PIMCOの視点

好調なクレジット市場における幅広い投資機会の追求

PIMCOのマルチセクター・クレジット運用チームが、グローバル・クレジット市場においてボラティリティとリスクを管理しつつ、
魅力的な利回りを追求する方法について見解をご紹介します。

ローバル・クレジット市場は、激動の2015年と不安定な2016年初頭の時期を乗り越えて回復に向かい、おおむね反転することなく上昇し続けています。このため多くの投資家は、社債市場にまだバリュー(価値)は残っているのか、残っているとすれば、リターンの目標とダウンサイドリスクをどのように調整すべきか考えるようになっています。本レポートでは、PIMCOのマルチセクター・クレジット運用チームが、グローバル・クレジット市場に存在する多様な投資機会を示した上で、ボラティリティとリスクを管理しつつ、魅力的な利回りを追求する方法について見解をご紹介します。

問: クレジット市場において分散投資のアプローチを検討すべき理由を教えてください。

サガシャー:グローバル・クレジット市場では、多くの投資家が特定の分野(投資適格社債、ハイイールド債、エマージング債券、ローンの証券化商品など)だけに注目する傾向があります。また、「下落局面で売られ過ぎた」セクターを買い、割高感が台頭したセクターのエクスポージャーを減らすなど、タイミングを見極めながら各セクターのアロケーションの調整を試みる投資家も数多く存在します。しかしながら、安値で買って高値で売ることは、一見単純なようですが、多くの投資家が考えるよりもはるかに困難なものです。ハイイールド社債、エマージング債券、変動利付きのバンクローンなどのボラティリティが高いセクターが絡む場合には、特にその傾向は強いと言えるでしょう。

PIMCOでは、幅広いセクターを対象とするアクティブで戦術的なクレジット投資のアプローチにより、長期的な運用成績を改善することが可能であると考えています。それには、構造的な分散、ボトムアップの銘柄選択、相対価値の変化に合わせてリスク量を調整する柔軟性がカギを握ります。

問: 各クレジット・セクターのリスクについて、PIMCOの全般的な見解を教えてください。

ピエル: 2016年の第1四半期以降、クレジット・スプレッドは縮小傾向にあります。PIMCOのマルチセクター・クレジット運用チームは、現状について、ハイベータ・クレジットから信用力の高いクレジットにシフトする好機であるとみています。しかし、英国の欧州連合離脱などのマクロレベルでの動きや、投資センチメントの一時的な変化に伴い相場が弱含む局面では、PIMCOが綿密なクレジットリサーチを通じてファンダメンタルズが堅固だと判断した高利回り資産への投資を通じて、リスク量を戦術的に積み増すことは合理的であると考えています。そして一時的に拡大したクレジット・スプレッドが縮小の流れに回帰した場合には、信用力の高いクレジットに再びシフトし、サイクルの再現を待つことも考えられます。

問: ハイイールド債とバンクローンの相対価値について、現在の見解を教えてください。

ピエル: PIMCOでは、ハイイールド・セクターの割安感は概ね消滅したとみていますが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のインデックス(CDX)、ライジングスター(PIMCOが投資適格階級への格上げを予想するハイイールド債の発行体)、担保付き債券には、引き続き構造的に魅力的な投資機会が数多く存在しています。CDS市場ではプロテクションの買い手と売り手が対称的な関係にあることから、変動の大きいミューチュアルファンドの動向に左右されやすく、一般にロールダウンの恩恵も限定的な現物の長期債ではなく、CDSやCDXを利用してクレジットのロング・ポジションを構築することにより、クレジット・カーブの「ロールダウン」の恩恵を享受する方針です。また、相対的に流動性が低い有価証券のポジションを減らすには時間がかかるのに対し、流動性が高いCDXなどの仕組み取引には、必要な時にベータを素早く削減できる柔軟性があり、市場の激変期にも元本を維持する上で役立つ可能性があります。

