金融市場で行われる取引は、取引所取引と相対取引に分けることが できます。取引所取引では、売り方も買い方も取引所を介して取引を 行っており、各参加者のポジションの値洗いが日々行われているた め、決済リスクは限定されています。一方で、債券やデリバティブの 取引を市場を通さずに取引相手と直接行う場合(相対取引)には、 取引の相手方が約定から決済までの期間に決済不履行を起こす可 能性があります。例えば2008年にリーマン・ブラザーズが破たんし た際には、同社を相手方としていた金利スワップやクレジット・デフォ ルト・スワップなどの取引は不履行となりました。期間の長いデリバ ティブの取引などでは特にこのリスクが意識され、価格に織り込ま れます。金利スワップと国債の金利の差であるスワップ・スプレッド を決定する一つの要因がこのカウンターパーティー・リスクの評価で す。金融機関を取り巻く経営環境が悪化し、スワップ契約の不履行 のリスクが高まるとスワップ・スプレッドは拡大し、逆に不履行リス クが低下するとスプレッドは縮小する傾向にあります。

カウンターパーティー・リスクの管理

このようなカウンターパーティー・リスクを管理する方法として、担保 の差し入れをカウンターパーティーに求めることができます。例えば 金利スワップの固定受け/変動払いの取引を結んでいる場合、金利 が低下すると当該金利スワップの時価はプラスになります。この場 合、取引のカウンターパーティーに担保の差し入れを求めることで、 当該カウンターパーティーの破たんなどにより契約不履行となった 状況においても担保から一定の回収を見込むことができます。さら にこれを普遍化し、週次や日次など定期的に時価変動に基づいた 担保の授受を行うことで、カウンターパーティーの契約不履行の際 の損失を限定することができます。

担保の授受を行うとき、それを個別の契約に関して行うのではなく、 あるカウンターパーティーと結んでいる契約の全てをネットして担保 の授受を行うことも有効です。これにより、個別の契約でカウンター パーティーからの担保の差し入れが不足しているものについて回収 率が低くなり、過分に担保が差し入れられているものについては 100%以上回収できないといった事態を軽減し、全体の回収率を高 めることができます。

加えて、取引のカウンターパーティーを選別することも有効です。こ れは企業の信用調査を行うのと同様に、事前に取引相手の取引履 行能力の有無を調査し、十分な履行能力があると見られる相手をカ ウンターパーティーとして取引を行うものです。ここでは健全な経営 や資本/債務比率、手元流動性などといった様々な要素が吟味され ます。また、ポートフォリオのリスク管理においては、カウンターパー ティーの分散も重要となります。

また、複数の市場参加者同士の売買関係を、清算機関を相手方とし た関係に置き換えるセントラル・カウンターパーティー(CCP)の導 入も進められています。

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