ライバルを注視するPIMCOのエマニュエル・ローマン氏 債券の頂点を目指したビル・グロスの理想を忠実に守る エマニュエル(マニー)・ローマン 2017年4月15日 By: Stephen Foley ニューポートビーチにて 緊張感。PIMCOの創業者ビル・グロスからの継承について語る際、 エマニュエル(マニー)・ローマンの頭に浮かんだ最初のひと言だ。 「緊張感、チャレンジ精神、勤勉、全て良いことばかりです」。 昨年PIMCOの最高経営責任者(CEO)にローマン氏が任命されたこ とは、カリフォルニアに本社を置くこの債券運用会社にとって、ビル・グロス氏の時代から決別し、3年を超える騒動に区切りをつける象徴的な出来事となった。同氏が指名を受けたとき, グロス氏はPIMCOに対する不当解雇訴訟の係争中だった。 先日その訴訟が和解し、ローマン氏は職務に専念し、就任後最初の インタビューでPIMCOの競合相手に対して改めて焦点を見定めている旨を語った。バンガード、ブラックロック、ダブルラインらとの競合のなかで、PIMCOはグロス氏時代同様、債券運用の王者の地位を確立すべく緊張感をもって最大の努力を払うことを明らかにした。資産運用業界が大きく揺れ、顧客がアクティブ運用によるリターンに疑問を呈しているなかで、PIMCOの将来がそこにかかっている。 都会育ちのフランス人ローマン氏は、英国の上場ヘッジファンド運用会社マン・グループで発揮したリーダーシップで名を博し、グループ最高投資責任者(CIO)のダン・アイバシン氏と二人三脚でPIMCOを率いる。ローマン氏は、「一日20回は話します」「二人の意見が合わなければ、何もしません」と言う。 彼は債券投資家が何よりも期待する「安定」を約束する。株式などの新しい資産クラスを吸収合併、買収することはないという。今後は債券市場の専門家としての名声を落とすことなく、収益性の高いプライベート・クレジット、クオンツ戦略やヘッジファンドなどの分野においても、債券をより深く掘り下げていく方針だ。 この戦略は、パッシブ運用とアクティブ運用でフルレンジの資産クラスの商品を揃え、5兆ドルの運用資産を持つ世界最大の資産運用会社ブラックロックと対極をなすものだ。 「たぶん何をやってもうまくできる人みたいなものでしょう」、ロー マン氏はブラックロックのビジネスモデルが信じられない様子で話す。「必ずしも悪いことではないが、PIMCOには存在しない多くの緊張や問題が生まれると思います。PIMCOでは全てのエネルギーをひとつに集中し、それを成功させようとしており、全く異なるアプロ―チです」。ドイツのアリアンツ社を株主とするPIMCOは、2014年には2兆ドル以上あった資産が、グロス氏の退任を巡る騒動のなかで1.5兆ドルまで減少した。しかし、直近では2四半期連続で正味資産の流入超が続いている。 マン・グループでローマン氏は、多くの買収を手掛け、同社の業容を拡大し、成長させ、安定に導いたが、PIMCOではそのような手法は取っていない。「理由は簡単」と同氏は言う。「あらゆるものが割高だからです」。 PIMCOは相次ぐ運用会社の合併に嫌気をさしている顧客の受け皿となっている。これまで合併に合意した例としては、ジャナスグループとヘンダーソン、スタンダード・ライフとアバディーン・アセット・マネジ メントなどで、アクティブ運用の株式ファンドからの資金流出により、コスト削減と顧客に一層の幅広い商品の提供を迫られた結果だ。 ローマン氏はこの業界で「あと6件はあるだろう」と予想している。 しかし資産運用の世界で企業文化を統合することは難しく、ほとんどの合併は魅力ないものだという。 「もしお客様が合併のニュースを読めば、嬉しくはないでしょう」と続けた。「ある企業を買収するということは、統合にしろ、価格にしろ、企業文化やパフォーマンスにおいてもリスクをとるということです。今のPIMCOにとって好ましい企業を見つけることは困難です。PIMCOは強い企業文化を持っているので、今は自らを強化し、新たに人を採用しています」。 