PIMCOの視点

低レバレッジ・バンクローン戦略-潜在的なリターンの向上を目指す​​​​

界的な低金利環境において、多くの投資家がリターンを向上させる目的でクレジット関連の資産に注目しています。PIMCOでは引き続き、クレジット市場全般を前向きにみていますが、一部のセクターでは、ファンダメンタルズが小幅に悪化する兆しがみられます。また、大半のセクターでは、バリュエーションが過去1年間で最も割高な水準に達しています。クレジット・スプレッドのカーブがフラットで、リスクの見返りとしてのリターンが軒並み小さい足元の環境において、リターンの向上を図るために、投資家は従来の枠組みを超えた投資の検討が必要になるでしょう。

クレジット市場では、単に信用力が低い領域に踏み込む代わりに、幸いにも「投資手法」を多様化することが可能です。専門性が高く投資の時間軸が長い投資家は、質が高い担保付きシニア・バンクローンから構成されるポートフォリオに対して、低めのレバレッジ(たとえば原資産のエクスポージャーに対して2~3倍程度のレバレッジ)をかけることによって大きな恩恵を享受できるかもしれません。レバレッジに対して懸念を抱く投資家も存在すると思われますが、PIMCOでは、足元でレバレッジに伴う資金調達コストが低いことと、質の高い担保付きシニア・バンクローンのボラティリティ1が過去最低水準で推移していることを踏まえると、信用力を犠牲にすることなく、また、高水準の構造的なレバレッジをかけることなく、潜在的なリターンを向上させるユニークな投資機会が生じていると考えています。また、一般にバンクローンは変動金利建てであり、金利リスクが軽減されているため、レバレッジ適用に伴う潜在的なダウンサイド・リスクから遮断されていると考えられます。

1クレディスイス・レバレッジド・ローン・インデックスの月次のリターンの振れに基づき算出。

デフォルト時の弁済順位が高い

バンクローン市場は、主に米国に営業基盤を置く企業に対する担保付きのシニア・ローンから構成され、投資適格社債とハイイールド債の中間に位置付けられます。バンクローンとハイイールド債を比較した場合、格付けが投資適格未満という点では共通するものの、前者は一般に担保付きであるのに対して後者はほとんどが無担保であること、前者は変動金利建てで金利上昇(低下)時に利払い額が増加(減少)すること、という2つの点で大きく異なります。

一般にバンクローンには借り手企業の保有資産が担保として提供されているため、企業の破綻時には、バンクローンの投資家はハイイールド債の投資家よりも優先的な立場に置かれることが一般的です。このため、重要な点として、企業破綻や債務再編という状況においてはバンクローンの方が回収率は高く、過去の平均回収率を比較すると、ハイイールド債が50%を下回るのに対して、バンクローンは70%近くで推移しています(図表1)。

弁済順位の高さや担保付きというステータスを背景に、バンクローンのボラティリティは、ハイイールド債やエマージング債を始めとする他の多くのクレジット関連商品を下回ってきました。このため、ポートフォリオの一部にバンクローンを組み込むことは、高利回りのクレジット商品へのアロケーションに伴うリスクを軽減する適切な方法になり得るでしょう。また、景気回復局面が8年目に入ることを踏まえると、資本構成上でシニアなポジションをとることが保守的であるとも言えるでしょう。

利払いは変動金利建て

バンクローンの利率はLIBOR(ロンドン銀行間貸出金利)にスプレッドを上乗せして計算され、1~3カ月ごとに見直されます。重要な点として、既存のバンクローンの大半には「LIBORフロア」が設定されているため、LIBORが「フロア」(平均的には1%)を超えるまでは利率が上昇することはありません。現在のLIBORの水準が低いことを考えると、ハイイールド債と比べた場合、バンクローンはすぐにインカムの大きな増加は期待できないかもしれませんが、債券価格の下落時のダウンサイドが限定的で、LIBORがフロアを超えた場合には大きなアップサイドが期待可能です。このため、過去の金利上昇局面では、バンクローンは堅調なパフォーマンスを達成してきました。

レバレッジをかけたバンクローン投資

債券市場では、年初来のパフォーマンスが総じて堅調だったため、リターンの向上を企図する投資家は、信用リスクが高い領域に踏み込むべきか、「流動性プレミアム」を目標に流動性が低い領域に踏み込むべきか、低めのレバレッジをかけるべきかというジレンマに直面しています。

PIMCOでは、不動産やクレジット関連商品を始めとするオポチュニスティックな資産のように、流動性が低い領域には魅力的な投資機会が存在すると考えていますが、多くの投資家は流動性を大きく犠牲にすることに対して消極的です。このような観点からは、バンクローンに対して低めのレバレッジをかけるアプローチが魅力的な選択肢になり得るとみています。低レバレッジ・バンクローン戦略は、構造上のシニア性、金利リスクの低さ、レバレッジに伴う資金調達コストの低さというメリットを踏まえると、足元の市場環境において、大きな流動性リスクやボラティリティ・リスクをとることなく、魅力的な利回りを獲得する上で効果的な手段であると考えられます。