ここ最近、幅広いクレジット・セクターにおけるアロケーションを考えるうえで、バンクローンに対する投資家の関心が高まっているようです。バンクローンに投資することで、クレジット・リスクとデュレーション・リスクを分散することが可能です。また、従来から金利の上昇局面や市場の下落局面において底堅さを示す傾向が確認されています。構造的に社債よりも支払優先順位が高いことが一般的です。ただし、足元の環境では、大半の銘柄の価格が額面を上回り、借入企業がペナルティなく額面で期限前返済可能なケースが多いことを踏まえ、選別にあたっては極めて厳しく評価しています。また、資本構成上、担保付きのシニアローンのみで、それより劣後の位置を占める債務がない状態で、そのローンが市場に出るケースが着実に増えています。このため、引き続きバンクローンには投資機会が存在するとみるものの、マルチセクターのクレジットのアロケーションにおいて投資対象とする場合には、極めて選別的なアプローチを採る方針です。

問: ハイイールド市場では、他にどこに魅力的な投資機会が存在するのでしょうか。

ピエル: 現在、慎重なスタンスで臨んでいます。というのも、満期時に額面で償還する債券を額面未満の価格で購入する機会が限られているためで、それに代わる「アルファ捻出」の機会を追求しています。たとえば最近、ハイイールドの消費者金融会社とプライベートで実行した債務交換では、市場価格を超える水準で短期債を売却すると同時に、コンベクシティと相対価値のアップサイドが大きい長期債を購入することができました。この事例は、クレジット市場における投資機会を実現するために、PIMCOのスケールメリットと企業経営陣との強い関係性を活用した一例と言えるでしょう。また、足元のクレジット市場では、価格がリスクに見合わないケースや合理的とは言えないリスクが付随するケースも多いため、クレジットリサーチ・チームの専門性を全面的に活用することも重要です。

問: 現在、マルチセクターのクレジット・ポートフォリオでは、モーゲージ債(MBS)などの証券化商品にはどのような役割が期待されるのでしょうか。

ムラタ: マルチセクターのクレジット・ポートフォリオでは、非政府機関系モーケージ債に投資妙味を見出しています。この商品の投資家は、政府または政府機関の保証ではなく、裏付け資産である住宅ローンのキャッシュフローに依存します。このため、主なリスク要因は金利リスクではなく、居住用住宅の価格水準に関連します。

PIMCOのマルチセクターのクレジット・ポートフォリオでは、さまざまな住宅価格のシナリオにおける利回りの安定性を踏まえ、企業クレジットの代替として非政府機関系MBSに投資妙味があるとみています。基本的に、額面を大幅に下回る価格で投資する方針です。その場合、住宅価格が年3%上昇する場合には4~5%の利回り(裏付け資産の期待デフォルト率を考慮)が見込まれる一方で、向こう2年間に累積で10%下落した場合でもプラスの利回りを得ることが可能です。

問: 現在、信用力が相対的に高いクレジットをどのように評価していますか。ポートフォリオにおいてどのような役割が期待されるのでしょうか。

トゥルニエ: 投資適格の社債市場では、いくつかの大きな投資のテーマに注目しています。そのなかで、引き続き金融セクターにバリューを見出しています。特に銀行の資本性証券は、多くの場合、銀行のバランスシート、アセットクオリティ、規制環境の改善が、資本構成上の劣後性のリスクを十分に補完すると考えています。PIMCOでは、英国の銀行の持ち株会社が発行するシニア債、欧州の銀行が発行する上位劣後債(LT2債)、国際的な金融機関が発行するその他Tier1債(AT1債)などの劣後債には、魅力的な相対的投資価値があるとみています。

また、アルファの捻出というテーマに基づき、短期的な資金ニーズへの対応を図る銀行に対し、流動性を提供する機会を数多く活用してきました。その一例として、大規模なグローバル・バンクから5年のシニア債をLibor+290相当の価格で購入した半年後に、買い取りオファーに応じてLibor+150相当の価格で売却したケースが挙げられます。銀行セクターでは時としてボラティリティが上昇し、銀行債の価格が下落することもありますが、多くの発行体の長期的な見通しは明るいとPIMCOではみています。