PIMCOは先月、元ブラックストーンの役員グレッグ・ホール氏をプライベート戦略のヘッドに指名し、プライベート・クレジットとオルタナ ティブ資産を一層拡充する狙いを示した。 しかし、ローマン氏は、このような動きはPIMCOの営業収益のボラ ティリティを増幅するものだと警戒もしている。これらの商品は、単純に資産の一定割合で得られる手数料ではなく、パフォーマンスに連動した手数料の割合が大きいためだ。 ローマン氏は、PIMCOの本社があるカリフォルニア州ニューポートビーチと、第2の拠点であるニューヨークで同様に時間を割く予定だ。カリフォルニアのライフスタイルにも慣れ、快適な気候を楽しんでいるが、ただ少々不満もある。「もうひとつふたつ本屋があれば。博物館も近くにあれば嬉しいのですが」。6,000本ともいわれるワインのコレク ションも、現在ロンドンから船で取り寄せている。 しかし今、債券専門の運用会社への転職は良いタイミングなのだろ うか。もし金利が上昇すれば、PIMCOの運用パフォーマンスはどうなるのか。債券市場にとっては35年間もブル・マーケットが続き、それが反転することはローマン氏が気にかけていることの一つだという。 「真夜中にふと思い浮かぶことですが、劇的に金利が急上昇すれば、あらゆる金融資産にとって望ましいことではありません。しかし、PIMCOはほとんどの運用会社よりも上手に対応できると考えていますので、中期的にみればPIMCOにとってむしろ良いことだと思います」。 遠回しではあったが、この時には会話のなかにダブルラインが念頭にあった。2009年に設立され、急速にその名を広めつつあるこの債券運用会社は、PIMCOの資産流出の恩恵に浴した一社で、1,000億ドルの運用規模に成長し、創業者のジェフリー・ガンドラック氏は、しばしばグロス氏の「債券王」の称号の後継者と目されている。 債券でのベア・マーケットを想起しながらローマン氏はつづけた。「PIMCOはほとんどの会社を凌駕するでしょう」「ロサンゼルスにあるどの1,000億ドル規模の会社にも負けることはありません。長い目で見れば、ベア・マーケットは多くの弱小運用会社が淘汰される過程です」。 債券投資での熾烈なライバル関係は、資産運用業界でも長く続く特徴のひとつだ。一社の成功の背後には他社の失敗があり、資金は市場に対する敗者から勝者へ移って行く。しかし今、アクティブ運用会社は共通の敵の脅威にさらされている。手数料の安いパッシブの債券運用会社だ。バンガードの2つのインデックスファンドの資産は5年前からほぼ倍増し、いまや2,700億ドルを上回る。 ローマン氏は、債券のアクティブ運用会社が提供できる超過収益をこれまで以上に「アピールしていく」と約束したが、先週発表されたS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社による調査により、長期的には運用会社が市場をアウトパフォームできるという主張は打ち消される恰好となった。その調査によれば、債券ファンドのあらゆるカテゴリーにおいて、過去10年のパフォーマンスでみると、大半のファンドはベンチマークに及ばなかった。PIMCOはそれに反論する調査結果を公表したが、議論が高まるにつれ、投資家によるアクティブ運用会社の手数料引き下げの声に拍車をかける結果となる。 ローマン氏は、PIMCOが独自のインデックス商品を提供する考えを否定し、バンガードのインデックスファンドを選んだ投資家は後悔するだろうと話す。「iPhoneはいらない、とにかく一番安い携帯が欲しい、と言っているようなものです。最低価格の携帯は生き残っていけるのでしょうか。理屈ではあり得るかもしれませんが、その価値は単に安さだけです」。 「パフォーマンスが何よりも雄弁です。PIMCOは他のどの運用会社よりも高いリターンをあげたいと考えています。パフォーマンスが下がればすぐに普通のベンチマーク並みの会社になり、出発点に戻ってしまいます。多くの株式運用会社のようになってしまいます。そんなことは私には考えられません」。そうローマン氏は話す。
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