PIMCOの視点

サステナブル投資:環境・社会・ガバナンス(ESG)投資に対するPIMCOの取り組み

PIMCOでは数十年前から投資プロセスにサステナビリティ(持続可能性)の観点を取り入れ、グローバルなサステナビリティと長期的な資産のリターンの根底を成す幅広い長期トレンドを重点的に細かく分析してきましたが、ここ数年で、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資に特化した投資戦略を支える運用体制を構築しました。以下のQ&Aでは、PIMCOのサステナブル投資を共同で統括するクワミ・アノーチとアレックス・ストラックが、グローバルな潮流と、PIMCOにおけるESG投資の変遷についてご説明します。

: 投資家と資産運用会社はなぜ資産運用においてサステナビリティの問題に注目する必要があるのでしょうか。
ストラック : サステナブル投資には、リスクの削減や投資ポートフォリオのリターン特性の改善に寄与する可能性など、十分な経済合理性があります。また、知的にも好奇心を喚起するテーマでもあります。

PIMCOの使命は、長期的に持続可能な方法でお客様のために魅力的なリスク調整後のリターンを提供することです。言い換えると、現在のみならず将来的にも競争力の高いビジネス・モデルに基づいて、お客様のために投資を行う方針を掲げています。企業の財務諸表を伝統的な方法で分析することに加えて、バランスシートの健全性に重大な影響を及ぼし得るような、潜在的な要因や長期トレンドについても注意深く検討します。世界中の投資家に影響を及ぼし得る長期トレンドの一例として、人口構成の変化が挙げられますが、世界の人口が増加し、多くの国では平均寿命が延びるなかで、私たちは、子孫により良い未来を残すことを考えるだけではなく、自らも豊かな老後を過ごしたいと望んでいます。このように、サステナブル投資は経済合理性だけでなく個人的な問題でもあるのです。

経済成長率と金利がいずれも低く、イールドカーブが平坦な環境では、持続可能なリターンを確保することは容易ではありません。このような環境では、リスクに対するリターンが相対的に小さくなっているため、ダイナミックでアクティブな投資判断がより重要になると考えられます。また、将来のリターンにより大きく影響する可能性が高いESG――環境(世界)、社会(人々)、ガバナンス(企業文化と行動)――を重視することによって、パフォーマンスの改善が可能になるかもしれません。

: サステナビリティに注目する投資家は増えているのでしょうか。これは金融サービス業界で幅広く確認される傾向なのでしょうか。    
アノーチ : その通りです。PIMCOのお客様(個人投資家および機関投資家)やその他の重要な関係者は、投資におけるESGに関連するファクターの持つ意味合いと、それが世界経済と金融市場の健全性や円滑な機能に与える影響に対して、一段と関心を示すようになりました。国連責任投資原則(UN PRI)に署名が幅広く集まったことは、その一例と言えるでしょう。同原則は、より持続性の高い金融システムの構築に貢献する目的で、9カ国の32の団体(大半が先進国市場に本拠を置く大手年金基金)による署名をもって2006年にスタートしました。2016年4月現在、50カ国以上の1,500を超える団体が署名しており、その運用資産残高の合計は60兆ドルを超えるまでに拡大しています。

サステナブル投資は、主に「人口構成の変化」と「規制の強化」の二つに牽引される形で拡大しています。世界中の資産運用会社は、ベビーブーマー世代からミレニアル世代および女性の投資家への資産の大規模な移転に備えています。MSCI社によると、2020年までに全世界の資産の3分の2を女性が管理するようになると予想されており、また、世界中で意思決定者となるミレニアル世代の数も増加する見通しです。ある調査によると、女性とミレニアル世代はともに、リターンの期待値を下げることなく、投資や資産運用における目標を自らの価値観に合わせようとする傾向を一層強めています。つまり、金銭的なリターン以外に追加的なバリューを求めているということです。

一方、規制関連では、米国労働省のフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)規則が最近変更され、運用会社がESG戦略を採用できるようになったことは、サステナブル投資に対する追い風を示す好例と言えるでしょう。フィデューシャリー・デューティーとは、投資判断を行う際に(リターンの重視など)顧客の最善の利益のために行動することを求める法律上の責務を意味します。米国労働省の新しい指針では、ESGに関連するファクターは「投資の経済的、金銭的価値と直接関連する可能性がある」ため、「受託者が、個々の投資の選択肢の経済的、金銭的メリットを分析する際に考慮すべき要素」になり得ることを認めています。このほか、グローバルな規制動向として、企業に非金融情報の開示を求める非拘束のガイドラインを策定しようとする欧州委員会の動きや、気候に関連する財務上の開示に関する任意基準を策定しようとする金融安定理事会(FSB)のタスクフォースの取り組みも、前向きな動きと言えるでしょう。

ストラック : ESGに注目する動きは広がっています。たとえば、気候変動の影響は、政府、規制当局、国際企業、資産を保有する主体、資産運用会社、投資コミュニティ全体によって幅広く認識されるようになりました。気候変動リスクについて早期に理解を深め、ストレステストやヘッジに取り組む必要性を認識する投資家も増えています。また、サプライチェーン効果、すなわち、事業が身近なコミュニティだけでなく広範なコミュニティに与える影響や判断ミスに伴う潜在的なコストに対する理解も広がっています。金融システムが持続可能な経済成長を促進するという使命を果たす上で、「企業文化と行動」の重要性も一段と高まっています。

