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「米国債利回りの上昇抑制続く」(寄稿文)

日経ヴェリタス Market Eye(2018年7月1日付)

トニー・クレセンツィ氏
ピムコ マーケット・ストラテジスト、ポートフォリオ・マネージャー

米10年物国債の利回りは4月、鳴り物入りで3%台に乗せた。だが、大台に乗ること自体はそれほど重要でない。事実、利回りはその後まもなく3%を割り込み、今後も利回りの上昇を抑制しうる、多くの要因があることを示唆した。投資家は特定の水準より、金利を動かす長期的要因と慎重なポートフォリオの構築に焦点を合わせるべきだろう。

金利、以前より低水準
PIMCOは世界金融危機後、高齢化や高水準の債務などによって世界経済成長率が低水準にとどまる「ニューノーマル」という世界観を提示した。その後、政策金利について「ニューニュートラル」という考え方と、世界の中央銀行が過去の利上げ局面よりも金利を低水準にとどめる可能性が高いという見解を示した。PIMCOは5月開催の年次長期経済予測会議後、これが引き続き債券および、その他の金融資産を評価する適切な枠組みだと結論づけた。

現在、フェデラルファンド(FF)金利は1.75~2.00%の範囲で推移する。投資家はFF金利が2018年末までに更に約0.45%上昇すると予想している。「ニューニュートラル」の枠組みは、その後、FF金利が3%台前半以上に上昇する可能性が低いことを示唆している。一般に、重い債務負担や人口構成、生産性の低い伸びなどの長期的な力によって、金利が以前の利上げ局面よりも低水準にとどまる公算が大きい。

重要なのは、やはり10年債利回りが3%台に乗せた13年とは対照的に、現在の市場が、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを3%未満の水準で打ち切ることを織り込んでいることだ。13年当時は5%近い水準に上昇すると恐れられていたが、それをはるかに下回る水準だ。

そのうえ、FRBが量的緩和プログラムで購入した数兆?の債券をいまだに保有しているほか、米景気後退が向こう5年間に始まる可能性が高いことから、現在の利上げ局面の利回りは抑制されるだろう。

国債利回りが上昇したのは、FRBによる利上げ、インフレ率の上昇、国債発行の増加などが理由だ。投資家はこれらの要因がもたらす、さらなる影響に対する補償を求めている。この利回りの補償は債券の「タームプレミアム」(期間に伴う上乗せ金利)として知られる。

市場の不安定さ戻る
これまで金利を抑制する要因について説明したが、金利はいくらか上昇しており、全般的な市場の不安定さが戻ってきた。こうした環境で、投資家は債券投資の5つの考え方を検討してみるべきかもしれない。

  1. 利回り上昇につれて、コア債券を検討する。コア債券戦略のベンチマークであるブルームバーグ・バークレイズ米国総合指数は利回りが約3.3%と8年ぶりの高い水準にある。現行の利回りでのコア債券は分散投資の魅力的な機会を提供する。
  2. 債券のディレクショナル戦略(値上がりが予想される割安な債券を買い、値下がりが予想される割高な債券を空売りする戦略)依存を避ける。利回りの最大化を目指すインカム戦略と、ベンチマークの制約を受けずに期間や投資先を変更できるアンコンストレインド戦略は、市場価格の動向よりも債券の銘柄選択に重きを置いている。
  3. 株式とクレジット市場のリスクについて先見性を持つ。金利が予想以上に急上昇すれば、株式やクレジット市場のパフォーマンスは市場平均を下回る可能性があるため、ディフェンシブな投資手法が望ましい。
  4. キャッシュを動員する。金利上昇によって、銀行預金やMMF(マネー・マーケット・ファンド)より少しリスクがとれる投資家にとっては、利回りが2%付近か、それ以上の質の高い米短期債に投資する機会が生まれている。
  5. 長期的な視点で考える。金利上昇は短期的には痛みを伴う可能性があるが、長期的には債券投資家にとって望ましい。このため債券の分散投資の恩恵を得ようとマーケット・タイミングを試みないことを提案したい。

当面、利回りの3%台乗せをめぐる騒ぎが世界金融市場の主要な推進力になる可能性は低いだろう。

著者

Tony Crescenzi

マーケット・ストラテジスト

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