PIMCOの視点

金利リスクをとることの 長期的な意味合い

金利上昇が債券ポートフォリオに与え得る中長期的な影響を評価する上では、金利がどの程度の期間にどの程度上昇するのかが重要なポイントになります。純粋に仮定上の試算として、金利が過去15年間と全く反対の、鏡の像のように左右対称に変動した場合の債券のリターンを分析することが可能です。この「ミラー・イメージ」分析で示す金利のシナリオは、PIMCOの基本シナリオではないことにはご留意ください。今回のミラー・イメージ分析では、予想以上の金利上昇シナリオにおいても、デュレーションのエクスポージャーを持つことが相応のリターンにつながるという結果になりました。

引く低金利の時代の中で、多くの投資家は債券を売却するか、デュレーションをマイナスにする戦略をとってきました。米10年債利回りが2%を下回る中で、金利の低下トレンドはいつごろ反転するのか、との懸念を抱いているからです。金利に敏感な投資家は、そのリスクに見合うリターンを本当に期待できるのか、という疑念をもたれているのでしょう。

昨年は多くの投資家が金利リスクの削減を進めました。しかし今になって後悔している向きも多いことでしょう。実際に、金利リスクを完全に消す戦略や、デュレーションのマイナスを許容する戦略(実際にそれらの多くのポートフォリオでは、マイナスのデュレーション戦略が取られました)が2014年中は多くの資金を集めました。しかし、これらの戦略の多くは、ネガティブ・キャリーや金利低下による元本の毀損、振れ幅の大きい信用スプレッドの拡大により、年末にかけて損失を膨らませていく結果となりました。

このことは、低金利環境下において、債券ポートフォリオで「構造的に」デュレーションを無くしたり、マイナスのデュレーションのポートフォリオを構築したりする投資戦略は、はたして長期的に良い戦略といえるのか、という重要な問題を提起しています。その答えは、明らかに「ノー」。PIMCOでは、そう考えています。これまで歴史的にみると、イールドカーブはほとんどの期間において右肩上がりです。これにより、債券投資家は大抵の場合、プラスのデュレーション・リスクに見合うリターンをあげることができました。更に債券投資のもう一つの主要な目的は、デュレーションそのものが、株式やクレジット投資などリスクアセットに対してリスク分散要因の柱となる、ということを忘れてはいけません。ポートフォリオからデュレーションを除外すれば、このような債券の重要なメリットも同時に失われる可能性があります。

適切なデュレーション・リスクとは
アクティブ運用の債券ポートフォリオにおいては、一時的に、長期的な戦略とは異なる見方に確信を持っている場合、運用者が戦術的にデュレーションを短くすることが妥当な場合もあり得ます。しかしながら、ほとんどの場合、デュレーションを構造的にゼロにしたり、マイナスにするポジションはお勧めできませんし、結果的にも上手くいかないようです。であれば、低金利が続き、金利上昇懸念を抱かざるを得ない現在のような状況では、どの程度のデュレーション・リスクをとるべきなのでしょうか。もちろん、この問題を考えるにあたって、まずは投資家の運用目的、リスク許容度、運用期間、リスク資産に対するエクスポージャー、その他の多くの情報を確認することは必要です。

更にその上で、金利上昇が債券ポートフォリオに与え得る中長期的な影響を、より大きな枠組みで考えることが重要です。即ち、金利がどの程度の期間、どの程度上昇するのか、がポイントとなってきます。金利は一夜にして急上昇するのでしょうか、あるいは時間をかけて少しずつ上昇するのでしょうか。上昇期間はどの程度続き、どの程度の水準に達するのでしょうか。一般的な経験則としては、金利上昇に伴う痛みの期間が短いほど、投資家はその後の高金利によるキャリー増大の恩恵を受けられる傾向がある、と言われています。

ミラー・イメージ分析
債券の数量分析を使ったモデルにより、どのような金利の動きや大きさに対しても、債券ポートフォリオの推定リターンを計算することは可能です。しかし、誰も将来を確実に予想することはできません。そこで様々な数式に基づいたような仮定をおく代わりに、今後金利が、過去15年間の経路と全く反対の、鏡の像のように左右対称的に変動した場合の、債券のリターンを分析することにしました。言い換えれば、過去の金利変動が、今後、逆向きに再現するシナリオです(図表1参照)。例えば、米10年国債利回りが、2014年末の2.17%から、2015年には緩やかに上昇して年末には3.03%(2013年末の水準)に達し、2016年には(2013年5月の裏返しとして)「逆テーパリング癇癪(量的緩和縮小に対する市場の過剰な反応)」を経験した後、2018年には急上昇(2011年の欧州周縁国危機の裏返し)する、といったシナリオです。このシナリオは、市場や投資家が実際にこれまで経験したことを単純に遡るだけであることから、比較的イメージしやすいものですが、債券の先行きに弱気な多くの市場参加者が考える、緩やかな金利上昇というシナリオと言えるのかどうかです。

