PIMCOの視点

SDG(持続可能な開発目標)債券:発行体と投資家に機会を創出

国連の持続可能な開発目標は、債券の発行体をはじめとする投資家コミュニティ全体が、グローバルな長期的課題に取り組むうえでの枠組みを提供しています。

今年前半、ギャビン・パワーと私は、持続可能な投資において静かながら根本的な変化が進行しており、地球環境の改善や生産性向上などのグローバルな取り組みにおいて、債券投資が柱のひとつになりつつあると強調しました。その枠組みは、国連が2015年に採択した持続可能な開発目標(SDGs)で既に提供されています。そして、PIMCOをはじめとする投資家は、強靭なインフラ整備や貧困撲滅、地球環境改善などの目標達成を推進するうえで必要不可欠な資金提供に応じるべく態勢を整えています。しかし、こうした野心的な目標を達成するには、債券発行体が,、それが政府であっても企業であっても、資金調達をSDGs推進と明確に結びつける重要な役割を担っているとPIMCOでは考えています。

今後は、投資家コミュニティ全体で持続可能性分析を正式に統合することが重要になってくるでしょう。こうした取り組みは、投資家によるリスク・リターンの評価を強化するとともに、投資家コミュニティが有益な社会変化に主体的に関わっていくうえで役立つはずです。しかしながら、実際にこれを実現するには、投資家と発行体が連携し、グリーンボンドにとどまらず市場を深化・拡大させ、国連持続可能な開発目標(SDGs) を全面的に推進していく必要があります。

PIMCOでは、債券資産クラス全般で持続可能性分析を正式に導入する努力を続けてきました(ソブリン債グローバル金融企業、公益企業のESG分析の事例をご参照ください)。こうした努力は、PIMCOの投資分析の深さや厳格さの向上に役立っていますが、それだけにとどまらず、こうした取り組みの長期的な影響を評価したいと考えるようになりました。SDGはそのための枠組みを提供してくれると考えています。

影響を測定するための枠組み:国連持続可能な開発目標(SDGs)

国連の17の持続可能な開発目標(図表1を参照)は、貧困撲滅や格差是正、医療や教育の拡充、気候変動の影響への対策など、幅広い持続可能性の問題を網羅しています。

Sustainable Development Goals

出所:国際連合広報センター

あえて幅広い目標が設定されているわけですが、それは強みであると同時に弱みにもなります。SDGsが気候変動リスクにとどまらず、より包括的で持続可能な社会をつくるために進展が必要な主要分野を網羅している点は強みだと言えるでしょう。しかしながら、あまりに広範囲なゆえに課題もあります。投資家や発行体は、これほど幅広い評価基準をどう測ればよいのでしょうか。

この点こそ、投資家コミュニティ全体が一丸となってソリューション志向のアプローチの整合性を取る必要があると考えます。PIMCOはSDGs関連の取り組みの影響力測定を導入していますが、発行体にも同じことを期待しています。進め方の一例として、調達資金の使途を1つ又はそれ以上のSDGsと正式に結びつけた債券発行により注力することが考えられるでしょう。

グリーンボンド市場が気候変動リスクの認知度向上を大幅に推し進めたように、生まれたばかりのSDG債券市場は、投資家コミュニティ全体で、私達が現在直面している社会的課題の認知度を向上させ、これらの課題への積極的な取り組みを促すことができると考えています。

SDG債券:グリーンボンドの枠組みをもとに構築

PIMCOは、グリーンボンド市場の発展を全面的に支援しており、グリーンボンドの発行と同セクターへの関心が増え続けていることを喜ばしく思っています。ブルームバーグによると、グリーンボンドの発行額は2017年に過去最高の1,730億ドルを記録し、2018年には2,000億ドルに達すると見込まれています。

驚くべき数字ですが、国連はSDGsの達成には年間3兆~5兆ドルの資金調達が必要であり、その大半は民間セクターに依ると推計しています。SDGsの網羅性が強みの一つになるのは、こうした背景においてです。幅広いSDG関連の計画は、発行体に調達資金を様々な持続可能な取り組みと結びつける多くの機会を提供します。業界ごとに、関連性の高いイニシアチブは異なります。このため、発行体が自分達の事業(ひいては債券発行)をSDGsのどの目標ともっとも関連づけられるのかを理解し、検討するには時間がかかるでしょう。ただ、時間がかかるからといって、こうした努力が阻害されるべきではありません。現に、SDGsのもとで男女の多様性、心身の健康、教育、気候変動、持続可能な社会に関連づけられる債券が開発銀行及び商業銀行の両方から既に発行されています。PIMCOはこうした取り組みを全面的にサポートし、後に続く動きを応援しています。

