わが国のサービス産業では、「顧客本位」に欠けるビジネスと、ある意味過剰なものとが同時に問題視されている。持続的な成長を通じて社会へ貢献できるビジネスのあり方に再考を促している。

顧客本位の経営がなされていないと猛省を迫られているのが金融だ。4月にも森金融庁長官が資産運用業には「顧客である消費者の真の利益をかえりみない、生産者の論理が横行しています」と叱責した。本来、資産運用業は、顧客の資産形成を助け、低成長・長寿化社会に貢献しうる、社会的に重要かつ意義の高いビジネスだ。正しい動機と高い道徳心を持って経営・従事する向きもある一方で、業界には割高な手数料設定や系列重視の商品販売が存在するのも事実だ。経営レベルでの早急な改革が求められる。

一方、運送業の事例が象徴するように、高付加価値サービスへの正当な対価を求めないビジネスモデルが限界を露呈している。宅配の時間指定や再配達などは正に「顧客本位」なサービスだし、ホテル・飲食店などに見る「おもてなし」は日本人の美徳だ。しかし、これが「価格据え置きのより良いサービス」でパイを奪い合う「デフレ時代の発想」の延長では困る。正当な対価なしの付加価値サービスは、一見、消費者の利益にかなうようだが、実は違う。過重労働・低賃金という犠牲を強いられる社員も同時に消費者なのだ。いかなるビジネスも顧客満足なくして健全な持続的発展は望めない。顧客の真の利益に資するより良いサービス・商品を開発・提供せねばならない。経営者は、自らと社員にこうした正しい動機付けを徹底する一方で、常に適正な対価を顧客に求める努力をすべきだ。幸せでない個人が家族や他人を幸せにはできないように、犠牲に苦しむ社員が顧客を真に満足させることはできないのだから。 

(ピムコ アジア太平洋共同運用統括責任者 正直知哉)

著者

Tomoya Masanao

アジア太平洋共同運用統括責任者

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