PIMCOの視点

米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO) のスコット・マザー、市場のボラティリティ、 米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めサイクル、投資ポートフォリオの構築方法についてのPIMCOの見解を語る

:市場ではボラティリティが高止まりする可能性が高いのでしょうか。投資家はポートフォリオをどのように構築するべきでしょうか。
マザー:8月下旬のボラティリティの上昇は極端な動きでしたが、これは年初来の金融市場に特徴的な動きでもあり、とりわけ世界的に金融政策のばらつきが継続する見通しを踏まえると、ボラティリティは今後も高止まりする公算が大きいでしょう。投資家は、このようなボラティリティの高さを念頭にポートフォリオを構築し、利益に見合ったリスクのみをとるようにするべきでしょう。現在、あらゆる金融資産のリスクプレミアムは比較的抑制されているため、多くのセクターや資産クラスにおいては、過去数年間よりもリスク量を減らすことを検討するべきです。

このような市場環境下では、短期的な時間軸に注目する投資家には厳しい状態が続く可能性が高いと言えますが、長期的な投資家にとってはボラティリティが投資機会を生む可能性があることを念頭に置くべきでしょう。PIMCOでは、ボラティリティがプラスに作用するようなポートフォリオ構築を行なっており、この先数四半期にわたりリスク資産が割安な価格で売りに出される好機が増えると予想しています。

問:FRBの利上げ時期に関するPIMCOの見通しは変わったのでしょうか。
マザー:PIMCOでは今年前半を通して、米連邦準備制度理事会(FRB)が2015年後半に引き締めサイクルを開始すると予想していました。なかでも、9月17日の連邦公開市場委員会(FOMC)に注目し、このタイミングでゼロ金利からの小幅な利上げが発表されることを「基本シナリオ」としてきました。

その後、7月、8月のマクロ情勢の変化を踏まえ、この見通しを修正しました。米国経済のファンダメンタルズは依然として堅固ですが、世界情勢がここ最近のように不安定で変動しやすい状況において、FRBの幹部は自らが不確実性の追加要因であると見なされたくはないと考えるでしょう。このため、9月か10月のFOMCで利上げが決定される可能性は依然として残るものの、基本シナリオとしては、12月まで利上げは先送りされるとみています。

問:引き締めサイクル開始の遅れは投資家にとってどのような意味を持つのでしょうか。
マザー:短期的には、イールドカーブの超短期ゾーンの上昇圧力がやや緩和されるとみられ、このゾーンに投資する戦略が恩恵を受けるでしょう。また、FRBの動きが9月の金融市場のボラティリティ上昇に大きく寄与することはないと考えられますが、FRBの引き締め開始時期を巡る不確実性がボラティリティ上昇の一因であることは言うまでもありません。この意味では、FRBがひとたび金融政策の正常化に着手すれば、不確実性はある程度緩和される可能性があります。

もっとも、初回の利上げ時期そのものよりも重要なポイントは、引き締めサイクルの中身、つまり、利上げのスピード、1回当たりの利上げ幅、利上げ終了のタイミングと終了時の金利水準です。最終的には、これらの要因の方が、初回の利上げ時期がいつになるのか(9月か、12月か、2016年か)ということよりも、投資家の長期的な運用に対してより大きな影響を与えるでしょう。

PIMCOでは、このような視点を念頭に、この先2~3年の金利見通しを据え置いています。インフレ率は、おそらく現在の水準を多少上回るものの、比較的低い水準にとどまるとみられるなか、現在異なるスピードで成長している世界の国々は、この先緩やかな成長スピードに収斂していくだろうとみています。このような環境において、FRBが引き締めも緩和もしないフェデラル・ファンド(FF)金利の均衡水準は、2.0~2.5%になると予想しています。これは実質ベースでは0%程度に相当し、過去数回の利上げサイクル時の中立金利を2%程度下回ります。したがって、FOMCのメンバーは、ゼロ金利の解除に前向きであったとしても、政策金利を過去の水準を大幅に下回る水準にとどめ置く可能性が高いでしょう。また、FRBは、利上げの間隔を過去のサイクルよりも長くする可能性があるとみています。結論としては、PIMCOのニュー・ニュートラルの見通しに変更はなく、低金利は長期化するでしょう。

著者

Scott A. Mather

米国コア戦略担当最高投資責任者(CIO)

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