また銀行セクターは、SDGs関連の債券発行をリードするのに特に適していると考えています。開発銀行は途上国での事業が大半ですが、持続可能性の取り組みが特に大きな影響を持ちうるのが、こうした発展途上国です。開発銀行と民間セクターが連携し、相互に魅力的な金利で持続可能な開発資金を提供できる余地はかなり大きいとみています。

商業銀行には多様な融資先があり、SDG関連の債券発行をリードする比類ない能力があるはずです。また、SDG債発行に伴う様々な課題を克服する強さと能力があるともみています。例えば、具体的にどのSDGs目標にあてはまるかを見極め、投資家が資金使途をどうやって追跡するのか、さらには発行体が持続可能性へのコミットメントを他の手段で示すのではなく、使途を限定した債券発行という煩雑な手段を取らなければならないのはなぜか、というような根本的な疑問を解決する必要があります。

これらの課題を順番に見ていきましょう。幅広い融資先を抱える銀行には、SDGsの個々の目標に密接に関連するセクターを見極める能力が十分にあります。銀行が既にSDG債を発行しているという事実がこの見方を裏付けています。また、調達資金の使途の追跡については、グリーンボンド市場が枠組みを提供していると考えています。債券発行時の外部審査や、年に1度の第三者審査で、調達資金が適切に活用されているかどうかを確認しています。この枠組みは、SDGs関連の債券でも同じように有効だと考えられます。また、国連グローバルコンパクトが自身の「SDG債券の計画」を公表することが、この重要な計画に関する発行体と投資家の動きを後押しすると期待しています。

最後に、そもそも発行体が事業全般で持続可能性を追求していることを他の方法で示すのではなく、SDG債の発行という手段を取るべきなのはなぜなのか、という問いがあります。この点については、答えが二者択一である必要はないと考えます。むしろ、持続可能性を重視している発行体は、SDGの枠組みのもとで債券を発行することによって、自らの信用度を高め、それによってさらなる精査に耐えうる存在になることができると考えています。PIMCOでは全社をあげて持続可能性の取り組みを根づかせると共に、ESGに特化した戦略を立ち上げました。発行体においても、会社全体に持続可能性の取り組みを根づかせ、持続可能性に特化した債券を発行することができると考えています。いずれ持続可能性の取り組みが完全に主流になった暁には、資金使途を限定した債券を発行する必要性は薄れるでしょうが、まだその段階にはありません。

もう1つ、SDG債券の発行が銀行の強みになりうるのは、このプロセスを自ら経験することによって、より強い立場で、後に続きたいと考える顧客企業を支援できる点です。銀行は、こうした形で先行者利益がきわめて大きくなりうる分野で好循環を生み出すことができるでしょう。

主な結論

国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、投資家コミュニティ全体が長期的に持続可能性の課題に取り組むうえで、優れた枠組みを提供していると考えています。目標の幅広さは障壁になるものではなく、投資家にとっても発行体にとっても明確かつ一貫した方法で長期的な課題に取り組むことのできる魅力的な機会になるはずです。PIMCOは投資家として、今後、SDG債券が債券市場の柱の1つになるとみており、発行体であるお客様に対し、この大きな可能性を秘めた機会の最前線に立っていただきたいと考えています。

債券市場がESG関連の取り組みに対して資金を提供すると同時に、利益獲得の機会も提供する独自の地位を確保しているとPIMCOが考えている理由については、下記リンクよりご覧ください。

もっと読む

著者

Mike Amey

ポンド建てポートフォリオおよびESG戦略統括

プロフィールを見る

Latest Insights

関連コンテンツ

PIMCOの視点

国連の持続可能な開発目標:影響度によるパフォーマンスの測定

PIMCOのESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みの重要な目的の一つは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を対話に取り入れることです。PIMCOがESGへの取り組みを進めていく際、どこに重点を置き、どう説明責任を果たすのか、そして最終的には影響度合いを測る際の枠組みの一つになりうるからです。

ご留意事項

社会的責任投資は、定性的で主観的な性質上、PIMCOが活用する基準や行使する判断が、特定の投資家の見解や価値を反映することを保証するものではありません。責任ある行動についての情報は、自発的な発表や第三者による報告から得たものであり、正確性や完全性を欠いている可能性がありますが、PIMCOはこうした情報に基づいて、企業の責任ある行動へのコミットメントや執行を評価しています。社会的責任の規範は、地域によって異なります。社会的責任投資の投資戦略や手法の成功が保証されているわけではありません。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。

本資料には、本資料作成時点でのPIMCOの見解が含まれていますが、予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。