サステナブル投資は活発に議論されているだけでなく、新しい政策上の取り組みや規制の変化が実際に進んでいます。たとえば、昨年パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、米国を含む177カ国が気候に関する協定を採択しました。この協定に基づき、政府と企業は、さまざまなビジネス・モデルの寿命に影響を与えるような目標を設定することになります。このため、早い段階で勝ち組を特定しつつ、負け組を回避することが極めて重要です。PIMCOでは、変化への対応を図る企業が安定的な業績を残す一方で、柔軟性に欠け、前向きに変化できない企業が負担するコストは非常に大きくなり得るとみています。このような観点から、発行体との積極的な対話を通じて、お客様の利益を保護しつつ、潜在的なバリューを確保してまいります。

: 次に、 ESG に対する PIMCO のアプローチに注目しましょう。サステナビリティに対する取り組みについて教えてください。
アノーチ : PIMCOでは、2011年にサステナビリティに対する取り組みに着手し、「健全なガバナンスと、人的資源と天然資源の持続可能な利用につながる中長期的な動向を特定するために設計された投資プロセスを通じて、お客様の目標に見合ったリスク調整後のリターンを獲得する」ことを使命として掲げました。この使命が明文化されたのは2011年のことですが、これはPIMCOの設立以来の哲学や投資プロセスの一部に自然に織り込まれているものでした。ESG関連のリスク・ファクターを分析することは、お客様のために購入する有価証券の価格や将来の動向に影響するため、投資機会を綿密に見極めるには不可欠であると考えています。

PIMCOも2011年の国連責任投資原則(UN PRI)に署名しました。この原則は、PIMCOの投資プロフェッショナルにとって、資産の保有者と運用者がともにESGの実践に伴う課題に取り組むための枠組みとなります。

PIMCOでは、確立された投資プロセスのなかの重要な一部としてESGの影響を理解し予測するだけでなく、サステナビリティに対する取り組みを、さまざまな点で企業文化に取り入れています。たとえば、PIMCOファンデーションを通じたチャリティやボランティア活動、およびニューポートビーチ本社ビルのLEED認証*などに象徴されるように、コミュニティに対し企業とその従業員が与える影響に配慮しています。このほか、個性や思想の多様性を高め、無意識の偏見を抑制し、チーム全体としてのインクルーシブ・リーダーシップを発揮するために、企業全体の文化を常に発展させています。企業文化のダイバーシティーとインクルーシブネスを高めることが、人材や経営判断の質の改善につながり、その結果、お客様に持続可能なより高いパフォーマンスを提供することが可能になると考えています。

*LEED認証(米国グリーンビルディング協会が開発し運営する、環境や人に配慮したビルの認証プログラムで、Leadership in Energy & Environmental Designの略)

ストラック : また、環境、社会、ガバナンスに関連する問題と金融サービス業界との関連を明確にすることも、サステナビリティに対する取り組みにおける目標の1つです。業界が全体的に標準化されていないため、PIMCOの包括的な投資プロセスや堅固なクレジット・リサーチ、サプライチェーン効果についての深い理解に基づく独自の経験や技術を紹介することが可能であると考えています。すなわち、投資戦略を具体化するのに最も魅力的な機会を妥協することなく追及する姿勢です。また、明確なコミュニケーションや期待値のコントロール、コミットメントに基づく実行が鍵となる、「継続性」を重視しています。

PIMCOのサステナビリティに対する取り組みは、グループ最高投資責任者(CIO)と最高経営責任者(CEO)の監督のもとで、コアとなる責任者チームとともに、顧客担当チームとポートフォリオ・マネジメント・チームを代表する形でアノーチと私が統括し、40名の複合的な役割を持つワーキンググループによって支えられています。私たちはチーム全体として、ESGの原則に関連する戦略の立案と社内における統合の責任を負うとともに、クレジット・リサーチやESG概念の啓蒙活動、主要なパートナーシップの構築、お客様に対するESGに特化した債券運用によるソリューションの提供などの個別の役割を担っています。

: PIMCO では現在、どのような ESG 関連のソリューションを投資家に提供しているのでしょうか。今後の構想も合わせて教えてください。
アノーチ : PIMCOでは、現在に至るまで常に長期的なサステナビリティに関連する問題を重視してきましたが、今後も投資プロセスの一環として、ESG関連のリスク・ファクターの評価を継続する方針です。これまでと異なる点は、最近構築されたESG特化型の運用体制を通じて、今後お客様の目標達成に役立つようにESG関連のソリューションをサポートしていくことです。PIMCOが「ESG2.0」と名付けた新しい運用体制では、銘柄の選別(スクリーニング)とアクティブ投資のプロセスにおいて、潜在的なバリューを確保するために、発行体との対話を特に重視しています。この体制によって、ESG関連のリスクに特化した商品を設計し、ESGに関連するファクターを投資プロセスに全体として統合するといったステージから、サステナブル投資が一歩前に進み、ESG関連の投資機会や発行体との対話に全面的に注力するようなソリューションが実現することになるでしょう。このような新しいESG関連のソリューションは、変化を求めようとする年金、基金、財団、企業資金や、その他の貯蓄手段で運用する個人のお客様に対して付加価値を提供することになるでしょう。

ストラック : PIMCOでは、新しいESGの運用体制のもとで、投資プロセスへのESGのさらなる統合をはかり、新しいESG概念普及のリーダーシップを発揮しながら、お客様の目標達成に向けて、共に手を携えていけることを楽しみにしています。引き続き、運用技術の開発を進めるとともに、ESG関連のリサーチ機能も強化していく方針です。また、世界中でサステナブル投資を普及するために、考え方の近い投資家と協働するとともに、アドバイザリー委員会と債券運営委員会のメンバーとして国連責任投資原則(UN PRI)にも協力してまいります。PIMCOでは、発行体との対話が有益であるという強い信念のもとに、債券投資家にも株式投資家にも発言権があり、パフォーマンスを達成するだけでなく企業に変化をもたらすことも可能であると考えています。

著者

Kwame Anochie

アカウント・マネージャー

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