宅ローン債権を担保として発行される証券を特にRMBS (Residential Mortgage-Backed Security、住宅ローン担保証券)と呼びますが、多くの場合単にMBSといえばこのRMBSを指します。RMBSは、政府またはGSE (政府関連機関)がその元利金支払を保証しているエージェンシーMBSとそれ以外のノンエージェンシーMBSに大別されます。

エージェンシーMBS

エージェンシーMBSとは、MBSのうち、政府またはGSE (Government Sponsored Enterprise、政府関連機関)がその元利金支払を保証しているものをいいます。MBSセクターにおける発行残高のうち約66%、米国の債券市場全体に対しても約16%(ともに2011年12月末現在、出所: SIFMA)を占め、米国の債券市場において主要なセクターとなっています。2008年の金融危機後は、多くの証券化商品の新規発行は大幅に減少しましたが、政府保証が付与されていることや、また米財務省およびFRB (米連邦準備制度理事会)によるGSEへの追加支援策等を背景に、エージェンシーMBSは新規発行が増加し、マーケットにおいて安定した供給を継続しました。

エージェンシーMBS発行の仕組み

米国におけるエージェンシーMBSの発行の仕組みは一般的に下記のプロセスとなります。

  1. 金融機関は住宅購入者に対し住宅ローンを貸し出す
  2. 金融機関は同様の性質(金利、償還期限等)を有するローンを束ねて「モーゲージ・プール」を組成
  3. モーゲージ・プールを裏付けにMBSを発行。MBSのうち元利金の支払を政府機関であるGNMAもしくはGSEが保証しているものがエージェンシーMBSと呼ばれる。

政府機関による支払保証

ジニー・メイ<Ginnie Mae>
(連邦政府抵当金庫:Government National Mortgage Association<GNMA>)

1968年に米国連邦政府、住宅都市開発省の全額出資で設立された政府機関です。1970年にGNMAの保証が付された最初のパス・スルー証券(後述)が発行されました。GNMAはMBSの元利金支払の保証を行うのみで、住宅ローン債権の買取およびMBSの発行は行いません。なお、GNMAは政府機関であるため、GNMAの保証するMBSは米連邦政府による明示的な保証が付されていることになります。GNMAが保証対象とするMBSのプールに含まれる住宅ローンは、FHA(連邦住宅局) の保険またはVA(退役軍人局)の保証が付されている、比較的低所得者向けのローンが中心です。

GSEによる支払保証

ファニーメイ<Fannie Mae>
(連邦住宅抵当金庫:Federal National Mortgage Association <FNMA>)

1938年に政府系金融機関として設立された後、1968年に民営化され、その際に業務の一部がGNMAへと分離されました。

フレディマック<Freddie Mac>
(連邦住宅金融抵当金庫:Federal Home Loan Mortgage Corporation <FHLMC>)

政府保証の付かないモーゲージ(コンベンショナル・ローン)の流通市場の発達を当初の目的として設立された政府関連機関です。

FNMA、FHLMCともに民間金融機関の組成したモーゲージ・プールを証券化するほか、それを買い取って自ら組成、発行をすることもあります。これらGSEが発行するMBSに対する元利金支払保証はGSE自体によるものであり、米連邦政府による保証ではありませんが、設立の根拠法があることや、公共性のある目的が定款に記されていること、また優遇措置があることなどから、市場では“暗黙の政府保証”が付されているとみなされています。

FNMAおよびFHLMCの証券化の対象となる住宅ローンは、基準内(conforming)ローンと呼ばれるFNMA / FHLMCの引き受けガイドライン(必要書類、借り手の債務所得比率、融資担保比率など)を満たすもので、当初のローン残高がFNMA / FHLMCが設定した限度額以下のものに限られます。

TBA取引
エージェンシーMBSの取引においては「TBA取引」が頻繁に用いられます。TBAとは “To Be Announced”の略で、TBAの売買当事者はモーゲージ・プールを特定せず、モーゲージ・プールの条件(クーポン、満期、支払保証者となる政府関連機関等)のみを設定し、1-3か月後の受渡しの契約を締結します。実際のモーゲージ・プールは売り手が決済日の48時間前までに特定し、買い手に通知します(48時間ルール)。売り手にプールを決定する権限があるため、TBAの価格はCheapest-To-Deliver(最割安銘柄)、すなわち受渡し条件を満たすプールの中で最も割安なプールの価格をベースに決定されます。TBA取引は、プールを特定することなく取引ができるという性質から、MBSの取引量の増加、市場流動性の向上に寄与しています。

エージェンシーMBSへの投資

高い利回り
エージェンシーMBSへの投資には通常の債券投資に伴う市場リスク、信用リスクに加え、期限前償還リスクを内包するため、投資家はそうしたリスク保有に見合う、より高い利回りが期待できます。

高い信用力
エージェンシーMBSはその大部分が政府関連機関から発行、および元利金支払の保証がなされており、その信用力は非常に高いものとなっています。

高い流動性
エージェンシーMBSの発行残高および取引高は米国債に次いで多く、高い流動性を保っています。

ノン・エージェンシー MBS

ノン・エージェンシーMBSは、エージェンシーMBSと同様に住宅用モーゲージ・ローンのプールを担保に証券化された金融商品です。2000年代に市場は大幅に拡大し、2006年にはMBS市場における新規発行額の44%程度を占めるまでになりましたが、サブプライム危機以降は発行が激減し、現在では再びエージェンシーMBSが発行額のほとんどを占める状況になっています。エージェンシーMBSとの最大の違いは、ノン・エージェンシーMBSには政府関連機関による保証がついておらず、投資家が住宅ローン債務者のクレジット・リスクを負うという点です。また、市場規模が相対的に小さいため、ノン・エージェンシーMBSは流動性でもエージェンシーMBSに劣る一方、相対的に高いリターンが見込めることや商品設計が多様であることが特徴です。

