金融市場には様々な役割がありますが、金融機関などが短期の資 金繰りを行う市場として短期金融市場があります。その中でも銀行 間市場であるコール市場、ユーロ・マネー市場と、オープン市場であ るレポ市場、コール先物市場、オーバーナイト・インデックス・スワッ プ(Overnight Index Swap,OIS)市場などが主だったものです。 その他に、短期社債(Commercial Paper,CP)市場や譲渡性預金 ((Negotiable)Certificate of Deposit,CD)市場、割引短期国債 (Treasur y Bill,TB)市場や政府短期証券(Financing Bill,FB) 市場といった短期の債券が取引されるオープン市場があります。短期金融市場は中央銀行による金融調節の場でもあるなど、いくつか の重要な側面を持っています。

コール市場

コール市場では、金融機関が日々の資金過不足を調整するために 短期資金の貸借を行います。コール取引には有担保コールと無担保 コールがあり、短資会社がディーリング、ブローキングを行います。 準備預金制度を採用している国では、金融機関は中央銀行の定め る預金準備要件を満たすためにコール市場を利用します。日本の場 合、金融機関が日本銀行に預け入れる準備預金の一定期間(積み 期間)の平均残高が、受け入れ預金に対して一定の比率をかけた金 額を超える必要があり、その要件を満たすために金融機関はコール 市場で不足分を調達し、超過分を貸し出します。日本銀行は資金の 供給量を調節することでコール市場における金利(無担保コール・ レート翌日物)を誘導し、金融政策を行います。

レポ市場(現金担保付債券貸借取引市場)

資金の取り手と出し手の二つの取引主体の間において、取り手が債 券を貸し、出し手から現金を担保として受け入れる取引を債券レポ 取引といいます。取り手(債券の貸し手)は担保金にかかる金利を支 払い、出し手(債券の借り手)は当該債券にかかる貸借料を支払います。この担保金金利と債券貸借料の差はレポレートと呼ばれます。対 象となる債券には、一般に国債、政府機関債、モーゲージ債と社債が 含まれます。レポ取引は特定銘柄取引(Special Collateral)レポと 非特定銘柄取引(General Collateral)レポの二つがあり、前者は事 前に貸借する銘柄を特定する取引手法で、信用リスクを抑えた債券貸 借取引である一方、後者は取引成立後に銘柄を指定するものであり、 資金の運用・調達の意味合いが強いといえます。レポ取引は、中央銀 行による市場の資金供給量の調整手段としても用いられます。

コール先物市場とOIS市場

コール・レートを参照する商品として取引所に上場しているコー ル先物と、一定の期間のコール・レートと固定金利を交換するOIS があります。コール先物は、米国ではシカゴ商品取引所(Chicago Board of Trade,CBOT)に上場されているFF金利(Federal Fund Rate)先物であり、日本では東京金融取引所に上場している 無担保コールオーバーナイト金利先物がこれにあたります。コール先 物は取引所取引であり、カウンターパーティー・リスクのプレミアムが極 小化されている一方で、OISはカウンターパーティーとの相対取引であ り、カウンターパーティーの信用リスクがスプレッドとして反映されます。

その他のオープン市場

CPは、企業が短期資金を調達する手段であり、満期は1年未満です。無担保の約束手形であり、一般に信用力の高い企業が発行します。

CDは、預金取扱金融機関が発行する譲渡性の定期預金です。金 融機関は当該定期預金について無記名の預金証書を発行し、預金 者は自由にこれを譲渡することができます。一般に大口の預金が多 く、企業の決済用の資金として利用されます。

TB、FBは政府の発行する短期債券で、一時的な資金不足を補うた めに発行される満期の短い国債です。償還期間が短いことから、通 常の国債と比べても、リスクは相対的に小さいと考えられています。また、 これらは一般に割引債として発行されます。

投資における短期金融市場の意味

短期金融市場を有効に活用することは、投資家のリターンの向上にも つながります。例えば米国の金利リスクを取得する手段として、米国 債を購入する代わりに金利スワップで変動金利を支払い、固定金利 を受け取る場合を考えます。金利スワップは国債とは異なり、元本 の受け渡しが行われないことから、国債の購入代金にあたる資金が 手元に残ります。この資金を短期金融市場で運用し、変動金利を上 回る利回りを得ることができれば、投資家は米国債を購入した場合 と比較して追加的なリターンを得ることができます。また、短期市場 の動向は金融システムにおける重要なシグナルとなります。

シリーズ2:債券-後編

中央銀行とは

次のトピックを読む

PIMCOの視点

最新のPIMCOの経済見通し、経済・市場関連レポートはこちら。