフレを理解することがきわめて重要です。

インフレとは

インフレとは、物価水準全般が持続的に上昇することを指します。インフレ率の緩やかな上昇は経済成長を示唆しますが、インフレ率の急激な上昇は景気過熱の兆候である可能性があります。

経済が成長するにつれ、企業や消費者は財やサービスにより多くのお金を費やします。経済サイクルの成長段階では一般的に、需要が供給を上回り、生産者は価格を引き上げることが可能になります。この結果、インフレ率が上昇します。

経済成長が急激に加速した場合、需要はそれを上回るペースで増加し、生産者は価格を継続的に引き上げます。結果として、「悪性インフレ」や「ハイパーインフレ」と呼ばれる物価上昇のスパイラルを招く可能性があります。

米国では、インフレ症候群はしばしば「多過ぎるドルが少な過ぎる財を求めている」状態だと表現されます。言い換えれば、支出が財やサービスの生産を上回り、経済における通貨の供給が金融取引に必要な量を上回る状態のことです。その結果、通貨の購買力が低下します。

インフレとは

インフレの測定方法

エコノミストや中央銀行がインフレ率を見極めようとする際に一般に注目するのが「コアCPI(消費者物価指数)」や「コアPCE(個人消費支出)」などの「コア・インフレ率」です。ヘッドライン・インフレ率(総合インフレ率)や公表インフレ率とは異なり、コア・インフレ率では、食料品とエネルギーの価格を除外しています。これらは短期間に大幅に変動しやすく、長期的なインフレの動向を見誤らせる可能性があるためです。

定期的に公表されているインフレ指標はいくつかあり、投資家はこれらを活用してインフレの動向を把握することができます。米国で最も広く活用されているのが消費者物価指数(CPI)で、住宅、輸送、ヘルスケアなどを含めた財やサービスの小売価格を反映した指標です。米連邦準備制度理事会(FRB)がCPI以上に重視しているのが、個人消費支出(PCE)指数です。これは、PCEの方が調査対象の範囲がCPIより広いためです。英国において消費者物価のインフレ率を測る公式指標は、消費者物価指数(CPI)や調和消費者物価指数(HICP)です。ユーロ圏で主に活用されている指標も、HICPです。

コストプッシュ型のインフレ事例

これまでに原油価格の上昇や通貨の下落が、コストプッシュ型インフレの要因となりました。

原油価格の高騰の例

原油価格の高騰の例

まずガソリン価格が上昇します。これを受けてトラックや鉄道、船舶によって市場に輸送されるすべての財やサービスの価格が上昇します。同時に、ジェット燃料の価格が上昇して、航空券の価格や航空輸送運賃が引き上げられ、灯油価格も上昇するため、消費者も企業も打撃を受けます。このように原油価格の上昇は、経済全般の物価上昇を引き起こすことにより、消費者や企業が保有するお金を奪います。エコノミストは原油価格の上昇を、既に低迷している経済をさらに落ち込ませる可能性のある、事実上の「税金」だと考えています。

通貨下落の例

通貨下落の例

一国の通貨価値が下落すると、輸入品が割高になり、コストが上昇して物価全般に上昇圧力がかかります。長期的にインフレ率の高い国の通貨は、インフレ率が低い国に比べて下落する傾向があります。インフレは時間の経過とともに投資リターンの価値を毀損するため、投資家がインフレ率の低い市場に資金を移動させることがあります。

インフレの要因

任意の時期のインフレを加速させた要因について、エコノミストの見解が常に一致するわけではありませんが、一般にインフレを引き起こす要因は、二つのタイプに分けられます。コストプッシュ型のインフレとディマンドプル型のインフレです。コモディティ価格の上昇は、コストプッシュ型インフレの一例です。一般にコモディティ価格が上昇すると、基本的な財やサービスの価格が上昇するからです。

ディマンドプル型のインフレは、経済全体の総需要が急激に拡大した場合に発生します。財やサービスの生産拡大が追いつかない中で中央銀行が急激に通貨供給を増やした場合、ディマンドプル型のインフレが起こる可能性があります。供給を上回る需要が価格の上昇につながります。

インフレを管理する方法

米国のFRB、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、イングランド銀行(BOE)などの中央銀行は、経済活動のペースを調節することによりインフレを管理しようとしています。通常、短期金利を上下させることで、経済活動に影響を与えようとします。

中央銀行が自国(領域)の通貨供給量を管理することを金融政策といいます。金融政策の最も一般的な手段は、金利の引き上げ、引き下げです。しかし、中央銀行は市中銀行の準備金要件を引き締め、緩和する方法を使うこともできます。市中銀行は預金の一定割合を中央銀行に預け入れるか、手元の現金として保持する必要があります。準備金要件の引き締めは銀行の貸出能力を制限し、経済活動を鈍化させることになります。逆に準備金要件の緩和は一般に経済活動を刺激します。

政府が、財政政策を通じてインフレに対抗することもあります。財政政策の有効性についてエコノミストの見方が一致しているわけではありませんが、政府は増税や支出削減によって経済活動を抑制し、インフレに対抗する場合があります。逆に、経済活動の刺激を意図した減税や支出増加で、デフレに対抗する場合もあります。

インフレが投資リターンに与える影響

インフレは、実質の貯蓄や投資リターンを徐々に目減りさせるため、投資家にとっては「隠れた」脅威です。ほとんどの投資家は、長期的に購買力を高めることを目指しています。インフレはこうした目標を脅かします。実質的な購買力を高めるには、まずインフレのペース並みの投資リターンを確保する必要があるからです。たとえば、インフレ率が3%のときに2%の投資リターンでは、インフレ調整後の実質リターンは-1%と、マイナスのリターンとなってしまいます。

投資家がポートフォリオの防御策をとっていない場合、インフレは特に債券のリターンを引き下げる可能性があります。多くの投資家は、利息(クーポン)の支払いの形で得られる安定したインカム収入の確保を目的として債券を購入しています。しかし、ほとんどの債券の利率、クーポンは満期まで変わらないため、インフレ率が上昇するにつれて利払いの購買力は低下します。

同様に、インフレ率の上昇は、債券の元本価値を毀損します。投資家が元本の額面が100ドルの5年債を購入するとしましょう。インフレ率が年3%だとすると、インフレ調整後の元本価値は、満期までの5年で約83ドルまで減価することになります。

知っておくべき重要な用語

コモディティ: 穀物や貴金属など実物の商品。通常、先物契約を通じて投資家に売買される。
相関: 株式、債券、コモディティなどの二つの証券が相互にどう動くかという関係性を統計的に算出した尺度。
ディスインフレ: 経済成長が鈍化し始め、需要が緩和される一方、供給が相対的に増加して、インフレ率が低下する状態。
株式: 企業の所有権または財産権・権益。
債券: 所有期間中のインカムが固定ないし一定の証券、投資。一般に、全ての債券投資に当てはまります。
ハイパーインフレーション: 経済成長が急激に加速し、需要がそれを上回るぺースで拡大し、生産者も価格を継続的に引き上げる状態。
インカム: 証券の利息や配当から得られるお金。
満期: ローン、債券、住宅ローン、その他の債務証券の期限が到来し、完済される期日。
スタグフレーション: 低成長、高失業率と、インフレ率の上昇が同時進行する状態。

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