注意して頂きたいのは、これがポートフォリオに対するデュレーションの影響を考えるための純粋な仮定上のシナリオであり、当然のことながら、この「ミラー・イメージ」分析で示す金利のシナリオは、PIMCOの基本シナリオではありません。PIMCOの見通しは、むしろこれとは大きく異なるもので、米国経済は今後も小幅に改善し、米連邦準備制度理事会(FRB)はほぼ10年ぶりに引締めサイクルを開始するとみています。そして利上げのタイミングはゆっくりと緩やかなものとなり、FRBは従来よりも低い水準で引締めサイクルを終了するとみています。その結果、FRBが過去の利上げサイクルで見られたように金利を過度に引き上げなければ、中立的な政策金利(名目ベース)は、金融危機前に一般的だった4%ではなく2%近くになる見通しです。

これに対して、ミラー・イメージの金利シナリオでは、この例で示した米10年国債利回りは、15年間の分析対象期間で考えると、2014年12月末の2.17%から2029年末の6.44%まで427ベーシスポイントの上昇を想定することになります。直観的には、金利がこのように大幅に上昇すれば、債券投資家は大きな打撃を受けると思われるでしょう。実際にこの期間に債券運用を行うのであればデュレーション・リスクを抑制したい、と考えるのではないでしょうか。

さて、PIMCOの分析結果を示す前に、債券市場の将来のリターンを予測する場合、二番目の経験則として、債券利回り(または債券インデックスの利回り)の初期利回りが、将来のリターンに大きく影響し得ることを簡単に説明しておきたいと思います。過去データは、この経験則を概ね裏付けており、例えば、1973年以降のバークレイズ米国総合インデックスの月次データを初期利回りと回帰分析した場合、両者の相関係数は78%となっています。初期利回りの水準が非常に重要であることがわかります。それでは、金利が今回の分析のように大幅に上昇するシナリオにおいても、この経験則は当てはまるのでしょうか。

そこで米10年国債金利のミラー・イメージ分析の金利上昇シナリオを用いて、2年、5年、10年の米国債の年率トータルリターンをモデル化するシミュレーションを行いました。その結果を図表2に示しています。この結果は、全く予想に反するものではないでしょうか。各債券のパフォーマンスは、複利計算の効果により、このような金利上昇シナリオにおいても良好で、更に初期利回りをも上回っています。とりわけ注目されるのは、3種類の米国債の中で金利感応度が最も高い10年債が、15年間のシミュレーション期間の終了時点および期間中の相応の期間においても、最も高いパフォーマンスとなっている点です。

このシナリオにおける初期利回りの影響度を示すため、図表3では、2014年末時点の各債券の利回りと、過去15年間の累積リターンの実績(年率)、この先15年間のリターンのシミュレーション結果を比較しています。

このシミュレーション結果で明らかなことは、金利が中長期的に大幅に上昇するというシナリオにおいて、初期利回りが将来のリターンを適切に示しているという点と、キャリーが増加する効果が、長期的には金利上昇による元本損失の影響を上回る結果、将来のリターンはプラスとなる、という2点です。

2~2.5%というシミュレーション上のリターンはそれほど魅力的でないかもしれませんが、これは信用力の最も高い米国債の利回りであることに留意してください。投資家は、より幅広いアクティブ運用型のコア債券戦略への投資により、クレジット・スプレッドやアルファ戦略を通じて追加リターンを追求することも可能です。また、長期的には他の多くの資産クラスよりも低いボラティリティで安定的なリターンを生む可能性が高いことや、景気後退局面において他の資産クラスに対するヘッジ効果が、債券投資をする主要な目的であることに変わりはありません。

今回のミラー・イメージの金利シナリオを用いた分析によって、予想以上の金利上昇シナリオにおいても、デュレーションのエクスポージャーを持つことは、相応のリターンを得ることにつながるという結果になりました。債券ポートフォリオに一定のデュレーションを確保することは、多くの弱気筋が考えるほど危うい戦略ではない、と判断することも可能なのです。

著者

Jeroen van Bezooijen

欧州・中東・アフリカ(EMEA)投資ソリューション・チームの統括責任者

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ご留意事項

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。

仮定上の例、およびシミュレーションには本質的な限界があり、通常、事後的に作成されます。しばしば、シミュレーションと実績との間には大きな差異が生じます。市場全般や特定の投資戦略の実行に関連する要因は多々あり、それらの要因はシミュレーションを作成するに当たり十分に考慮することはできませんが、そうした要因の全てが実際のパフォーマンスに悪い影響を与える可能性があります。本資料で示した結果が得られる保証はありません。