現在、質の高いバンクローンにレバレッジをかける際に必要な資金調達コストは、過去最低水準まで下がっています。バンクローンにレバレッジをかける手法はさまざまですが、コスト効率の高さを期待できるトータル・リターン・スワップを活用することによって、アクティブ運用者は自ら銘柄を選択した上で、個別のローンの信用リスクに見合った水準のレバレッジをかけることが可能です(ご参考までに、バンクローンを対象とするトータル・リターン・スワップの現在のコストはLIBOR+1.00~1.25%程度です)。PIMCOでは、バンクローンとハイイールド債のエクスポージャー配分や全体のレバレッジの水準をアクティブに調整し、バンクローンとハイイールド債の個別の銘柄選択をアクティブに実行できる柔軟性が、極めて保守的なアプローチには必要であると考えています。

リスクオフの市場環境においては時価評価の変動が抑制され、企業クレジット全体のデフォルト率の上昇時 には損失リスクの軽減が期待されるように、PIMCOでは一般に、相対的に質が高くボラティリティが低いバンクローンに対してレバレッジをかけるアプローチを採用しています。また、このような低レバレッジのポートフォリオでは、日次の流動性(換金可能性)よりも月次の流動性が一般に適していることを指摘しておきたいと思います。

低レバレッジ・バンクローン戦略がポートフォリオにおいて果たし得る役割

低レバレッジ・バンクローン戦略は、ポートフォリオにおいてさまざまな役割を果たすと考えられます。

  1. 伝統的なバンクローン対比でのリターンの向上
    クレジット市場では総じて絶対利回りが低い状況にあるなかで、バンクローン・ポートフォリオ全体にレバレッジをかけるのではなく、厳選した質の高いバンクローンのエクスポージャーに対してレバレッジをかけることによって、伝統的なバンクローン戦略よりも高いリターンを獲得できる可能性があります。

  2. 株式よりもリスクを下げる手段
    多くの投資家が株式のリターンに対する期待を引き下げるなかで、クレジットはボラティリティがより低く魅力的な投資の選択肢になると考えられます。低レバレッジ・バンクローン戦略では、ボラティリティを伝統的な株式インデックスを大きく下回る水準に抑えつつ、魅力的な利回りを生み出せる可能性があります。

  3. CLO(ローン担保証券)の負債トランシェの代替
    ここ数年間、発行額が歴史的に高い水準で推移するなかでも、CLOの負債トランシェに対する需要は堅調さを維持しています。CLOはレバレッジド・ローンのポートフォリオの中で最もよく知られており、長期的に魅力的なリターンが期待される一方で、流動性の制約が大きい投資家にとっては、流通市場における流動性の低さ、流通市場のテクニカルに起因する価格のボラティリティ、長期的に資金を固定する必要性などがマイナス要因になる場合があります。

  4. ハイイールド債の代替
    低レバレッジ・バンクローン戦略は、特に短期年限のハイイールド債のポジションを補完又は代替する魅力的な選択肢になる可能性があります。シニアの担保付き資産に低めのレバレッジをかけることによって、クレジット市場の環境が悪化した場合のダウンサイド・リスクをより軽減する形で、ハイイールド債と同等のリターンを達成できる可能性があります。

低レバレッジ・バンクローン戦略に伴うリスク

バンクローンはレバレッジ型のクレジット投資の世界においてより大きなバッファーを提供すると考えられる一方で、バンクローン・セクター全体のボラティリティが時として上昇する可能性があるほか、これまでの景気サイクルの中で銀行の与信基準が過度に緩和した局面もみられました。バンクローンに低いレバレッジをかける結果、ボラティリティが低い局面ではリターンが向上する一方で、ボラティリティや企業破綻が高い水準に達した際のダウンサイド・リスクが増幅される可能性があります(図表2)。PIMCOでは、このような特性を踏まえ、レバレッジの水準とクレジット・エクスポージャー全体の量をアクティブに調整する とともに、銘柄をアクティブに選択することが、市場のサイクル全体を乗り切る上で非常に重要であると考えています。

クレジット投資の手段としての低レバレッジ・バンクローン戦略

足元の環境において、多くの投資家がリターンの目標達成に苦慮するなかで、リターンの向上を目標とする戦略では、流動性が低い領域や信用リスクが高い領域に踏み込むことがしばしば必要になります。低レバレッジ・バンクローン戦略では、ある程度の流動性を確保しつつ、信用リスクが高い領域に踏み込むことなく潜在的なリターンを向上させることができます。また、バンクローンは、シニアで担保付きというステータスや変動金利建てという特性を背景に、クレジット市場の悪化局面や金利上昇局面において、債券ポートフォリオのダウンサイドを限定する可能性があります。レバレッジの適用にはリスクが伴いますが、質の高いクレジットに対して慎重に適用することにより、効果的な手法になり得るでしょう。

著者

Beth MacLean

バンクローンのポートフォリオ・マネージャー

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