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日銀:政策の長期化を見​据えたイールドカーブ・ターゲティング​​​​​​​​​​

場の注目が集まるなか、日銀は9月21日、従来のマイナス金利付き量的・質的金融緩和の「総括検証」に基づき、政策の枠組みの変更を発表しました。総括検証の結果は黒田東彦総裁や中曽宏副総裁の最近の講演で既知となっていた内容とほぼ同じでしたが、新たな政策の枠組みは必ずしも市場の予想どおりではありませんでした。

市場のコンセンサス予想は、何らかの形での追加緩和と、量的緩和の技術的な「微調整」(例えば購入する日本国債の平均残存期間の短期化)の組み合わせでした。これに対して日銀が決定したのは政策の「枠組みの転換」であり、誘導目標をマネタリーベースからイールドカーブ・ターゲティングに変更しました。(一部の市場関係者にとって、これは意外ではありませんでした。PIMCOの最近のレポートをご参照ください。)日銀は今後、国債買い入れによる年間80兆円のペースでのマネタリーベース拡大を目標とする政策から、長短における2つの金利、すなわち超過準備の一部に対する翌日物金利と10年物国債の金利の操作を目標とする政策に移行することになります。買い入れ対象の国債の平均残存期間を7年から12年に定める目標は廃止され、代わって固定金利の資金供給オペレーションを行なえる期間を10年に延長し、国債の買い入れと併せてイールドカーブをコントールすることになります。

市場の注目が集まるなか、日銀は9月21日、従来のマイナス金利付き量的・質的金融緩和の「総括検証」に基づき、政策の枠組みの変更を発表しました。総括検証の結果は黒田東彦総裁や中曽宏副総裁の最近の講演で既知となっていた内容とほぼ同じでしたが、新たな政策の枠組みは必ずしも市場の予想どおりではありませんでした。

市場のコンセンサス予想は、何らかの形での追加緩和と、量的緩和の技術的な「微調整」(例えば購入する日本国債の平均残存期間の短期化)の組み合わせでした。これに対して日銀が決定したのは政策の「枠組みの転換」であり、誘導目標をマネタリーベースからイールドカーブ・ターゲティングに変更しました。(一部の市場関係者にとって、これは意外ではありませんでした。PIMCOの最近のレポートをご参照ください。)日銀は今後、国債買い入れによる年間80兆円のペースでのマネタリーベース拡大を目標とする政策から、長短における2つの金利、すなわち超過準備の一部に対する翌日物金利と10年物国債の金利の操作を目標とする政策に移行することになります。買い入れ対象の国債の平均残存期間を7年から12年に定める目標は廃止され、代わって固定金利の資金供給オペレーションを行なえる期間を10年に延長し、国債の買い入れと併せてイールドカーブをコントールすることになります。

政策の枠組み転換の根拠

日銀はなぜイールドカーブ・ターゲティングへと枠組みを転換したのでしょうか。

第1に、イールドカーブの下押しとフラット化は、政策の実効性の観点から限界に達しています。日銀も総括検証で認めていますが、イールドカーブの過度なフラット化は、経済の追い風になるどころか、金融機関の仲介機能を損なうなどの副作用が出始めています。また日本経済はイールドカーブの短期から中期部分の変化への感応度が最も高い傾向があります。そのため、中立的なイールドカーブは現行よりスティープであると考えられ、日銀は景気に打撃を与えることなく、長期債の買い入れ額を減らして、量的緩和を「順次縮小する(テーパリング)」ことができます。

第2に、銀行や保険会社が担保や負債との見合いで保有する必要がある国債を売却することはないという現実を踏まえれば、日銀が買い入れられる国債の量は実務的に限界に近づきつつあります。第3に、第2のポイントとも関係しますが、日銀のデフレとの戦いは長期戦になる見通しで、それに伴い緩和策の寿命を延ばす必要があります。日銀は「ニュー・ニュートラルなイールドカーブ」に対するイールドカーブ・ターゲティングを導入したことで新たな段階に達し、量的緩和の「ステルス・テーパリング(隠密な縮小)」に一歩踏み出すことになります。

重要なのは、日銀が2%の物価安定目標を達成するうえで、イールドカーブ・ターゲティングが効果を発揮するかどうかです。その可能性はそれほど大きくないとPIMCOでは見ています。予想される政策の波及メカニズムは、新たな枠組みの下でも変わらないと見られます。量的緩和の「隠密な」テーパリングは、量的緩和手段が実務的な限界に達する時期を遅らせるには役立つものの、実質的には2%の物価目標が達成される前にテーパリングが起きるため、市場にマイナスと受け止められるリスクを冒していることに変わりありません。また、日銀単独ではデフレとの戦いに勝利できないことも強調しておかねばなりません。構造改革を断行して潜在成長率を引き上げるといった形で、政府が日銀の取り組みを支援する必要があります。

日銀の発表を受けて、日本の銀行株と日経平均はすぐさま上昇しました。しかしながら、リスク資産が今後も上昇を続けるかどうかは不透明です。今回の日銀の決定は、政策手段が尽きつつあることの証拠でもあります。日銀は今後も超緩和的な金融政策を維持する見通しですが、もはや市場をリードすることはできず、後部座席に潜り込みつつあると言えるでしょう。

著者

Tomoya Masanao

アジア太平洋共同運用統括責任者

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