ノン・エージェンシー・モーゲージ・ローンの種類

ノン・エージェンシー・モーゲージ・ローンには、債務者のクレジットが低いために政府関連機関の保証を受けることができなかったケース以外にも、ローン金額が政府関連機関の保証要件を超えるものであったものなど、クレジットの質以外に起因するものもあります。

ノン・エージェンシーMBSの投資においては、エージェンシーMBSと比較して、担保ローンのデフォルト、回収率、支払い遅延、期限前償還などがより直接的にパフォーマンスを左右するため、個別ローン、MBSの構造の詳細な分析が必要となります。個別ローンの分析には、借り手の資産、ローンの条件、過去データを含めた地域の住宅市場状況、延滞率の傾向、借り手の資金調達能力、期限前償還率などの情報が考慮されます。一方、MBSの構造の分析には優先劣後構造、信用補完、損失のタイミング、金利感応度、内包するオプション性などが考慮されます。さらに、ローンの元利金の回収などの実務を行うサービサー(ビジネスモデル、資金調達能力、インセンティブ、バランスシートなど)や住宅政策などの政治情勢の分析も必要になります。

RMBSの特徴

パス・スルー
RMBSの多くは「パス・スルー(Pass Through)」と呼ばれる形態をとっています。パス・スルーとは、住宅ローン債務者から支払われる住宅ローンの元利金返済が手数料などを除きそのままRMBSの元利支払いとなることを意味します。パス・スルー以外の形態としては、後述するCMOや、IO、POなどのストラクチャードMBSがあります。

パス・スルー型RMBSのキャッシュフローは一般的な固定利付債に投資する場合のキャッシュフローとは異なります。

通常の固定利付債の場合、満期まで利子収入のみを受け取り、満期時に償還額を受け取りますが、住宅ローンは多くの場合一定額を毎月返済しますので、支払額に占める利子、元本それぞれのウェイトは時間の経過とともに変化し、支払開始から時間が経過するにつれ、元本返済部分が大きくなります。こうしたキャッシュフローの性質により、RMBSのデュレーションは同じ償還年限の通常の固定利付債と比較して短くなります。

さらに、期限前償還のスピードによりパス・スルー型MBSのキャッシュフローは様々に変わります。

期限前償還リスク(プリペイメント・リスク)
パス・スルー型のRMBSに関する重要な特徴の1つは、期限前償還(プリペイメント)です。一般的に住宅ローンの借り手は、元利金の一部または全体を繰上返済する権利を有しています。たとえば住宅ローン金利が大きく低下した場合、借り手は既存の住宅ローンを一括返済し、それまでよりも低い金利の住宅ローンへ借り換えを行うことができます。パス・スルーの仕組みにより、RMBSの投資家が受けるキャッシュフローは、こうした住宅ローンの繰上返済の影響を受けることになります。債券投資の枠組みで考えれば、市場金利が低下する(住宅ローン金利も低下する)と、期限前償還が増加し、MBSのデュレーションが短期化します。逆に、金利が上昇すると、期限前償還が減少しやすくなることから、デュレーションが長期化する傾向にあります。

すなわち、金利の低下局面では、期限前償還の増加に伴うデュレーションの短期化によりMBSの価格は通常の債券ほど上昇せず、金利の上昇局面では、デュレーションの長期化によりMBSの価格は通常の債券よりも大きく低下する性質があり、この特徴は“ネガティブ・コンベクシティ”と呼ばれます。

なお、市場金利以外にも期限前償還に影響を与える主なファクターとして、住宅価格の動向や経済環境、住宅の経過年数、季節要因、イールドカーブの形状などが知られています。

以上のようにMBSは一般的の債券とは異なるリスク・リターンの特徴を有しているため、ポートフォリオにMBSを組み入れることでリスクの分散を図ることができます。

CMO

CMO (Collateralized Mortgage Obligation)はMBSの一種で、裏付け資産から発生する元利金の配分方法について、異なる優先順位をつけたクラス(トランシェと呼ばれる)が設定された債券です。トランシェごとにデフォルト・リスク、キャッシュフロー、平均年限、期限前償還リスクなどが異なります。一般にデフォルト・リスクが低く、キャッシュフローや平均年限が安定している上位トランシェほど利回りは低くなる傾向にあります。

CMOにはキャッシュフローの配分によって、多様なタイプがあります。シークエンシャル(Sequential)と呼ばれるタイプでは、金利収入は各トランシェに同時に配分される一方で、元本の償還(期限前償還を含む)は、まず第1のトランシェから優先的に行われ、その後、第2トランシェ以下に配分されます。このためトランシェごとに平均年限が大きく異なるという特徴があります。また、PACトランシェとコンパニオン(サポート)・トランシェという組み合わせもあり、PACトランシェには事前に設定された支払いスケジュールに従って、優先的にキャッシュフローが配分される一方、期限前償還などにより事前のスケジュール以上のキャッシュフローがあった場合には、余剰分がコンパニオン・トランシェに支払われる構造となっています。ほかにもIO(Interesting Only,利払いのみの証券)やPO(Principle Only,利払いのない証券)など、投資家のニーズにあわせて多種多様なキャッシュフロー/リスク特性を持つトランシェが組成されています。

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