問: エマージング市場にはバリューが存在するのでしょうか。存在するとしたら、マルチセクターのクレジット・ポートフォリオにおいてエマージング債券はどのような役割を果たすのでしょうか。

アーノポリン:外貨建てのエマージング債券(米ドル建ての準ソブリン債や社債)はポートフォリオの分散を改善し、特に他のクレジット・セクターが問題を抱えている局面では効果が期待されます。また、最適なクレジットの投資機会を模索する上では、グローバルな視野に立つことが非常に合理的であると考えています。例として、コモディティの投資枠を有するポートフォリオでは、外国政府が一部を所有する大規模な石油生産企業の相対価値の方が、たとえば米国の油田サービス会社よりも高い場合があります。

エマージング市場には、市場全体への投資の好機を待つ間に、短期的に追加リターンを獲得する機会が存在します。一例を挙げると、PIMCOでは最近、エマージング・ソブリンが発行する残存1年未満の現地通貨建て債券を購入し、同時に為替リスクをヘッジしました。国内法に準拠して発行されたこの債券には、為替リスクをヘッジしたベースでも、米ドル建ての債券に対して大きなプレミアムが上乗せされていました。国内法準拠の債券には、発行国によっては比較対象となる英米法準拠の債券よりも高いリスクが付随することが多いため、エマージング諸国固有のリスクを評価可能な高い専門性が重要になります。

PIMCOでは引き続き、低リスクのキャリーを獲得する機会や値上がり益を享受する機会を、世界中で追求する方針です。

問: 投資家は足元の環境において、マルチセクター・クレジットへのアロケーションをどのように考えるべきでしょうか。

サガシャー: マルチセクター・クレジットに対する最適なアプローチは、投資目的によって異なるでしょう。ポートフォリオの運用に際しては、さまざまなベンチマークやリターンの目標を基準にすることが可能ですが、PIMCOのグローバルなマルチセクター・クレジット・ポートフォリオでは、ハイイールド、投資適格、エマージング債券のインデックスのエクスポージャーを取得しつつ、相対価値の見解に応じてセクター間でポジションを調整する柔軟性を十分に確保することを基本としています。このように幅広い戦略は、広範なグローバル・クレジット・セクターを対象に戦術的に投資したいと考える投資家にとって、ふさわしい第一歩になる可能性があります。

マルチセクター・クレジットへのアクセスを求める多くの機関投資家は、自らの投資目的、リスク許容度、そして重要な点としてポートフォリオの既存のアロケーションと整合的な、カスタマイズされた解決策を選択しています。このプロセスにおいて、ベンチマークの構築が重要な役割を果たすことが多いのですが、投資家は、絶対リターンや利回りを目標に設定するような、ベンチマークにとらわれないアプローチを検討するようになっています。また、多くの投資家は、日次または月次の流動性さえ必ずしも必要としないため、流動性に関する選好も重要なポイントです。その結果、投資機会はさらに拡大し、流動性が低くニッチなアプローチを提供するクレジットやプライベート・ファンドへの投資を検討することが可能になります。このほか、多くの投資家は、テール・リスクを軽減するために設計されたオーバーレイ戦略を、マルチセクター・クレジットのアロケーションに組み合わせています。

著者

Alfred T. Murata

モーゲージ・クレジットチームのポートフォリオ・マネージャー

Eve Tournier

汎欧州クレジット・ポートフォリオ・マネジメント統括責任者

Yacov Arnopolin

エマージング・マーケット担当ポートフォリオ・マネージャー

Sonali Pier

ハイイールド・クレジット担当のポートフォリオ・マネージャー

Loren Sageser

クレジット・プロダクトを担当プロダクト・ストラテジスト

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