中央銀行による政策と投資

現代の金融政策は一般に各国/地域の中央銀行が実施します。その 目的は大きく分けて物価の安定、健全な経済成長の二つに分けられ ます。FRBは両者を、欧州中央銀行は前者を主要な目的とすること を謳っており、中央銀行毎に目標の設定は異なります。物価の安定 を目標とする場合、インフレ・ターゲットを設定し、目標とするイン フレ率を明示することがあります。

中央銀行は政策手段として金利の調節を実施します。金利の調節 は短期金融市場における資金の吸収/供給を通じて行われます。

金融政策と投資

中央銀行は短期部分の金利を調節することで、イールドカーブ全体 に影響をもたらします。市場は将来の金融政策の展開を織り込み、 特に短中期部分のイールドカーブに将来の金利の予想が大きく影 響します。投資家は、市場が予想する金融政策の行程と異なる予想 を立てた場合、イールドカーブ戦略で市場をアウトパフォームすることを狙 うことができます。例えば、市場が近い将来の利上げを織り込んで いる一方で、投資家は利上げを見込んでいない場合、短期部分の 金利をオーバーウェイトするイールドカーブのスティープニング戦略 を実行することができます。もし投資家の予想通り、利上げが行わ れない、もしくは利上げが遠のいたと市場の見方が変化した場合に は、短期金利の低下により投資家が市場を上回るリターンを得られ ると考えられます。

また、政策金利の予想をより直接的に反映させる投資手段として、 金利先物があります。ユーロ・ドル金利先物やEURIBOR先物など は、将来のある時点(限月)における政策金利の水準の予想を反映 した値動きとなるため、限月における政策金利について、金利先物 を用いて独自の予想に基づいたポジションを構築できます。

金融政策は為替市場にも影響を与えます。例として、ある通貨の需 給が逼迫すると、その通貨は他の通貨に対して値上がりしやすくな ります。また、為替の取引によって高い金利を享受したい市場参加 者は、政策金利の上げ下げによって投資方針を判断することがあり ます。

その効果の程度や波及経路については議論がありますが、金融政 策は長期の国債市場や社債、株式など様々な市場に影響を与えま す。中央銀行は、直接的には量的緩和や信用緩和といった手段によ り長期国債やリスク資産を買い入れ、長期部分の金利やリスク・プ レミアムに働きかけることができます。こうした政策動向を読むこと も投資戦略を立てる上で重要です。

また、中央銀行は金融システムの安定にも注力します。マクロ・プルー デンス政策は金融機関の経営や、金融機関の資産構成を通じて金 融市場の需給に影響を与える可能性があります。また信用危機が発 生し、金融システムの機能への不安が高まった状況においては、中央 銀行は金融機関のための最後の貸し手として金融システムの安定維 持に大きな役割を果たします。そのため、信用の悪化した局面におい ては中央銀行の政策動向が投資に大きな影響を与えるということが できます。

通貨政策

中央銀行による金融政策が通貨にも影響を及ぼすことは既に述べ ましたが、中央銀行が明示的/暗黙的に為替の水準を政策の目標と することがあります。特に国内産業が輸出に偏重し、為替水準が国 内経済において大きな影響を持つ場合には、中央銀行は政策決定 において為替市場を意識せざるを得ないと考えられます。

一方で、国際金融システムにおいては、固定された為替相場、独立 した金融政策、自由な資本移動の三つは同時に成立することがあり ません。これは国際金融のトリレンマと呼ばれます。例えば米ドル に対する為替水準を維持しつつ、海外との間での資本の流通が自 由に行われている国においては、米国の金融政策から乖離した独 自の金融政策を実施することはできません。もし米国の政策金利よ り低い政策金利を設定した場合、自由な資本移動を維持すれば通 貨に下落圧力が加わり、為替の水準を維持しようとするならば海外 からの資本流入を規制しなければなりません。先進国では実質的 に資本規制は困難であるため、国によっては独立した金融政策と自国経済のとって望ましい通貨水準の実現との間での葛藤が見られ ます。新興国においても、当局は国内経済の状況や外部要因を分析 しながら、通貨政策、金融政策、資本政策のバランスを考えること になります。

シリーズ2:債券-後編

為替ヘッジとは

次のトピックを読む

PIMCOの視点

最新のPIMCOの経済見通し、経済・市場関連レポートはこちら。